共同輸配送とは?メリット・デメリットから導入ステップまで解説

ドライバー不足や労働時間の規制強化により、物流業界はモノが運べなくなる危機に直面しています。

この状況を打開する方法として注目されているのが「共同輸配送」です。複数の企業でトラックや物流拠点を共有し、積載効率を高め、コスト削減や環境負荷の低減につながる取り組みです。

今回は共同輸配送について解説します。共同輸配送のメリット・デメリット、導入ステップをご紹介しているため、持続可能な物流を構築する際にお役立てください。

共同輸配送が注目される背景

共同輸配送が注目される背景

共同輸配送が大きな注目を集めている背景には、物流業界が直面する課題と、それに対応する法制度の改正があります。

物流業界で慢性的なドライバー不足が続く中で、働き方改革に伴う労働時間の上限規制が施行されたことで、輸送能力の低下を招いています。

輸送能力を向上させなければなりませんが、輸送車両の空きスペースが多く積載効率の低さが課題となっている状況です。物流会社が輸配送に対する抜本的な対策を講じなければ、将来的には全ての荷物を運びきれなくなり物流崩壊を招きます。

このような危機的状況を踏まえて、2025年4月に国土交通省は改正物流総合効率化法を施行し、企業に対して共同輸配送への取り組みを推奨し始めました。

また「総合効率化計画認定制度」も開始しており、共同輸配送の取り組みが認定されれば税制優遇や補助金、金融支援などの恩恵が受けられます。このような法改正や制度の後押しもあり共同輸配送が注目を浴びています。

共同輸配送とは

共同輸配送とは

共同輸配送とは、複数の物流会社で「物流拠点」「トラック」「コンテナ」などを共有し、共同配送する仕組みを指します。

同じエリアへ届ける荷物をまとめて配送したり、日用品や食料品、医薬品など多品種少量の物流効率化を目指したりする際に採用される仕組みです。

共同輸配送でトラックの積載効率を向上させ、物流コストの削減や輸送能力の向上を目指します。

また、物流業界のドライバー不足の解消にも効果を発揮します。そのため、持続的に発展するために共同輸配送を取り入れる企業が増えてきました。

共同輸配送と路線便の違い

路線便とは決められた配送ルートを走り、目的地まで荷物を運ぶサービスです。

配送ルートの中継拠点で荷物の積み替えを行って輸送車両の積載効率を向上させます。このような仕組みによって、荷主は安価に配送サービスが利用できますが、配送日時の指定が難しいなど臨機応変な対応は望めません。

共同輸配送と路線便は、どちらも輸送車両の積載効率を向上させるための仕組みです。

しかし、荷主は共同輸配送の方が恩恵を受けられます。なぜなら、複数の物流会社の協働により、配送日時や配送ルートなど臨機応変に対応しやすくなるためです。

また複数社で役割分担することで配送コストを削減できます。つまり、路線便よりも、荷主は安価で高品質な配送サービスを利用できるようになります。

共同輸配送の手法

共同輸配送の手法

共同輸配送の手法には「配送センター集約方式」と「ミルクラン方式」があります。

配送センター集約方式

配送センター集約方式は荷物を配送センターに集約した上で一括配送する手法です。

トラックに荷物をまとめて配送するため、一旦、物流センターに荷物を集めます。同じエリアに配送する荷物を集約し、トラックの積載効率を向上させるため、台数や走行距離の削減が可能です。

しかし、DC(在庫型物流センター)やTC(通過型流通センター)が荷物の仕分けや積み込みなどを行うため、混雑時に誤出荷してしまう恐れがあります。そのため、配送センター集約方式を採用する場合は、システムを導入して入庫・出荷、在庫管理を適切に行う必要があります。

ミルクラン方式

ミルクラン方式は複数の荷主を巡回して荷物を集めた上で、最適なルートで配送する手法です。各サプライヤーを回って集荷するため「巡回集荷」とも呼ばれます。

サプライヤー側は検品を一括で行えるなど手間が省けますが、集荷時間の調整などが行いづらいことが欠点です。

また、サプライヤーが遠方にある場合やトラック1台に収まらない量を集荷してもらいたい場合にも不向きです。サプライヤーとの綿密な打ち合わせが成否を決めます。このような特徴があるため、スーパーへの商品供給、製造業の部品調達などで採用されています。

共同輸配送を導入するメリット

共同輸配送を導入するメリット

共同輸配送を導入するメリットは6つあります。

輸配送を効率化できる

共同輸配送は輸配送の効率化に有効な手段です。輸送車両に荷物をまとめて積載率を向上させ、物流コストの削減や環境負荷の低減につなげます。

例えば、2015年に食品メーカーではF-LINEプロジェクトが発足されました。「競争は商品で、物流は共同で」という理念を掲げて、大手食品メーカー合計6社が一致団結し、共同輸配送にて物流業界が抱える諸問題の改善に取り組んでいます。

持続可能な食品物流の構築を目指すF-LINEプロジェクトが、共同輸配送の好事例としても注目を浴びています。

トラックドライバー不足を解消できる

共同輸配送は、トラックドライバー不足の緩和も期待できます。

現在、物流業界ではドライバー不足が問題となっている中で、働き方改革関連法によりドライバーの時間外労働にも上限が設けられて輸送能力が低下しています。これが、いわゆる「2024年問題」です。

共同輸配送を導入すれば、複数の荷主が1台のトラックを共有して荷物を配送できるようになります。限られた人員でも荷物を届けられる輸送体制を構築できるようになることから、トラックドライバー不足の緩和が期待できます。

物流コストを削減できる

共同輸配送は物流コストを削減できます。その理由は、複数の物流会社が協力し合い、1台のトラックに荷物をまとめて配送し積載効率を向上させることができるためです。

各会社が個別に配送する場合と比較して、トラックの台数や走行距離を減らせ、燃料費・人件費を抑えることができます。

近年、燃料費や人件費が高騰しており物流会社の事業継続が危ぶまれている中、物流コストを抑える有効な手段として共同輸配送が注目されています。

顧客満足度を向上できる

共同輸配送は、顧客満足度の向上にもつなげられます。その理由は、配送サービスを利用するお客様は「早く・確実に・安心して届くサービス」を求めているためです。

共同輸配送を導入すれば、物流体制を強化できて遅延や欠便のリスクを軽減できます。

繁忙期に単独では対応し切れない場合でも、共同輸配送であれば柔軟に対応できるようになります。物流体制の強化はお客様や取引先からの信頼の獲得にも有効な取り組みです。

CO₂排出量を削減できる

共同輸配送は、環境負荷を低減する取り組みです。共同輸配送を導入し、輸配送を統合すれば走行車両の台数を削減でき、それに伴ってCO₂の排出量も大幅に抑えられます。

例えば、同じエリアに配送する荷物をまとめて1台のトラックで運べば、個別配送に比べて車両の数を減らし、燃料使用量を抑えられます。こうした取り組みは、企業の社会的責任CSRやESGに直結するものです。

投資家や機関は社会的責任CSRやESGに取り組む企業を支援しているため、上場企業を中心に共同輸配送の導入が始まりました。

政府の支援や補助金を受けられる

政府は持続可能な物流や環境負荷の軽減を目的に共同輸配送などの取り組みを後押ししています。

物流総合効率化法の改正にて「総合効率化計画認定制度」が制定されましたが、この制度に認定された企業は、法人税の割増償却や固定資産税の軽減措置、市街化調整区域での施設立地に関する規制緩和などの優遇措置を受けられます。

政府の支援や補助金を受けながら経営基盤を強化できるベストタイミングです。このような政府の後押しもあるため、物流体制の見直しを図る企業が増えてきています。

共同輸配送を導入するデメリット

共同輸配送を導入するデメリット

共同輸配送を導入するとデメリットも4つあります。

臨機応変な対応がしにくい

共同輸配送は柔軟な対応が求められる場面で制約が生じる場合があります。なぜなら、各物流会社が配送ルートやスケジュールを綿密に話し合った上で運行計画を策定しているためです。

各自で荷物を配送する場合は、配送先の追加や時間指定などに柔軟に対応できましたが、共同輸配送は自由度が下がります。

緊急の依頼時には各物流会社で合意を取らなければならず即応性に欠けてしまいかねません。こうした事態を避けるため、緊急時の対応フローを明確にしておくことがことが望ましいです。

料金設定が難航する

共同輸配送では、料金設定の調整が難航しやすいです。

なぜなら、各物流会社が協働する上で荷量や配送頻度、距離に応じた料金体系を新たに設定する必要があるためです。関係各社の事情を踏まえた上で、料金体系を構築しなければならず協議が不可欠です。

単純な割り勘や定率配分では不公平が生じてしまうこ恐れがあるため、各社で合意を取る必要があります。しかし、合意が得られず、共同輸配送の導入に時間がかかるというケースも多く見受けられます。

荷物の管理が難しくなる

共同輸配送は荷物の管理体制が複雑化し状況把握が難しくなります。なぜなら、1台の車両に複数の荷物を積載する場合は荷物の位置の追跡が難しくなるためです。

従来は、荷物追跡システムで荷物の位置を追跡していましたが、パートナー企業とシステム連携しなければなりません。各物流会社が共通で利用できるシステムの導入や既存システムの改修は必須となります。そのため、共同輸配送ではシステム連携が前提となることを踏まえておきましょう。

パートナー企業を見つけにくい

共同輸配送を実現したくても、最適なパートナー企業を見つけにくく難航します。なぜなら、共同輸配送を円滑に行うためには「商材」「配送エリア」「配送頻度」などの条件が一致していなければならないためです。

しかし、共同輸配送を実現するマッチングプラットフォームが登場して、パートナー企業は見つかりやすくなってきています。このようなサービスを上手く活用することをおすすめします。

また、競合関係にある企業間で機密保持が障壁となりやすいです。つまり、協力体制を築くために慎重にならざるを得ないのが実情です。

共同輸配送の導入ステップ

共同輸配送の導入ステップ

共同輸配送は7ステップで導入できます。

  1. 現状の課題を洗い出す
  2. 共同輸配送の目的を設定する
  3. パートナー企業を探す
  4. 配送スキームを設計する
  5. 料金ルールを決める
  6. システム導入・共有体制を整備する
  7. 本格的に運用する

ここでは、各ステップについて解説します。

STEP 1:現状の課題を洗い出す

まず、自社の現状の課題を洗い出します。現状の課題を曖昧にしたまま進めると、共同輸配送の目的や方向性がズレてしまい想定外のトラブルが発生する恐れがあります。そのため「物流コストの推移」「積載率の実態」「ドライバーの労働時間」などを調査して、課題の所在を可視化しておくことが重要です。

課題を洗い出した後に原因を特定したり、どのような影響を受けているかを考えたりしておくと、共同輸配送の計画が立てやすくなります。

STEP 2:共同輸配送の目的を設定する

次に共同輸配送の目的を設定します。

目的が曖昧だと協力会社同士で認識の擦り合わせが上手くいかず、協業が成立しなくなります。そのため「輸送コストの〇〇%削減」「積載率〇%に向上」「リードタイムを〇%短縮」「CO₂排出量を〇%削減」などの目的を設定しておきましょう。

具体的な数字を掲げておくことで、共同輸配送の効果測定がしやすくなります。

STEP 3:パートナー企業を探す

次に共同輸配送を実現するためのパートナー企業を探します。

パートナー企業を選ぶ際には「配送エリア」「荷物の種類」「納品先」「配送スケジュール」の観点から相性の良さを確認します。
業界団体、地域の物流ネットワーク、商工会議所などを活用して候補を探すことが可能です。

またマッチングサービスから候補を探すこともできます。最初から大規模な連携を目指すのではなく、小規模な協力から始めて、実績を重ねながら徐々に規模を拡大していくアプローチをおすすめします。

STEP 4:配送スキームを設計する

パートナー企業が決まったら、配送スキームを設計します。各社の配送条件や業務フローを擦り合わせながら運用方法を検討します。検討すべき項目は以下の通りです。

  • 集荷・仕分けの方法
  • 拠点の役割
  • 配送ルート
  • 荷物の積み合わせのルール
  • 車両の種類
  • 配送頻度・曜日・時間帯の調整

各社の役割と責任を明確に定めれば、運用後の混乱を防げます。

STEP 5:料金ルールを決める

共同輸配送を実現するためには、公平かつ納得感のある料金ルールが不可欠です。物流コストの分担を不明瞭にするとトラブルの原因となります。そのため、以下の視点から料金ルールを決めておきましょう。

  • 車両代やトラックドライバー人件費の分担方法
  • 倉庫の管理費用の分担方法
  • 固定費・変動費の扱い方
  • 遅延やキャンセル、再配達時の取り決め

重要なことは、各社が納得した上で共同輸配送できる状態を作ることです。

STEP 6:システム導入・共有体制を整備する

共同輸配送では、複数の企業で配送網を共有するため、配送状況を共有する体制の整備が不可欠です。輸配送管理システム(TMS)、在庫管理システム(WMS)、受発注システムを導入し、データ連携するためにデータフォーマットを整えることで情報が共有できるようになります。

システムを導入やデータフォーマットを整えた後に、現場担当者向けにシステムの操作に関する研修を行います。

STEP 7:本格運用へ

本格的な運用フェーズに入ります。配送スキーム、料金ルール、システム体制に基づいて配送業務を行います。

共同輸配送を始めた頃は想定外のトラブルが発生する恐れがあるため、各社で定期的に進捗状況を報告し合い、柔軟に対応できる体制を整えておくことが大切です。

また、月次や四半期毎に定期的に振り返り、共同輸配送する上でどこを改善すべきかを話し合います。オープンなコミュニケーションを心がけ、信頼関係を深めることで円滑な運用ができます。

共同輸配送を実現した物流会社の事例

共同輸配送を実現した物流会社の事例

共同輸配送を実現するために、各社どのような工夫をしているのでしょうか?ここでは共同輸配送を実現した物流会社の事例をご紹介します。

読売ロジスティクス:「TranOpt」で共同輸配送を成立

読売ロジスティクスは、新聞夕刊の配送後の「帰り便」の有効活用方法を模索していました。同社はAIによって業界を跨いだ荷主・物流会社のマッチングを成立させるマッチングサービス「TranOpt」を通じて、鋼材製品の配送手段を探していた共和熱処理と出会い、異業種連携のスキームを構築しました。

新聞夕刊の配送後の「帰り便」で鋼材製品を配送し空車回送の削減に成功しました。異業種間でも目的が一致すれば、共同輸配送は実現できることを示した好事例として紹介されています。

サトー商会:物流経営戦略のために「HACOBU」で物流構造を改革

サトー商会は、東北地方に拠点を構える業務用食品卸企業です。東北地方の人口減少や2025年問題に対応するため、物流構造の見直しを検討していました。

しかし、従来の体制では改革案の実行に踏み出せなかったことから、組織横断チームの結成を目指して物流DX人材育成プログラム「Hacobu ACADEMY」を受講させました。

「物流は経営戦略である」との共通認識を醸成し、持続可能な物流環境の構築に向けて、全社一丸となって取り組んでいます。営業部隊がお客様と契約条件などを見直し輸配送改革ルート再編し、車両を効率的に活用する共同輸配送の取り組みも進められています。

三井住友海上:「Polaris Navi」で持続可能な物流環境を構築

三井住友海上は、ラストワンマイル配送における課題解決を目指し、ウィルポートおよびインパクトサークルと業務提携を締結しました。

共同輸配送管理システム「Polaris Navi」を活用し、複数荷主の伝票一元管理やAIによる最適ルートの生成を実現しています。

複数荷主の荷物を混載し、短時間でより多くの荷物を配送できるようにし、2024年以降も持続可能な物流環境を目指しています。持続可能な物流環境を構築するにあたって参考になると注目されている事例です。

まとめ

共同輸配送は、ドライバー不足や配送能力の低下といった物流業界の課題を解決する有力な手段として注目を集めています。共同輸配送の導入にはパートナー選定、運用スキームの構築など段階的な準備が必要ですが、積載率の向上・コスト削減・環境負荷の軽減が期待できます。

政府も共同輸配送を推奨しており、「総合効率化計画認定制度」に認定されれば、法人税の割増償却や固定資産税の軽減措置、市街化調整区域での施設立地に関する規制緩和などの優遇措置を受けられるチャンスです。そのため、持続可能な物流体制の構築の必要性を感じた場合には、これを機会に共同輸配送を検討してみてください。

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