
目次
SOC(Shipper’s Own Container)とは、「荷主が自ら所有するコンテナ」を意味します。通常、海上輸送では船会社からコンテナ(COC=Carrier’s Own Container)を借りて貨物を運びますが、SOCではコンテナを自社で用意して輸送に使います。自社所有であるため、コンテナの使用条件が柔軟になり、特定の物流ニーズに応える選択肢として注目されています。
本記事では、SOCコンテナが使用されている理由、どんな企業が使用しているのか、COCコンテナとの違い、SOCを使用する注意点について解説します。
なぜSOCを使うのか?
なぜ、SOCが使われているのでしょうか。SOCが使用される3つの理由について解説します。
コンテナを港に返却する期限がない
船会社が提供するコンテナ(COC)の場合、港からコンテナを搬出した後、決められたフリータイム内にコンテナを返却しなければなりません。これを過ぎると延滞料金(ディテンション)が発生します。
一方で、SOCは荷主が自分で用意するコンテナなので、港から搬出した後に「いつまでに返却」という期限がなく、返却のプレッシャーがないのが大きな利点です。
自社計画に合わせて最適な船便を選べる
COCはコンテナを持つ船会社の便に限定されるため、スケジュールの自由度が低くなります。
一方SOCは、荷主がコンテナを用意するため、複数の船会社の中から都合の良い便を選べます。
その結果、自社の輸送計画に合わせた柔軟なスケジューリングが可能になります。
特殊用途にも対応
タンクコンテナやリーファーコンテナなど、特殊な貨物用コンテナを自社で管理できるため、自社で定めた衛生基準をしっかり保ちやすくなります。
これにより、品質や安全性が求められる貨物も安心して輸送でき、より細やかな管理体制を築くことが可能です。
SOCはどんな企業が使っている?
メーカー・商社
まず代表的なのが、液体や化学薬品などを運ぶためにタンクコンテナや特殊仕様のコンテナを必要とするメーカーや商社です。こうした貨物は、船会社が提供する標準的なコンテナ(COC)では対応できない場合があり、自社で所有または管理する専用コンテナを使う必要があります。そのため、これらの企業ではSOCの利用が一般的です。
建設・インフラ関連のプロジェクトを手がける企業
さらに、建設・インフラ関連のプロジェクトを手がける企業も、SOCを積極的に活用する傾向があります。これらの現場では、コンテナを長期間現地で保管施設として使うこともあるため、フリータイム(船会社から貸与されたCOCの無料利用期間)に制限のないSOCの方が、柔軟な運用が可能になるのです。
SOCはどのように輸送されている?
荷主や取引先が所有するSOCを用いた輸送を、フォワーダー(国際貨物の手配業者)が調整するケースが多く見られます。フォワーダー自体がSOCを保有しているわけではありませんが、荷主のニーズに応じて、SOCを使った柔軟な輸送ルートを設計・手配します。特に、特殊貨物や定期的な輸送ルートを持つ企業にとって、SOCは物流の自由度を高める手段となっています。
SOCとCOCの違い
SOCとCOC(船会社所有コンテナ)の違いは以下の通りになります。
・所有者
SOC:荷主自身が所有
COC:船会社が所有
・費用発生のタイミング
SOC:主に輸送費(コンテナ自体の利用料なし)
COC:コンテナ使用に応じてフリータイム後に費用発生
・運用の自由度
SOC:柔軟なスケジュール設計が可能
COC:返却やルートに制限あり
・返却義務
SOC:なし(自社で保管または再利用)
COC:指定場所・期日までに返却必須
このように、輸送の自由度やコスト管理の観点から、SOCを用いた輸送を選択する企業もあります。
SOCを使用するうえでの注意点
輸送するうえで便利なSOCにも、いくつかの課題があります。
コンテナの管理責任がある
SOCは自社でコンテナを所有・管理するため、検査や修理、清掃などのメンテナンス業務が発生します。また、国際的な安全基準であるCSC認証の適合も必須であり、管理の手間やコストが増える点に注意が必要です。
船会社が積載を制限する場合がある
一部の船会社では、外部所有のコンテナ(SOC)の積載を制限している場合があります。特に品質や安全面で厳しい基準を設けている船会社もあるため、事前に仕様や条件の確認を行うことが重要です。
物流コストの最適化には戦略が必要
SOCは繰り返し利用できるルートや一定量の貨物が見込める場合に有利ですが、そうでない場合はコストが逆に高くなる可能性があります。導入前に運用の前提条件を明確にし、最適な戦略を立てることが求められます。
まとめ
SOCは、物流の自由度を高める一方で、コンテナの管理や運用に一定の知識と体制が求められる方法です。特に繰り返し輸送が多く、特定の仕様を求められる貨物(例:液体や冷蔵品など)では、COCよりも有利になるケースもあります。
一方で、コンテナの維持や認証、船会社との調整といった負担もあるため、自社の物流戦略と照らし合わせて慎重に判断することが大切です。