発注点方式とは?10分で解説

在庫管理は物流や製造業において欠かせない業務の一つです。
必要なときに必要なだけの在庫を確保できなければ、納期遅延や販売機会の損失につながります。
その中でもシンプルで実務に取り入れやすい仕組みとして「発注点方式」があります。

この記事では、若手社員でも理解しやすいように基本的な考え方から実際の運用ポイントまで解説していきます。

📌 ポイントはここ
  • 在庫が一定の水準を下回ったときに、自動的に発注の判断ができる仕組みである
  • 発注点を決めるためには、リードタイムと需要量の見積もりが重要になる
  • 現場ではシステム化や自動化と組み合わせることで、効率的な在庫管理に役立っている

発注点方式の基本的な考え方

発注点方式とは、在庫の残りがあらかじめ決めておいた数量を下回った時点で、新たな発注を行う方法です。この仕組みを導入することで「在庫切れを防ぐ」「余分な在庫を抱えない」というバランスを保ちやすくなります。
特に需要が安定している製品や、調達にかかる時間が比較的一定のものに適しています。
在庫管理の基本的な仕組みとして学ばれることが多く、現場でも比較的導入しやすい方式です。

発注点を決める要素

発注点は単純に「これくらい残ったら発注」と決めればよいわけではありません。
正しく運用するためには、次の要素を考慮する必要があります。

リードタイム

リードタイムとは、発注してから商品が入荷するまでの期間を指します。

リードタイム中に必要となる数量を計算し、その分を最低限確保できるように発注点を設定します。
この数値を誤ると、在庫切れや過剰在庫の原因に。
例えば、海外からの輸入品は天候や港湾混雑でリードタイムが伸びやすいため、余裕を持った設定が欠かせません。

平均需要量

過去の出荷実績などから、一定期間あたりの平均的な需要量を把握します。
リードタイムと掛け合わせることで、入荷までに必要な在庫量が見えてきます。
繁忙期や閑散期の変動も考慮することが欠かせません。

もし平均値だけに頼ると、季節商品のように需要が大きく変化するケースでは誤差が生じやすくなります。

安全在庫

需要の急な変動や納期遅延に備えて、余裕を持たせた在庫を加えることがあります。
この「安全在庫」を発注点に含めることで、想定外のリスクを吸収できます。

ただし過度に安全在庫を積み上げると、在庫コストがかさみ倉庫スペースを圧迫する恐れもあります。
そのため、リスクとコストのバランスを取りながら設定することが重要です。

▶関連ワード「安全在庫

発注点方式のメリット

発注点方式を取り入れることで、現場に次のようなメリットがあります。

在庫切れを未然に防げる

発注点方式では、在庫が一定水準を下回った段階で自動的に発注判断を行うため、欠品リスクを減らせます。これにより、納期遅延や販売機会の損失を防ぎ、取引先や顧客から安心して委託できる関係につながります。

特に、生産ラインを止めてはいけない部品や、欠品すると代替が効かない商品で効果が発揮されることが多いです。

余分な在庫を持たずに済み、保管コストが抑えられる

在庫は多すぎても問題を生みます。そこで発注点方式を活用すれば、必要以上に仕入れることを避けられるため、保管スペースや在庫管理にかかるコストを削減できます。
また、食品や消耗品のように劣化や期限切れが発生する商品では、廃棄ロスを防ぐ効果も期待できます。

結果として、倉庫の効率的な運用や資金繰りの改善にもつながります。

発注のタイミングが明確になり、担当者の判断負担が減る

発注点方式は「残りが○○以下になったら発注」というシンプルなルールで運用できるため、担当者の経験や勘に頼らずとも判断できます。
そのため、ベテランと新人の間で差が出にくく、誰でも同じ基準で発注できるのが利点です。
さらに、在庫管理システムと連携させれば、担当者はチェックと承認に集中でき、より効率的な業務運営が可能になります。

シンプルでわかりやすいルールのため、実務に取り入れやすいのも魅力です。

発注点方式のデメリット

一方で、発注点方式には注意点もあります。

過去データに依存するため、急激な需要変動に弱い

発注点方式は、基本的に過去の出荷量や需要実績をもとに設定されます。
そのため、予期せぬ需要急増や市場環境の変化にすぐ対応するのは難しく、欠品につながるリスクがあります。

特に季節商品や流行に左右されやすい商品では、定期的な見直しが欠かせません。

発注点を正しく設定しないと、在庫不足や過剰在庫を招く

発注点の計算が甘いと、在庫が不足して顧客への納品に支障が出たり、逆に過剰在庫を抱えて保管コストが膨らむ可能性があります。
一度設定して安心してしまうと、状況に合わないまま運用が続いてしまう点も注意が必要です。

適切な発注点を保つためには、需要予測やリードタイムの変化を踏まえ、定期的な調整が求められます。

多品種を扱う場合、管理が煩雑になりやすい

発注点方式はシンプルな仕組みですが、商品アイテムが多い現場では、それぞれに発注点を設定・管理する必要があります。
数が増えるほどチェックの手間がかかり、管理コストや担当者の負担が増大します。
このような場合は、システムの導入や自動化を組み合わせて運用することが効果的です。

こうした課題をカバーするには、定期的に発注点を見直すことが大切です。

現場での活用例

発注点方式は、物流や製造業のさまざまな場面で利用されています。

  • 食品メーカー:賞味期限の短い商品を安定供給するために活用
  • 部品メーカー:生産ラインが止まらないよう、必要部品を適切に確保
  • EC物流:需要が安定している消耗品などに導入

近年では、システム化により自動的に発注処理が行われるケースも増えています。
バーコードやセンサーを使って在庫残量をリアルタイムで把握し、発注点を下回った時点でシステムが自動で発注する仕組みが広がっています。

昨今の物流業界での活用

2024年問題により物流現場の効率化が求められる中、在庫管理の自動化は特に注目されています。
発注点方式はその中でも導入しやすい仕組みであり、システム連携と組み合わせることで人手不足の解消やリードタイム短縮に貢献しています。
また、AIを用いた需要予測と組み合わせることで、より精度の高い発注点の設定も可能になっています。

まとめ

発注点方式は、在庫が一定の水準を下回ったときに発注するシンプルな管理方法です。
リードタイム、平均需要、安全在庫といった要素を踏まえて発注点を設定することで、在庫不足や過剰在庫のリスクを防げます。
昨今ではシステムやAIと組み合わせた運用が進み、物流業界全体で効率的な在庫管理を支える仕組みとなっています。
一般的な在庫管理手法として仕組みを理解し、実務に取り組んでいきましょう。

発注点方式に関するよくある質問とその答え

Q1. 発注点方式はどんな商品に向いていますか?
需要が比較的安定している商品や、リードタイムが一定のものに適しています。逆に需要が不安定な商品は、柔軟に数量を見直す工夫が必要です。

Q2. 発注点は一度決めたら変更しなくても大丈夫ですか?
いいえ。需要変動や調達条件の変化に対応するため、定期的に見直す必要があります。少なくとも半年から1年に一度は再設定を行うのが望ましいです。

Q3. 発注点方式はどのようにシステム化されていますか?
在庫管理システムや統合基幹業務システムに組み込まれ、在庫量が一定水準を下回った時点で自動的に発注がかかる仕組みが一般的です。ハンディ端末やIoT機器と連携する例も増えています。

10分でわかりやすく解説の一覧を見る
WBS40社まとめ資料 無料ダウンロード TOP