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国際取引が活発になる中で、海外から貨物を輸入する機会がますます増えています。しかし、輸入貨物はただ港に到着したからといってすぐに引き取れるわけではありません。
実際には、税関に申告を行い、一部の貨物は必要に応じて検査を受け、許可が出てはじめて貨物が国内に入ることができます。この税関検査こそが、国の安全や経済を守るために欠かせないステップなのです。
この記事では、主に貨物の輸入時に行われる「税関検査」に関わる一連の流れと、輸出の税関検査についても解説します。
貨物が輸入されるまでの流れ
まず、海外からの貨物がどのような流れで日本に届くのかを簡単に整理してみましょう。
1. 貨物の到着
船や飛行機などで海外から貨物が到着します。
2. 通関手続き
輸入者(または通関業者)が税関に対して輸入の申告を行います。関税や消費税の計算もこのタイミングです。
3. 必要に応じた検査
申告内容や貨物の種類などに応じて、税関が検査を指示することがあります。
4. 輸入許可
問題がなければ輸入許可が下り、貨物は国内で流通できるようになります。
この流れの中で「検査」が行われるのは、輸入申告の後、輸入許可が下りる前のタイミングです。
なぜ検査が行われるのか?その目的とは
税関が貨物に対して検査を行う理由は、大きく分けて以下の3つに集約されます。
1. 社会悪物品の流入防止
麻薬や拳銃、偽ブランド品など、日本国内に持ち込んではいけない物品(社会悪物品)の流入を防ぐことが最大の目的の一つです。これにより、治安や消費者保護の観点から社会全体の安全が守られます。
2. 貿易の秩序維持
輸入貨物は、関税法や他の関連法令に従って適切に取り扱われる必要があります。不正な輸入が横行すれば、国内産業との競争条件が不公平になり、国際的な信用も失われかねません。
3. 関税等の適正な徴収
関税や消費税が正しく納められているかを確認するためにも、申告内容と実際の貨物が一致しているかどうかを検査によって確認する必要があります。脱税や過少申告の防止が目的です。
検査の種類とは?
貨物に対して行われる検査には、いくつかの種類があります。ここでは代表的なものを3つご紹介します。
1. 書類審査
輸入申告時に提出される書類をもとに、貨物の種類・数量・価格などを審査します。必要に応じて追加書類の提出が求められることもあります。
2. 開披検査(改品検査)
貨物の外装や梱包を開けて中身を確認する検査です。申告された内容と実物が一致しているかを詳細に確認します。
3. 大型エックス線検査
コンテナごと大型のX線装置を使って貨物をスキャンし、不審物や申告と異なる内容がないかを調べる検査です。非接触で効率的に中身を確認できるため、近年はこの方法も多く用いられています。
検査対象になる貨物とは?
すべての輸入貨物が必ず検査されるわけではありません。税関では、貨物の内容や申告の履歴、輸入者の過去の実績などをもとに、リスク分析を行って検査の要否を判断しています。以下のようなケースでは検査が行われやすくなります
・高額商品や課税額の大きい貨物
・輸入実績が少ない新規取引先からの貨物
・過去に不備のあった輸入者の申告
・他法令(植物防疫法や食品衛生法など)に関係する貨物
税関検査は輸出の場合もある?
輸出時にも、税関による検査が行われる場合があります。税関検査というと輸入のイメージが強いかもしれませんが、輸出でも関税法などに基づきチェック体制が整っています。
ただし、輸出に対する検査の頻度は非常に低く、多くは書類審査のみで通関されます。現物検査に至るのは、ごく一部のケースに限られます。
主な検査目的は以下の通りです
・規制品目(戦略物資、文化財など)の確認
・申告内容の正確性の確認
・テロ対策や安全保障上のチェック
通常、貨物の特性や過去の違反歴、不自然な申告がある場合などに限定して行われます。
輸出者は、検査の可能性を理解しつつも、正確な申告を行っていれば過度な心配は不要です。
まとめ
税関検査は、輸入貨物が日本国内に入る前に実施される重要なプロセスです。社会悪物品の流入を防ぎ、貿易の秩序を守り、適正な関税徴収を確保するという重要な役割を担っています。
検査には書類審査と現物検査があり、内容やリスクに応じて対応が分かれます。検査の流れや種類を正しく理解し、適切に準備・対応することは、輸入業務を円滑に進める上で不可欠です。
なお、輸出においても税関検査は実施されることがありますが、その頻度は輸入に比べて非常に低く、通常は書類審査のみで通関されるケースが大半です。ただし、戦略物資や規制品目に関する輸出では、検査が求められる可能性もあるため、基本的な理解を備えておくと安心です。
国際物流に関わる事業者は、こうした税関の仕組みを正しく把握し、スムーズな貿易業務を実現していきましょう。