一括配送とは?10分で解説

商品や製品をエンドユーザーや販売先に届ける「配送」は、物流のなかでも最終段階に位置づけられる重要な業務です。この配送工程をいかに効率よく行うかは、コスト削減やサービス品質の向上に直結します。

そこで近年注目されているのが「一括配送」という手法です。複数の企業や出荷元が協力し、1台のトラックでまとめて荷物を運ぶこの仕組みは、効率化と環境対策の両面でメリットを発揮しています。

本記事では、一括配送の基本的な考え方、通常の配送との違い、導入メリット、注意点、そして物流業界における活用の現状までを、わかりやすく解説します。

一括配送とは?その基本的な仕組み

一括配送とは、複数の荷主が出荷する貨物をまとめて1台のトラックなどに積み込み、目的地まで共同で配送する方式です。

たとえば、ある地域のスーパーやドラッグストアに、複数のメーカーがそれぞれ自社製品を個別に届けていたとします。この場合、毎日多数のトラックが同じ店舗に別々に出入りすることになります。

一括配送では、これら複数のメーカーの荷物をあらかじめ集約して、1台のトラックで一度に届けます。これにより、配送の回数を減らし、効率的な物流が可能になります。

通常の個別配送との違い

配送は通常、「荷主ごとに1台の車両を手配し、それぞれの荷物を出荷先へ直接届ける」というスタイルが基本です。この方式には、荷主ごとの要望を細かく反映できるという利点がありますが、以下のような課題もあります。

  • トラックの積載効率が悪い(空車スペースが多い)
  • 配送先での受け入れ対応が煩雑になる(同じ店舗に1日に複数台のトラックが来る)
  • 輸送コストが高くなる(人件費・燃料費などが重複する)

一括配送は、これらの課題を解消する手段として注目されており、配送の「まとめ役」となる物流会社が全体を調整することで、複数荷主の出荷を効率よく取り扱う仕組みを実現しています。

一括配送のメリット

一括配送を導入することで得られる代表的なメリットを整理してみましょう。

1. 配送コストの削減

一括配送では、複数の荷主の荷物を1台のトラックに積み込むことで、1件あたりの輸送コストを大幅に削減できます。配送件数が減るため、ドライバーの拘束時間や人件費、燃料費、さらには高速道路の通行料などのコストが分散され、全体の物流コストを抑えることが可能です。

特に、頻繁に出荷する企業にとっては、長期的に見て大きな経費削減効果があります。

2. 積載効率の改善

従来の個別配送では、トラックの空きスペースが多くなりがちで、効率的な運用が難しいという課題がありました。一括配送では複数荷主の荷物を組み合わせて積載できるため、車両1台あたりの積載効率が飛躍的に向上します。

これにより、輸送車両の台数そのものを減らすことも可能となり、よりスマートな物流体制を構築できます。

3. 納品先での作業負荷軽減

納品先で働く受け入れ担当者にとっても、一括配送は大きなメリットとなります。通常、同じ店舗に複数のトラックが個別に出入りする場合、それぞれに検品・受け取り作業が発生し、手間がかかります。一括配送であれば、荷物がまとめて届くため、作業が一度で済み、効率的に処理できるようになります。

人手不足が深刻な小売現場などで、こうした負担軽減は特に歓迎されます。

4. 環境負荷の軽減

車両の稼働台数や走行距離が減ることで、排出されるCO₂の量も削減されます。これは、温室効果ガスの削減や大気汚染の防止といった環境面での効果に直結します。

さらに、環境配慮の観点からESG投資やSDGsへの対応を求められる企業にとっては、社会的評価の向上や企業ブランディングにもつながります。

一括配送の注意点

一方で、一括配送にはいくつかの注意点もあります。導入にあたっては、以下の点を慎重に検討する必要があります。

1. リードタイムの柔軟性が必要

複数の荷主の出荷スケジュールを調整するため、すべての荷主の希望納期に合わせることが難しい場合があります。納品までのリードタイムにある程度の余裕が必要となり、「即日納品」や「細かい時間指定」が求められるような場面には不向きなケースもあります。

導入前には、自社の出荷サイクルと照らし合わせ、調整可能かどうかを検討する必要があります。

2. 荷姿や積み付けの調整

荷物のサイズ・形状・梱包仕様が統一されていないと、トラックへの積み付けに時間がかかり、スペースの無駄や荷崩れのリスクが発生することがあります。

効率的な混載を実現するためには、荷姿の標準化やパレットの使用、仕分け方法の事前調整など、ある程度の共通ルールが求められます。

これらの調整にかかる手間やコストも考慮が必要です。

3. トラブル時の責任分担

混載輸送では、複数の荷主の商品が一緒に運ばれるため、破損や遅延、紛失などのトラブルが起きた場合の責任の所在が不明確になる可能性があります。たとえば、他の荷主の荷物によって圧迫され破損した場合、どこに責任があるのか揉める可能性もあります。

これを避けるために、事前に契約書や運用マニュアルを整備し、責任範囲を明確にしておくことが重要です。

昨今の物流業界における一括配送の活用状況

一括配送の活用は、大手小売チェーンやドラッグストア、コンビニ業界を中心に広がっています。特に、都市部の納品先では「時間指定納品」や「車両の出入り制限」などが厳しくなっており、無駄な車両の出入りを抑える手段として有効です。

また、地方においてもトラックドライバー不足が深刻化しており、複数荷主による混載配送の仕組みを導入することで、限られた輸送リソースを有効活用しようとする動きが加速しています。

物流会社によっては、特定の業種や地域に特化した「一括配送ネットワーク」を構築し、荷主の募集・マッチング・配送計画の立案までをワンストップで対応するサービスを提供しています。こうした動きは、今後さらに一般化していくと見られています。

一括配送が求められる背景とは?

背景には、物流業界を取り巻く次のような課題があります。

ドライバー不足と労働時間規制

物流業界では慢性的なドライバー不足が続いており、特に地方や長距離輸送では人材確保が困難になっています。さらに、2024年4月からは「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられ(年960時間まで)、1人のドライバーが対応できる輸送距離・量が大幅に制限されることになりました。

これにより、これまでのような「1件1便」の非効率な配送では業務が回らなくなり、1台あたりの輸送効率を最大化する必要性が高まっています。一括配送は、こうした規制強化への現実的な対策として、多くの物流企業・荷主企業から注目されています。

人件費・燃料費の高騰

経済全体の物価上昇に伴い、物流コストも大きく上昇しています。特に燃料費の高騰や、ドライバーの人件費増加は、物流企業にとって直接的な打撃となります。こうした中、配送回数や車両台数を減らせる一括配送は、コスト面での合理化手段として非常に有効です。

複数企業間で輸送リソースを共有することで、費用負担の分散も可能になります。

環境配慮・SDGs対応の加速

企業の社会的責任(CSR)や、ESG投資・SDGs対応が求められる中、環境に配慮した物流の仕組みづくりが重要視されています。一括配送を活用することで、トラックの走行距離や車両台数を削減できるため、CO₂排出量の削減にもつながります。

とくに、小売・製造業を中心とした企業では、「環境配慮型サプライチェーン」の構築が競争力や企業価値向上にも直結するようになっており、その一手として一括配送を採用するケースが増えています。

一括配送の今後の展望

一括配送は今後、「単なるコスト削減手段」から「業界全体で支える持続可能な物流インフラ」へと進化していく可能性があります。これまでは一部の大企業や特定業界での取り組みが中心でしたが、今後は中小規模のメーカーや卸売業者にまで広がると見られています。

また、AIや配送計画最適化ソフトの活用により、複数荷主間のスケジュール調整や積載プランの作成も以前より容易になってきています。技術の進歩とともに、一括配送はより柔軟で高度な仕組みへと進化していくでしょう。

まとめ

一括配送とは、複数の荷主が出荷する荷物を1台のトラックにまとめて配送する仕組みであり、配送効率の向上やコスト削減、環境配慮といった多くの利点を持っています。

一方で、スケジュール調整や荷姿の統一、責任の明確化など、円滑に運用するためには一定の準備やルール作りが求められます。

物流や製造に携わる企業にとって、一括配送は今後ますます重要な物流手法の一つとなっていくでしょう。自社にとって最適な形で取り入れることができれば、持続可能で効率的な物流体制の構築に大きく貢献するはずです。

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