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グローバル化が進む現代、企業にとって「スピーディーな輸入」は競争力を左右する重要なポイントです。特に、在庫回転率を上げたいメーカーや、納期厳守が求められる物流企業にとって、輸入手続きのスピードは死活問題になります。
そんな中、注目を集めているのが「到着即時輸入許可制度」です。
この制度を活用すれば、従来よりも圧倒的に早く貨物を引き取ることができ、時間もコストも大幅に削減できるのです。
今回は、物流業界で話題のこの制度について、わかりやすく解説していきます。
到着即時輸入許可制度とは?
「到着即時輸入許可制度」とは、貨物が港や空港に到着したそのタイミングで、通常必要な税関手続きを即座に完了させ、貨物を速やかに引き取ることを可能にする特別な仕組みです。
従来、輸入貨物は一定の時間、倉庫で保管されながら税関の審査を待つ必要がありましたが、この制度を活用することで、輸入許可を「到着と同時に」取得でき、保管コストの削減やリードタイムの短縮につながります。
ただし、制度の利用には、税関との事前協議や一定の信頼性基準を満たすことが求められるため、企業には高いコンプライアンス意識と適切な管理体制が必要です。
到着即時輸入許可制度のメリットは?
では、この制度を使うことでどんなメリットがあるのでしょうか?ここでは2つのメリットを紹介します。
時間を大幅に短縮
通常、海外から商品が届いても、税関の審査が終わるまで数時間~数日かかります。しかし「到着即時輸入許可制度」を使えば、貨物が港や空港に到着した瞬間に、即座に税関から輸入許可が出て、日本国内に貨物を自由に動かすことができます。
また、税関申告の事前審査が終わっているため、貨物到着時間にあわせてトラックや倉庫手配を事前に確定できます。スムーズで効率的な配送を行う備えにもなるでしょう。
物流業界にとって「時間はお金」。数時間早く動かせるだけで、流通コストがグンと下がり、よりスピーディーにお客さんの元へ商品を届けることができます。
サプライチェーンの強化
この制度を活用することで、サプライチェーンをスムーズに進めることができます。具体的には、「注文→仕入れ→輸入→配送→販売」までのリードタイムが短くなり、在庫リスクも減少します。例えば、在庫を抱えたくないアパレル業界、売れ筋商品の回転が速い家電業界
食品や医薬品のように鮮度が大事な業界にはありがたい制度です。
到着即時輸入許可制度を使うための条件は?
「到着即時輸入許可制度」はとても便利ですが、誰でもすぐに使える制度ではありません。使うためには、税関から「この会社なら問題なくスムーズに輸入できる」と信頼してもらう必要があります。ここでは4つの条件について解説します。
正確な輸入管理体制が整っていること
まず大前提として、輸入する貨物に関する情報を正確かつスピーディーに税関へ伝えられる体制を作っておく必要があります。必要な情報としては以下の通りです。
・商品の品名や数量が書類と実物で一致しているか
・危険物や輸入禁止品が紛れていないか
・税関に提出する書類(インボイス、パッキングリスト、B/Lなど)が正確かつ不備なく揃えられているか
これらが毎回きちんと管理できている企業であることが求められます。
社内ルールやチェック体制がしっかりしていること
輸入業務では、書類のミスや確認漏れがあると税関でトラブルになります。そのため、社内で次のようなルールを整備していることが重要です。
・輸入貨物の情報を事前に確認・記録するルール
・社内でダブルチェック(複数人の確認)を行う仕組み
・万が一問題が起きた場合の再発防止策をすぐ講じられる体制
つまり「社内できちんと自分たちで管理・監視できていること」が税関から信頼されるポイントです。
不正輸入を防ぐリスク対策があること
税関は「輸入品の安全と法令遵守」をとても重視しています。
・麻薬や偽ブランド品などの不正品が紛れていないか
・関税逃れや虚偽申告が行われていないか
・許可が必要な輸入品(例えば医薬品や動物検疫対象品など)を正しい手続きで扱っているか
これらを企業として事前に防ぐ仕組み(コンプライアンス体制)を作っていることが必要です。コンプライアンス体制が整っていることで、「この会社は安全に輸入取引ができる」と税関からみなされます。
税関との事前協議と承認
最後に大事なのが、税関と「事前協議」を行い、正式に制度の利用が許可されることです。
利用するにあたり、以下の項目を具体的に説明します。
・どんな貨物をどんな頻度で輸入しているのか
・社内でどんな管理体制を整備しているのか
・輸入時の手続きミスやトラブルが少ないこと
そして、税関がそれを確認し「問題なし」と判断した場合、制度利用の許可が出ます。これをクリアしてはじめて「到着即時輸入許可制度」の利用が可能になります。
到着即時輸入許可制度とAEO制度との関連
さらに到着即時輸入許可制度を利用するにあたって、AEO(Authorized Economic Operator)制度が関わることがあります。
AEO認定とは、税関が企業のセキュリティやコンプライアンス体制を審査し、「安全で信頼できる事業者だ」と正式に認める仕組みです。主にメーカーや商社などの輸出入する企業、その貨物を取り扱う事業者である物流業者が認定を受けることができます。しかし、AEO認定を受けるにあたり、以下の項目で厳しい審査が求められます。
・輸入・輸出手続きに関する内部監査体制
・書類保管と情報管理の正確性
・セキュリティ対策(貨物の盗難防止、不正混入防止)
・法令遵守の実績
到着即時輸入許可制度は、税関から信頼される体制が整い、条件を満たして利用可能と判断された場合は、AEO認定を取得する必要はありません。
しかし、AEO認定を受けた輸入者は到着即時輸入許可制度をよりスムーズに活用できます。
まとめ:到着即時輸入許可制度は物流業界の頼れる味方!
「到着即時輸入許可制度」は、信頼できる事業者に与えられる特別なルールです。
輸入のスピードが一気に上がり、サプライチェーンが効率化するなどのメリットがあります。
一方で、制度を使うには「税関との信頼関係」「正確な管理体制」が必要不可欠です。つまり、この制度は単なる特例ではなく、企業の信頼と実績が形になる証でもあります。到着即時輸入許可制度を上手に活用すれば、輸送コストや時間を大幅に削減し、ビジネスチャンスを逃さない強い物流体制を築くことができます。これからグローバル取引を広げたい企業にとって、ぜひこの制度を知っておきましょう。