先入れ後出しとは?10分で解説

2025.09.24

倉庫や配送センターでの在庫管理には、商品をどの順番で出荷するかを決めるルールがあります。
その中でも「先入れ後出し」という方法は、在庫の回転や品質管理の観点で重要です。

本記事では、その意味やメリット、注意点、そして物流現場での活用事例をわかりやすく解説します。

📌 ポイントはここ
  • 新製品や最新ロットを優先出荷 — 新モデルや新パッケージをいち早く市場に投入できる。
  • 販売戦略や顧客要望に柔軟対応 — 取引先の希望や販促計画に沿った出荷順が可能。
  • 古い在庫滞留のリスク管理が必須 — 在庫ローテーションや棚卸しでリスクを最小化する。

先入れ後出しの基本的な考え方

先入れ後出しとは、倉庫に新しく入荷した商品を優先的に出荷し、すでに保管されている古い在庫は後から出す方法です。
新しい在庫を市場や顧客にいち早く届けることができるため、新製品の販売促進やトレンド商品への対応に向いています。

これは「先入れ先出し(古いものから出す)」とは逆の考え方になります。
先入れ後出しは、次のような状況で採用されやすいです。

  • 製品寿命が長く、保管していても品質が変わらないもの
  • 商品のシリーズやパッケージが頻繁に更新される製品
  • 新製品を早く市場に出したい場合

先入れ後出しが採用される理由

古い在庫から順に出荷する「先入れ先出し」が主流の中で、あえて新しい在庫を先に出す「先入れ後出し」を採用するのはなぜでしょうか。
ここでは、その背景と代表的な3つの理由を解説します。

1. 新製品の販売促進

新しく入荷した商品を優先的に出荷することで、市場や顧客に最新の商品をいち早く届けられます。
特に、家電やアパレル、化粧品などのようにモデルチェンジや流行の移り変わりが速い業界では、販売の初動スピードが売上に直結します。
新製品の販売キャンペーンや広告と連動させることで、ブランドイメージの向上にもつながります。

2. 在庫回転の最適化

最新ロットを先に出荷することで、売れ筋商品を切らさず安定供給でき、販売機会を逃しにくくなります。特に、発売直後に需要が集中する商品では、古い在庫から順に出すと新商品が倉庫に滞留してしまう恐れがあります。
在庫回転率を高めれば、倉庫スペースの有効活用にもつながり、保管コストの削減効果も期待できます。

3. 顧客要望への対応

取引先から「最新モデルを優先して納品してほしい」という依頼がある場合、先入れ後出しは非常に有効です。小売店やEC事業者では、最新パッケージや新モデルのほうが消費者の購買意欲を高めやすく、販売促進につながります。

また、顧客のブランド戦略や販売計画に合わせた柔軟な対応ができるため、取引関係の強化にも寄与します。

先入れ後出しを取り入れるうえでの注意点

一方で、先入れ後出しを導入する上での注意点もあります。ここでは3つの注意点について解説します。

1. 古い在庫が滞留しやすく、長期的には在庫リスクが高まる

新しい在庫を優先的に出荷する運用では、古い在庫が後回しになりやすくなります。
特に需要が一時的に減少した場合や、販売計画が変わった場合は、古い在庫が倉庫内に長期間残ってしまう可能性があります。

その結果、保管コストの増加や、最悪の場合は廃棄処分の発生にもつながります。定期的な棚卸しや在庫ローテーションの実施が不可欠です。

2. 在庫管理の複雑化(先入れ先出しと混在運用の場合)

一部商品で先入れ後出し、別の商品で先入れ先出しを採用する場合、現場の作業フローやシステム設定が複雑になります。
誤出荷の防止には、倉庫管理システム(WMS)で明確に出荷順序を設定し、ピッキングリストや棚表示にもルールを反映させることが重要です。

新人スタッフや派遣スタッフが多い現場では、教育やマニュアル整備を怠ると運用ミスが増える恐れがあります。

3. 品質劣化の可能性がある場合は不向

食品や化粧品、薬品など、保管期間によって品質が低下する商品には先入れ後出しは適していません。
賞味期限や使用期限がある商品で新しい在庫ばかりを出荷すると、古い在庫の期限が迫り、期限切れによる廃棄リスクが高まります。

品質が重要な業種では、あくまで「長期保管しても品質が変わらない商品」に絞って導入することが求められます。

先入れ後出しが活用される業界の事例

それでは、先入れ後出しはどのような業界で採用されているのでしょうか。4つの業界の事例について紹介します。

家電メーカー

テレビ、冷蔵庫、スマートフォンなどの家電製品は、毎年または数か月単位でモデルチェンジが行われます。
新モデルは機能面の向上やデザイン変更により消費者の関心が高く、発売直後の販売スピードが売上を左右する存在です。
そのため、倉庫に新モデルが入荷した時点で古いモデルより先に出荷し、店舗の棚を最新商品で満たす運用が優先されます。
特に家電量販店やオンラインショップでは、広告やキャンペーンと連動して出荷タイミングを前倒しするケースも多く見られます。

アパレル

洋服やファッション小物は、シーズンごとの新作や流行色、流行デザインが売上の中心。
季節性が明確な商品では、新作をいち早く店頭に並べることが販売機会の最大化につながります。
古い在庫を優先すると、新作の販売時期がずれ込み、結果的に売れ残りや値下げ販売のリスクが高まるため注意が必要です。
先入れ後出しの仕組みを採用すれば、雑誌やSNSで話題になった新商品を即座に展開でき、購買意欲を逃さずに済みます。

食品(長期保存品)

缶詰、レトルト食品、乾麺など、長期保存が可能な商品は賞味期限に余裕があり、品質変化の心配も少ないのが特徴。
新パッケージや新フレーバーを先に市場投入することで、広告や試食イベントと合わせて話題を作りやすくなります。
この戦略はブランド刷新や売上向上のきっかけとして活用されることも多いです。

化粧品・日用品メーカー

化粧品や洗剤、シャンプーなどの日用品は、パッケージデザインや成分改良が頻繁に行われる分野。
新商品を早期に出荷することで、広告やSNSマーケティングと連動した効果を発揮できます。

古い在庫を先に出すと販売チャンスを逃す恐れがあるため、先入れ後出しの仕組みが有効にはたらきます。

最近の物流業界での活用動向

近年は、EC需要の高まりや新製品サイクルの短縮を背景に、「先入れ後出し」を戦略的に活用する企業が増えています。
オンライン販売では、新モデルや新パッケージの訴求力が高く、広告やキャンペーンと組み合わせることで出荷順を柔軟に調整する動きが目立ちます。
また、AIやデータ分析による「売れ筋予測」を活用し、最新ロットを重点的に出荷する体制を整える企業も少なくありません。

まとめ

「先入れ後出し」は、新しい在庫を優先的に出荷することで、市場のニーズや販売戦略に柔軟に対応できる運用方法です。
ただし、古い在庫が滞留する恐れがあるため、在庫管理や現場での運用には十分な注意が必要です。
商品や業界の特性を踏まえたうえで、適切なルールと仕組みを整え、効果的に活用していきましょう。

先入れ後出しに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 先入れ後出しと先入れ先出しの違いは何ですか?
A. 先入れ先出しは古い在庫から出荷する方法、先入れ後出しは新しい在庫から出荷する方法です。用途や商品特性によって使い分けます。

Q2. 先入れ後出しはどんな商品に向いていますか?
A. 賞味期限や品質変化の影響が少ない商品、モデルチェンジやデザイン変更が頻繁な商品に向いています。

Q3. 古い在庫はどう管理すればよいですか?
A. 定期的な棚卸しや在庫のローテーションを行い、キャンペーンや値引きで販売促進を図る方法が有効です。

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