特定事業者とは?10分で解説

2025.09.14

物流分野では、法改正や業界ルールに応じて「一定の役割や責任を担う企業」を特定し、効率化や適正化の取り組みを推進しています。その一つが「特定事業者」という考え方です。
これは、2024年5月に公布され、2025年4月から施行された「物流の効率的な実施の促進に関する法律」(以下:改正物流効率化法)に基づき定められた仕組みで、年間の貨物取扱量や事業規模といった一定の基準を満たす企業が対象となります。
単なる法律上の用語にとどまらず、共同配送やモーダルシフトなど現場での効率化施策や、取引先との関係構築にも深く関わる重要な制度です。

ここから先では、具体的にどのような事業者が対象になるのか、どんな基準や役割があるのかをわかりやすく解説していきます。

📌 ポイントはここ
  • 特定事業者とは「改正物流効率化法」に基づき、一定の基準を満たした企業を指す制度上の枠組みである
  • 荷主・運送・倉庫など立場によって役割は異なるが、共通して効率化や持続可能性の推進役を担う
  • 制度の指定を受けた企業は、サプライチェーン全体に波及効果をもたらし、業界全体の健全な発展をリードする

特定事業者に含まれる事業者の種類

特定事業者として認定される可能性があるのは、「改正物流効率化法」で示された基準を満たす企業です。
対象は荷主企業、運送事業者、倉庫事業者と幅広く、それぞれに異なる役割が与えられています。制度として明確に位置づけられているため、単なる用語解説にとどまらず、実務上も大きな意味を持ちます。

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荷主企業

荷主は、製品や原材料の輸送を依頼する企業です。
特定事業者として認定されると、単なる依頼者にとどまらず、効率的な輸送計画や環境への配慮にも主体的に関与する立場になります。

取扱量が一定規模を超える企業や、複数拠点を活用するような事業者は、物流全体への影響が大きいため、制度の対象となりやすい傾向があります。

運送事業者

実際に貨物を運ぶ運送会社も特定事業者の対象に含まれます。
認定を受けた事業者には、効率的な配車計画や共同配送の推進といった取り組みが求められます。

加えて、法令を守りながらドライバーの労働環境を改善することが必要であり、結果として業界全体の健全な発展につながる存在です。

倉庫事業者

保管を担う倉庫会社も特定事業者の対象です。
輸送と連動した効率的な在庫管理を実現することで、物流全体の最適化に寄与します。

また、情報システムを活用して在庫データを共有したり、配送拠点としての機能を高めたりするなど、物流ネットワークの中核的な役割を担う存在です。

特定事業者に求められる基準と役割

特定事業者として指定されるかどうかは、単に企業規模の大小だけで決まるわけではありません。年間の取扱貨物量や保有拠点の規模、地域や業界における影響度といった客観的な基準が定められており、それを満たした事業者が対象となります。

大手企業だけでなく、地域物流の中核を担う中堅・中小企業が指定されるケースもあるのが特徴です。

一定の基準とは何か

特定事業者に指定されるための基準は、法律やガイドラインによって明確に示されています。
主な判断材料となるのは、年間の貨物取扱量や事業規模、営業用車両の台数、倉庫面積などの客観的な数値です。
加えて、物流ネットワーク全体に与える影響や、地域での重要性も考慮されます。

これらの条件を総合的に満たした企業が、特定事業者として位置づけられます。

担うべき役割

特定事業者は、物流効率化を推進するリーダー的な存在です。
共同配送やモーダルシフトといった取り組みを主導し、協力会社との調整役を果たすことが期待されます。また、輸送データの提供や在庫情報の共有を通じて、サプライチェーン全体の最適化に貢献することも重要です。

加えて、環境負荷の低減や人材の労働環境改善など、業界全体の持続可能性を確保するための役割も担っています。

物流業界での活用と意義

特定事業者という枠組みは、法律上の制度にとどまらず、現場の改善やサプライチェーン全体の強化にも直結しています。実際にどのように活用され、どんな効果が期待されているのかを整理すると、制度の意義がより明確になります。

特定事業者の枠組みは、単に法律上の制度として位置づけられているだけではありません。実務においても、輸送効率の向上や環境負荷の軽減といった取り組みを推進する役割を担っています。

物流の中心となる事業者が率先して取り組みを進めれば、協力会社や関連する企業にもその動きが広がり、結果としてサプライチェーン全体に波及効果が生まれます。
これにより、納品リードタイムの短縮や在庫管理の効率化が進み、同時に二酸化炭素排出量の削減や持続可能な体制の構築にもつながります。

制度としての意義は、業界全体を巻き込みながら「効率化と環境配慮の両立」を実現していく点にあるといえるでしょう。

まとめ

特定事業者とは、「改正物流効率化法」に基づき、一定の基準を満たすことで位置づけられる企業を指します。荷主・運送・倉庫といった立場によって担う役割は異なりますが、共通して物流の効率化や持続可能性の確保を主導する立場にあります。

この制度を踏まえた取り組みは、サプライチェーン全体の最適化と業界の健全な発展に直結する重要な視点といえるでしょう。

特定事業者に関するよくある質問とその答え

Q1. 特定事業者に指定されると何が変わりますか?
A. 単に取引を行うだけでなく、効率化や環境負荷低減への取り組みに主体的に関与する責任が強まります。社内の物流部門だけでなく、取引先との協力体制も求められます。

Q2. 中小企業でも特定事業者になる可能性はありますか?
A. はい。規模に応じた基準はありますが、取扱量や物流ネットワーク上の重要性が認められれば対象になる場合があります。必ずしも大企業だけの仕組みではありません。

Q3. 特定事業者とそうでない企業の違いは何ですか?
A. 特定事業者は業界全体の効率化をけん引する役割がある一方、そうでない企業はその方針に協力する立場となります。両者の関係性がうまく機能することで、物流全体がスムーズに動く仕組みになっています。

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