物流総合効率化法とは?改正ポイントを事例付きで解説! 

2025.05.30

今回は物流総合効率化法について解説します。2024年5月に物流総合効率化法が改正され、物流事業者はどのように対応べきなのか事例も併せてご紹介しています。そのため、法改正への対応を検討している物流事業者は、この記事を読んでみてください。 

物流業界では「ドライバー不足」「輸送能力の低下」「CO₂排出量の増加」などの課題が年々深刻化しています。こうした状況を受けて、国土交通省は物流総合効率化法を改正し、物流の効率化と脱炭素化の推進に本格的に取り組み始めました。 

今回は物流総合効率化法について詳しく解説します。新たに創設された「総合効率化計画認定制度」についても解説しているため、法改正への対応を検討する際にぜひお役立てください。 

物流総合効率化法とは

物流総合効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)は、荷主・物流事業者間の商慣行を見直し、物流業務の効率化を目指すための法律です。2005年10月に施行された法律ですが、2024年5月に改正されました。 

物流業界が抱える「ドライバー不足」「輸送能力の低下」「CO₂排出量の増加」といった課題を解決していくために、業界事業者は業務や体制の見直しが求められます。 

物流総合効率化法の目的

物流総合効率化法の目的は物流の持続可能性を確保することです。 

物流業界は、約29兆円の市場規模と約226万人の雇用を抱える重要な産業です。しかし、他の業界と比較して労働時間が長く賃金は低いなど労働環境には多くの課題があります。 

働き方改革にてドライバーの時間外労働の上限が規制されましたが、その結果、輸送能力が2024年に14%、2030年に34%不足するという試算があり、荷物が届けられなくなることが問題視されている状況です。この問題を2024年問題と呼びます。このような背景もあり政府が中心となり業界全体の見直しが行われています。 

【2025年4月】物流総合効率化法の改正ポイント

2025年4月から改正物流総合効率化法が施行され、物流業務の効率化を図るためにいくつか変更点が加えられました。ここでは、物流事業者の実務に影響を与えるポイントを4つご紹介します。 

荷主・物流事業者に新たな努力義務が課された

改正物流総合効率化法では、物流業務の効率化を促進するため荷主や物流事業者に対して新たな努力義務が課されます。政府は輸送能力の低下を防ぐために荷待ち・荷役時間を年間125時間/人ほど削減することを目指しています。 

荷主が取り組むべき措置として、パレット導入が挙げられていますが、荷主・物流事業者は方針に協力するように努めましょう。 

●荷主・物流事業者の取り組むべき措置 

取り組むべき措置 取り組みの例 
荷待ち時間の短縮 適切な貨物の受取・引渡⽇時の指⽰、予約システムの導入など 
荷役時間の短縮 パレット等の利⽤、標準化、⼊出庫の効率化に資する資機材の配置、荷積み・荷卸し施設の改善など 
積載率の向上 余裕を持ったリードタイムの設定、運送先の集約など 

⼀定規模を超える事業者は「特定事業者」に指定された

⼀定規模を超える事業者は「特定事業者」に指定されます。 

●特定事業者の判断基準 

荷主 年間9万トン以上の貨物を輸送する 
倉庫業者 年間70万トン以上の貨物を保管する 
運送事業者 事業用自動車を150台以上保有する 

特定事業者には以下の義務が課されます。 

  •  物流効率化に向けた中長期計画を作成して国土交通大臣に提出する 
  •  毎年、中長期計画の実施状況を報告する 
  •  特定荷主や特定連鎖化事業者は、物流業務を統括する管理者を選任する 

中長期計画の未提出は最大50万円、勧告や命令への違反や物流統括管理者の不選任は最大100万円の罰金が課されるため注意しましょう。 

DX・GX投資に対する金融支援が拡充された

改正物流総合効率化法に伴い、物流業界におけるデジタル化(DX)や脱炭素化(GX)を後押しするための設備投資に対して金融支援が拡充されました。 

物流施設におけるDX推進実証事業の公募に申請すれば、補助金の給付のほか、DX・GX推進計画から実行まで伴走支援してもらえます。 

自動倉庫やピッキングロボット、電動トラック、太陽光発電設備など、物流業務効率化と環境対応を両立する機器の導入などが支援が対象となります。企業のDX・GX推進を後押しとなるものなので、上手く活用しましょう。 

総合効率化計画認定制度が導入された

改正物流総合効率化法の施行に伴い、総合効率化計画認定制度が導入されました。 

総合効率化計画認定制度は、複数の事業者が連携して物流業務(輸送、保管、荷さばき、流通加工など)を一体的に実施し、物流の効率化と環境負荷の低減を図る取り組みを支援するものです。 

​「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」などが該当します。総合効率化計画の認定を受ければ、税制優遇や補助金、融資優遇などの恩恵が受けられます。 

<h2>総合効率化計画認定制度とは</h2> 

総合効率化計画認定制度とは、荷主企業と物流事業者が連携して策定する「物流の効率化」に向けた取り組み計画を、国土交通省が認定する制度です。 複数の事業者が共同で取り組む「輸送網の集約」「モーダルシフト」「共同配送」などの施策を対象とし認定を受けることで各種支援が受けられます。 

また、認定事業者マークが付与されます。 

総合効率化計画認定制度のメリット

総合効率化計画認定制度を利用すれば、支援を受けながら持続可能な物流を実現しやすくなります。 

補助金の活用 事業の立ち上げに補助金を給付してもらえる  
税制優遇措置 法人税や固定資産税などの軽減措置が受けられる 法人税:割増償却8%(5年間) 固定資産税:課税標準1/2(5年間) 
開発許可の配慮 市街化調整区域を立地場所に選択できる 
金融支援の利用 信用保険制度の限度額が拡充される 低利子貸付制度や無利子貸付制度が利用できる 

総合効率化計画認定の要件

総合効率化計画として認定を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。 

事業の連携性 複数の荷主・物流事業者が連携し、輸送や保管、荷役などの業務を統合的に実施しているかどうかが評価される 
効率化の効果 輸送距離の短縮、積載率の向上、車両台数の削減など、物流の効率化によって得られる具体的な効果が求められる 
環境負荷の低減 CO₂排出量の削減など、環境面への貢献度が審査対象となる 
実現可能性 スケジュールや実施体制、資金計画などが現実的かつ具体的であるかが問われる  
公共性・地域貢献 地域の物流課題の解決に資する内容であるか、公共交通との連携や地域雇用への波及効果なども評価に含まれる 

総合効率化計画認定の流れ

総合効率化計画の認定を受けるには、以下のステップを踏む必要があります。 

(1)事前相談 

計画の内容について地方運輸局に相談し、申請内容の確認を受けます。 

(2)計画書の作成 

物流業務の効率化の内容(輸送網の集約、共同配送、モーダルシフト、DX・GX設備導入など)を盛り込んだ計画を作成します・ 

(3)申請書類の提出 

運輸局に計画書および必要書類を提出します。 

(4)審査・認定 

国土交通省が内容を審査し、総合効率化計画として認定されます。 

(5)実施・報告 

認定後は、毎年度の進捗状況を報告します。 

改正物流総合効率化法への対応事例

物流業界では、改正物流総合効率化法への対応が急務となっています。ここでは、実際に法改正に対応し、物流の効率化を推進している企業事例をご紹介します。 

鶴信運輸株式会社 

鶴信運輸株式会社は、ドライバーの長時間労働や荷待ち時間の改善を目的に「スワップボディコンテナ車両」を導入しています。スワップボディコンテナ車両とは、車体と荷台を分離できる車両です。スワップボディコンテナ車両を使用して輸送業務と荷役作業を分離することにより、荷待ち時間を短縮しています。結果として、ドライバーの労働環境が改善されました。 

株式会社中央倉庫

株式会社中央倉庫は2023年6月に「滋賀支店 大津営業所」を新設しました。滋賀支店 大津営業所には、他社のドライバーが利用できる休憩室(3室)が設けられています。仮眠ができるベッドや疲れを取るための浴槽があります。 

トラックドライバーの年間時間外労働の上限規制により、長距離を1人で走りきることが難しくなりました。このような問題を解決するために、中間地点の営業所に休憩室を作りました。倉庫会社が休憩室を用意するケースは非常に珍しいですが、挑戦的な取り組みは「総合効率化計画」として認定されました。 

佐川急便株式会社と西濃運輸株式会社

佐川急便株式会社と西濃運輸株式会社は、将来的に持続可能な輸送ネットワークの構築を目指し、荷物の共同輸配送を開始しました。人口が減少している地域の青森県下北郡向け荷物の配送から始めています。 

佐川急便のトラックドライバーが西濃運輸の盛岡支店に立ちより、荷物を集め共同輸配送をしています。この取り組みは、トラックの低積載率運行の改善、ドライバー不足への対応が行えるとして「総合効率化計画」として認定されています。 

まとめ 

改正物流総合効率化法は「ドライバー不足」「長時間労働」「CO₂排出量の増加」といった課題を解決するための法律です。荷主・物流事業者に新たな努力義務が課されました。特定事業者に該当する場合は物流効率化に向けた中長期計画を作成して、国土交通省に実施状況を報告しなければなりません。 

また、法改正に伴い、DX・GX投資に対する金融支援が拡充し、総合効率化計画認定制度が導入されました。物流事業者が事業を見直すチャンスともなっているため、ぜひ活用してみてください。 

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