玉掛け作業とは?10分でわかりやすく解説

工場や建設現場、物流の最前線では、毎日さまざまな重量物が扱われています。機械や材料をクレーンで持ち上げて移動させる場面も多く、安全かつ効率的な作業が求められます。

そのなかで欠かせないのが、「玉掛け作業」。クレーンで物を持ち上げると聞くと、操作レバーを動かすクレーンオペレーターの姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、実はその前段階として、クレーンのフックに荷役物を取り付ける専門的な作業が存在します。この作業は、単に「引っかける」「吊るす」だけのものではなく、高い技術と知識、安全意識が求められる重要な工程です。

この記事では、玉掛け作業について基礎からわかりやすく解説します。

「玉掛け作業」ってどんな仕事?

玉掛け作業とは、クレーンを使って物を持ち上げる前に、荷役物にフックやワイヤーを正しく掛ける作業のことを指します。また荷役物を目的地に降ろした後に、フックを外す作業も含まれます。荷役物の形状や重さ、バランスを見極めて、適切な位置にしっかりと器具を取り付ける必要があり、作業の質によってクレーン作業全体の安全性が左右される非常に重要な役割です。

玉掛け作業を担う人は、単なる補助作業員ではなく「安全管理者の一員」としての役割を果たしています。

なぜ玉掛け作業が重要なのか?

一見地味に見える玉掛け作業ですが、その責任は非常に重く、現場の「要(かなめ)」とも言える存在です。以下のような理由があります。

荷崩れ、落下の防止

もしワイヤーやチェーンの掛け方が不適切だと、吊り上げた瞬間にバランスを崩したり、落下したりする危険があります。作業者だけでなく、周囲にいる人々の命にも関わる重大な事故につながりかねません。

荷役物の破損を防ぐ

クレーンで吊り上げる荷物は、精密機器や高価な製品であることもあります。荷役物の重心を誤って判断すれば、落下や衝撃によって荷物が破損してしまうことも。物流の損失リスクを最小限に抑えるためにも、確実な取り付け作業が必要です。

作業の効率化

正確に荷役物を掛けることで、クレーンオペレーターがスムーズに作業を進められます。逆に、取り付けミスがあると作業が中断され、現場全体の進行に支障をきたします。

使用する道具とその選び方

玉掛け作業で使用する道具にはさまざまな種類があります。それぞれの特性を理解し、荷役物や作業環境に応じて適切に選ぶことが求められます。

ワイヤーロープ

最も一般的に使われる資材で、耐久性が高く、多様な荷役物に対応できます。ただし、摩耗やキンク(ねじれ)が発生すると強度が低下するため、日々の点検が欠かせません。

チェーンスリング

重い荷役物や高温環境で使用されることが多く、頑丈さが魅力です。ワイヤーに比べて取り回しはやや劣りますが、安全性は高いと言えます。

ベルトスリング

軽量で柔らかい素材のため、表面が傷つきやすい荷役物などを扱うときに適しています。ただし、刃物や角のある荷物には不向きです。

玉掛け作業を行うには資格が必要

この作業を行うためには、法律で定められた講習や資格が必要です。労働安全衛生法では、「1トン以上の荷をクレーンで吊り上げる作業」に関しては、特別教育または技能講習を修了していなければならないとされています。

現場で実作業を行う人だけでなく、トラックドライバーが運送先で貨物の吊り上げる作業を行う場合もあるため、ただ運ぶだけでなく「積み下ろしまで一貫して対応できるドライバー」として評価されることがあります。

● 特別教育(1トン未満)

比較的軽量な荷役物を扱う場合には、企業内で実施される「特別教育」を受けることで作業が可能になります。所定の時間数(学科・実技)を受講し、安全知識を習得します。

● 技能講習(1トン以上)

より大きな荷役物を扱う際は、国が認定する講習機関での「技能講習」が必要です。修了後には修了証が交付され、現場での作業が可能になります。

実際の作業の流れ

現場での作業は、以下のような手順で行われます。

1. 荷役物の確認:重さ・形状・重心・材質を確認
2. 吊り具の選定:荷役物に適した器具を選び、点検する
3. 取り付け:ワイヤーやスリングを適切な位置に掛ける
4. 合図:クレーンオペレーターに指示を出す
5. 吊り上げ:荷役物のバランスを確認しながら、ゆっくり持ち上げる
6. 移動・設置:安全確認をしつつ所定の場所へ荷を下ろす
7. 取り外し:荷が安定してから、フックを外す

ここでは、荷役物を吊り上げる前後の合図出しやバランス確認も重要なポイントになります。

現場で求められるのは「技術」と「判断力」

この作業においては、単なる知識だけでなく「現場での判断力」が非常に重要です。

たとえば、同じ重さの荷役物でも、重心が偏っていれば吊り方が変わります。風が強い日や、地面が傾いている現場では、さらに注意が必要になります。経験を積むことで、五感を使って状況を読み取り、安全な判断を下せるようになります。

また、作業者同士のコミュニケーション能力も欠かせません。荷を吊り上げる際には、声かけやジェスチャーなどを使って、周囲との連携を取りながら進める必要があります。

まとめ

玉掛け・取り外し作業は、クレーン作業のスタート地点であり、安全と効率を守るための要です。高い技術と判断力、そして安全意識が求められる仕事であり、現場のすべての動きをスムーズにするための大切な役割を担っています。

物流や製造の業界で働く方にとっては、直接作業に関わらなくても、この工程の重要性を知っておくことは、チーム全体の理解と連携につながります。ぜひ一度、現場の「プロの技」に目を向けてみてください。

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