公共倉庫とは?10分で解説

2025.08.04

企業の物流活動を支える倉庫には、さまざまな種類があります。なかでも「公共倉庫」は、特定の事業者だけでなく、広く一般企業が利用できる倉庫として重要な役割を担っています。

この記事では、公共倉庫の基本的な仕組みや種類、民間倉庫との違い、そして昨今の物流業界での活用状況について、わかりやすく解説します。はじめてこの言葉に触れる方にも理解しやすいよう、具体例や事例も交えてご紹介します。

公共倉庫とは何か?

公共倉庫とは、企業が商品や原材料などを一時的に保管するために利用できる、広く開放された倉庫施設のことです。特徴的なのは、国や地方自治体が関与して設置・運営されている点です。

多くは港湾や空港の近くに立地し、国際物流や地域経済の活性化を目的として整備されています。たとえば、輸入貨物の通関待ちの保管や、港に着いた貨物を一時的に置いておくためのスペースとして活用されることが多いです。

いわば「どの企業でも平等に使える物流インフラ」としての役割を果たしており、特定企業向けに閉じられた施設ではありません。

公共倉庫にはどんな種類があるのか?

公共倉庫といっても、その中にはいくつかのタイプがあります。それぞれの目的や立地に応じて使い分けられています。

1. 保税エリア内にある公設倉庫

海外から輸入された貨物を、日本国内で正式な通関手続きを行う前に、一時的に保管するための施設です。保税倉庫とも呼ばれます。税関の許可があるため、通関処理が済むまでの間でも安全に保管できます。

2. 公設上屋(こうせつうわや)

港や空港にある大規模な屋根付きの倉庫です。コンテナやパレットに載った貨物を、雨風から守りながら一時的に仮置きするためのスペースとして使われます。海上輸送との接続拠点として、輸送中継の場を担っています。

3. 通関のための一時保管施設

輸出入における通関処理を待つ間、貨物を保管する施設です。ここでは書類の確認や検査などが行われることもあり、スムーズな輸出入を実現するための機能を持っています。

いずれも保管機能と通関対応を兼ね備えた施設であり、特にグローバル取引において重要な位置づけとなっています。

公共倉庫と民間倉庫との違いとは?

物流業務では、民間企業が運営する倉庫も数多く存在します。それでは公共倉庫とは何が違うのでしょうか。

まず大きな違いは、運営主体です。
民間倉庫は、特定の企業や物流事業者が自社の利益を目的として運営するのに対し、公共倉庫は国や自治体が物流全体の円滑化や経済支援を目的として整備・管理しています。

また、公共倉庫は「誰でも使える」ことを前提に設計されているため、特定企業に偏らない利用体制が整っています。利用者はその都度申請・契約をして利用する形が一般的で、スポット的な利用にも対応可能です。

一方、民間倉庫の多くは、ある程度の期間や契約ボリュームが求められる場合があります。

公共倉庫が活躍する場面

公共倉庫は、特定の業界や場面で強く求められる傾向があります。ここでは代表的な活用シーンをご紹介します。

国際物流における中継拠点

海外から届いた貨物は、すぐに通関できるとは限りません。税関審査、書類手続き、検査などに時間がかかることも多々あります。その間、安全に貨物を保管しておけるスペースが必要です。

公共倉庫はこうした「通関前の待機場所」として機能します。通関が終われば、すぐに国内配送へと移行できます。

輸送の緩衝地帯として

港湾や空港での積み替え作業には時間差が発生します。船や飛行機が到着するタイミングと、トラックが集荷に来るタイミングが合わないこともあります。

そんなとき、公共倉庫は輸送の時間差を吸収するバッファのような役割を果たします。貨物を一時的に置いておくことで、後続の輸送スケジュールを調整できます。

災害時や緊急時の備えとして

自治体が管理している公共倉庫の一部は、緊急時に備えた物資の備蓄や、緊急支援物資の集積地としての役割も担っています。物流が混乱した場合でも、最低限の供給体制を維持するための社会インフラとしての価値もあります。

公共倉庫の昨今における活用状況

近年、公共倉庫の利用ニーズは多様化しています。とくに以下のような3つの背景があります。

1. 国際取引の拡大

グローバル化の進展により、海外との輸出入を行う企業が中小企業にも広がっています。これに伴い、保税機能を備えた公共倉庫の需要が高まっており、通関手続き前の一時保管や再輸出用の貨物保管に活用されています。

特に港湾・空港周辺にある施設は、輸入から国内配送までのリードタイム短縮にも寄与。越境ECや国際サプライチェーンの構築においても、公共倉庫の存在が欠かせなくなっています。

2. EC市場の成長

ネット通販、特に越境ECの拡大により、小口で頻度の高い輸出入が急増しています。こうした動きに対応する中で、港湾や空港に立地する公共倉庫の活用が進んでいます。

たとえば、通関待ちの貨物の一時保管や、複数仕入れ先の商品をまとめて出荷する中継拠点として、保税機能を持つ公共倉庫が有効です。関税支払い前の保管が可能なため、柔軟な物流運用ができます。

ただし、日常的な出荷や在庫管理は民間のEC専用倉庫が適しており、公共倉庫はあくまで一時保管や通関対応といった「入口部分」の役割を担っています。

3. インフラとしての再評価

自然災害やパンデミックによる物流の混乱を経験した企業にとって、安定的に利用できる物流拠点の重要性が増しています。公共倉庫は、国や自治体が関与して運営されていることから、一定の信頼性と公平性が担保されており、非常時にも機能しやすいのが特徴です。

実際、災害時には救援物資の集積や一時保管に使われるケースもあり、企業のBCP(事業継続計画)の一環として注目される場面も増えています。

公共倉庫の利用における注意点

公共倉庫は誰でも使える便利な施設ですが、利用には注意点もあります。ここでは3つの注意点について解説します。

1.利用申請や契約手続きが必要

公共倉庫の利用には事前の登録や申請が不可欠です。特に保税倉庫などは税関の許可が絡むため、手続きや書類審査に時間がかかることがあります。急ぎの対応が難しい場合もあるため、スケジュールに余裕を持って準備する必要があります。

2.使用期間が限定されているケースもある

一時的な通関待ちや輸送の緩衝目的が主なため、長期保管には適していません。長期間の在庫管理を希望する場合は、コストや利便性を踏まえて民間倉庫との使い分けが必要です。また、倉庫ごとに利用可能な期間や条件が異なるため、事前確認が重要です。

3.アクセスや対応時間に制限がある場合も

公共倉庫の多くは管理・運営体制が限られているため、対応時間が日中や平日のみと限定されるケースがあります。24時間365日の入出庫を求める業態には不向きなこともあり、業務形態に合った施設選びが求められます。

まとめ

公共倉庫は、国や自治体が設置・運営する開放型の保管施設であり、企業間取引や国際物流、災害対応まで、幅広い場面で活用されています。

保税エリアでの一時保管や、港湾・空港における輸送中継の拠点として、近年その存在感はますます高まっています。とくに小規模事業者や新規参入企業にとっては、設備投資なしで物流機能を一時的に利用できる点も大きな利点です。

物流環境が急速に変化する今こそ、公共倉庫という「共通インフラ」の役割を見直し、自社の物流戦略のなかに柔軟に取り入れていくことが求められています。

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