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物流センターでの効果的なDXの打ち手は「労働力の最適利用」にあると考える株式会社KURANDOは、物流作業現場の生産性や収支を「簡単に」「ムリなく」「正確に」管理できるツール「ロジメーター」を提供しています。今回は、「物流現場の最適化DX」の著者でもある代表取締役社長の岡澤様にお時間をいただき、株式会社ロジテック代表取締役の川村がモデレーターを務め、DX化とデータ活用のコツについて話を伺いました。
データの力で物流現場を革新
川村:まず、御社の事業内容とサービスの概要について教えていただけますか。
岡澤:当社は2019年にスタートしまして、物流業界において配送と倉庫内作業は大きく分かれますが、当社は倉庫内作業に特化しています。具体的には、倉庫内で作業されるオペレーションの時間や工数、生産性(1時間あたりの作業量)などのデータを集めるためのツール「ロジメーター」を提供しています。SaaS(Software as a Service)として提供しており、月額のクラウドサービスです。このサービスを導入することで倉庫内の作業効率を大幅に向上させることができ、企業の生産性向上に貢献します。また、データをリアルタイムで収集・分析することで、より精度の高い業務改善が可能となります。
川村:元々のご経歴について教えてください。KURANDOを立ち上げる前は何をされていたのですか。
岡澤:私は大学卒業後、最初の仕事としてキーエンスというセンサーのメーカーに勤務しました。そこでバーコードリーダーのセールス担当をしていました。この経験を通じて、物流業界におけるデータの重要性を強く感じました。その後、約20年間物流業界で働き、キャリアを積んできました。物流業界での経験を活かし、現場の課題を解決するためのソリューションを提供することが私の使命と感じています。
川村:データを集めるという発想のきっかけは何かあったのでしょうか。
岡澤:私自身のアイディアというよりも、昔からデータを取るということ自体は現場で行われていました。例えば日報です。作業員が日報を書いて現場の状況を記録していましたが、これをパソコンやExcelで集計するのが従来のやり方でした。しかし、これが非常に手間であり、データの精度も良くないという声が多く聞かれました。そこで、デジタルツールを使ってこのプロセスを改善しようと思ったのです。デジタルツールを活用することで、データの収集・分析が簡単になり、現場の作業効率を向上させることができます。
川村:日報を書くことが業務の一環として指示されますが、実際には日常の中で大きな変化がないため、同じことを書き続けるのはしんどい作業ですよね。
岡澤:そうですね。物流現場はデスクワークではないため、都度気づきを記録するのは難しいです。多くの場合、作業が終わった後にまとめて日報を書くことになりますが、記憶に頼る部分が多く、精度が低くなります。100以上の現場を見てきましたが、分単位で日報を書くのはほぼ無理です。そのため、デジタルツールの導入が必須だと思いました。デジタルツールを使用することで、リアルタイムでデータを記録し、業務の改善に役立てることができるからです。
川村:業務改善のための日報ですが、目的を社員に伝えられないと、書くこと自体が目的になってしまいます。中には、出社した時点で午前中のことを書き終えている社員もいるかもしれませんね(笑)。
岡澤:そうですね(笑)。日報を書く目的は業務の改善にありますが、目的を社員に伝えないと、書くこと自体が目的になってしまいます。データの分析を簡単にして業務改善に役立てることまで目的を共有する必要があるでしょうね。
料金交渉!?意外なデータ活用の事例
川村:データは必要だと考える企業は多いですが、上手に活用できていない企業が多いのではないかと思います。その原因は何でしょうか。
岡澤:一つ言えるのは、データを取り慣れていないと活用もうまくできないということです。データを取って活用するためには、まずデータを取れるようになることが第一段階です。そして、綺麗なデータが素早く手に入ることが重要です。次に活用方法を考え、「こういう活用をしたいからデータを細かく見る必要がある」といった発想が生まれます。このPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルが回り出すと、データの取り方も変わってきます。
おそらく、短期間ではなく半年から1年といったスパンで現場のデータの扱いが良くなっていくと思います。データを上手に活用するためには、まずはデータを正確に収集し、それを基に業務改善の方法を模索することが重要です。
川村:御社のサービスを利用している企業で、上手にデータ活用されている事例があれば教えてください。
岡澤:面白い事例としては、データを使った料金交渉があります。荷主と倉庫の関係においては、年々、料金交渉が難しくなってきており、時給の上昇や2024年問題など、対応しなければならないことが増えています。その中で、物流担当者がデータを集めるのも大変です。ロジメーターを使ってデータを楽に取ることで、料金交渉の基盤とすることができます。このような料金交渉のためにツールを利用するケースが多いのです。データを使って料金交渉を行うことで、透明性が高まり、納得性のある交渉が可能になります。
川村:料金交渉にデータを使うという発想は目から鱗でした。一昔前に比べれば物流費が高騰してるというところで値上げを理解してもらいやすくなったと思いますが、根拠立てた見積もりっていう意味で言うと、データによる納得性がすごく重要ですよね。
岡澤:そうです。荷主が無茶言っても、物流センターはもう受けれません。なんなら「もう出て行ってくれ」みたいな、強気な物流センターも珍しくありません。荷主と物流センター側が歩み寄るためにも料金の透明性が重要です。データをオープンにすることで、両者の理解が深まります。データを基にした料金交渉は、透明性が高く、納得性があるため、交渉がスムーズに進みます。
DXを推進するための3つのステップ
川村:DXと皆さんおっしゃいますけど、企業でDXが進んでるように私はあんまり感じていないんです。なぜ進まないのでしょうか。
岡澤:DXについてですが、意外と進んでいると思います。DXにはデジタイゼーション、デジタライゼーション、DXという3つのステップがあります。企業はこのステップを理解し、順番に進めることが重要です。①と②まで進んでいる企業はけっこういます。ただ、最後のDXには取り組めていないわけです。あと一方というところまで来ている企業は意外といます。
川村:ステップを踏める会社と踏めない会社の違いは何でしょうか。
岡澤:ステップを理解し、実行するかどうかが大きな違いです。DXを一足飛びに進めようとすると失敗するケースが多いです。まずはデータ収集から始め、次にデータの活用方法を考え、最後にDXを完了させるというステップを踏むことが重要です。データ収集から始めることで、データの精度が向上し、業務改善の基盤を築くことができます。
川村:となると、やっぱりステップ①のところでデータ収集が重要ですよね。データをきちんと集めて初めてそれをどう生かして加工していくのか考えることができます。
岡澤:そうです。私の提供するツールは、ステップ①のデータ収集に特化しています。物流業界だけに限らず他の産業を見ていても、まずデータを綺麗に取って可視化するところからスタートしてうまくいってる企業は多いですよ。
川村:最後に、ステップの踏み方のところでヒントが欲しい、アドバイスが欲しいという会社さんに対してメッセージをお願いします。
岡澤:物流センターであれば、ほぼ全ての企業がDXに取り組むべきです。もし踏み出せない悩みがある場合は、ぜひご相談ください。他社の事例などもご紹介できます。ロジメーターのようなデジタルツールの導入は、業務効率化と生産性向上に大いに役立ちます。