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物流や製造の現場では、「SKU(エスケーユー)」という用語を耳にすることが多いでしょう。普段の業務では当たり前のように使われますが、実際に「SKUとは何か」を説明しようとすると、意外と難しいものです。この記事では、SKUの基本的な意味から、現場での活用方法、注意点までを整理して解説します。
- SKUは「在庫を識別するための最小単位」であり、商品を管理する基本的な枠組み
- 物流・製造業ではSKUの設定が、在庫管理や出荷精度に直結する
- デジタル化やEC拡大により、SKUの数が増加し、より重要性が高まっている
SKUとは何か
SKUは「Stock Keeping Unit」の略語で、日本語に直訳すると「在庫管理単位」と表現できます。物流会社の定義によれば、「在庫管理を行う上で、これ以上細分化できない最小の単位」を指します。
たとえば「同じTシャツ」という商品でも、色やサイズが違えば別のSKUになります。
例:色×サイズごとにSKUは別
- 白色・MサイズのTシャツ … 在庫を管理する上で「1つのSKU」として扱う
- 白色・LサイズのTシャツ … サイズが違うため、別のSKU
- 黒色・MサイズのTシャツ … 色が違うので、さらに別のSKU
つまり、見た目は同じTシャツでも「色 × サイズ」の組み合わせごとにSKUが設定されます。こうすることで、倉庫や販売システム上で「どの色の、どのサイズのTシャツが何枚あるか」を正確に把握できるのです。
SKUとJANコード・品番との違い
SKUは、JANコードやメーカー品番と混同されやすい用語です。いずれも商品を区別する役割を持ちますが、意味は少し異なります。
用語 | 説明 |
---|---|
JANコード | バーコードとして流通全体で共通に使用される識別番号 |
メーカー品番 | 製造元が社内管理のためにつける番号 |
SKU | 倉庫や小売業が在庫管理するために設定する管理単位 |
つまりSKUは、社内や倉庫の現場に即した「管理しやすい単位」として用いられる点が特徴です。
SKUが重要とされる理由
SKUは単なる「在庫管理の単位」ではなく、物流や製造の現場における業務精度を左右する大切な仕組みです。ここでは、SKUが重要とされる主な理由を整理して解説します。
在庫管理の精度を高める
SKUを正しく設定することは、在庫を正確に把握するために欠かせません。
もしSKUの定義が曖昧であれば、同じ商品を二重にカウントしたり、逆に在庫が不足していると誤認したりするリスクが生じます。
SKUを明確に管理することが、安定した供給体制を築く基盤となります。
出荷トラブルを防止する
SKU単位で商品を識別していれば、現場での誤出荷を防ぐことができます。
似たような商品が多い場合でも、SKUごとに管理していれば取り違えを減らせます。
結果として、顧客とのトラブル防止や信頼関係の維持にもつながるでしょう。
販売データ分析に活用できる
どの商品がよく売れているのかをSKU単位で追跡することで、需要動向を詳細な把握が可能です。
たとえば「黒のLサイズが好調」といったデータをもとに、発注や生産計画の最適化にもつながります。
SKUは、単なる在庫管理の指標にとどまらず、マーケティングや経営判断にも役立つ情報源となります。
SKUの設定例

物流・製造の現場では、次のようにSKUが設定されます。
業種 | SKUの分け方 | 具体例 |
---|---|---|
食品メーカー | 味ごと・容量ごとにSKUを分ける | 500mlペットボトル、350ml缶 |
アパレルメーカー | サイズと色の組み合わせごとにSKUを設定 | Mサイズ・白色、Lサイズ・黒色など |
電子部品メーカー | 型番や仕様ごとにSKUを細分化 | 型番A-001、型番A-002 など |
このように、商品特性や流通形態に応じて、SKUの切り分け方は変わるのです。
SKU数が増えると起きる課題
SKUは商品を細かく識別するために必要ですが、種類が増えすぎると管理が難しくなります。特に多品種少量生産やECの拡大により、SKUが年々膨れ上がる企業も少なくありません。ここではSKU数が増えることで生じやすい代表的な課題を整理します。
在庫管理コストの増加
SKUが多くなると、倉庫に存在する在庫の点数も膨大になります。その結果、在庫を正確に把握するために人的リソースやシステムへの投資が必要となり、管理コストが上昇します。
特にアパレルや食品業界のようにSKUが細かい業種では、この傾向が顕著です。
在庫の偏り
売れ筋ではないSKUが大量に残ってしまい、逆に人気商品のSKUは欠品になるといった偏りが発生します。在庫スペースを圧迫するだけでなく、資金の効率的な活用を妨げます。
さらに、販売機会の損失にも直結するため、企業にとって痛手と感じるケースも出てくるでしょう。
倉庫作業の複雑化
SKUの種類が多いほど、入出庫やピッキング作業が複雑になります。似たような商品が増えると取り違えのリスクが高まり、誤出荷の原因になる場合も。
結果的に現場スタッフの作業効率が落ち、全体の物流スピードにも影響を及ぼすことにもつながります。
顧客満足度への影響
欠品や誤出荷は、直接的に顧客体験を損ないます。必要な商品が届かない、あるいは間違った商品が届くことが続けば、取引先や消費者からの信頼を失う可能性があります。
SKU管理の不備は、顧客満足度の低下として表面化する点に注意が必要です。
物流業界におけるSKU活用の最新動向
近年、物流業界ではECの拡大や多品種少量生産の進展により、SKU数が増加する傾向が強まっています。こうした環境の中で、SKUの管理を効率化する取り組みが加速しています。
- WMS(倉庫管理システム)の導入
SKU単位でリアルタイムに在庫を追跡し、入出庫やピッキングを自動化 - AIによる需要予測
SKUごとの販売データを分析し、需要変動を予測することで在庫最適化を実現 - 共同配送・共通SKU管理
複数企業がSKU情報を共有し、効率的な輸配送を行う仕組みが広がっている
このようにSKUは、単なる「在庫管理単位」ではなく、企業戦略やサプライチェーン全体を支える基盤となっています。
SKU管理の実務ポイント

SKUを適切に管理するには、次の点に注意が必要です。
明確なルールづくり
SKUをどう分けるかを明確に決めておくことは在庫管理の基本です。サイズや色、型番などの基準が部門ごとに違うと、同じ商品でも別SKUとして扱われ、在庫数がずれてしまいます。
社内全体で統一したルールを設けることで、管理の精度を高められます。
定期的な見直し
販売がほとんどない商品や流通が止まったSKUを放置すると、在庫や倉庫スペースを圧迫します。定期的にSKUを棚卸しして不要なものを削減することで、在庫コストを抑えることができます。
SKUの整理は効率的な在庫運用に欠かせません。
システムとの連携
SKU管理はWMSや販売管理システムと連動させることで精度が向上します。
SKUをシステムに登録してリアルタイムに追跡すれば、人為的なミスを減らせるでしょう。
さらに、在庫と販売データを一元管理できれば、需要予測や発注計画にも活用可能です。
まとめ
SKUとは「在庫を識別するための最小単位」であり、物流・製造業において欠かせない概念です。SKUの設定と管理は、在庫精度や出荷ミス防止に直結し、販売戦略やコスト管理にも影響を与えます。
ECの拡大や多品種化に伴い、SKUの数はますます増加傾向にあります。
そのため、SKUをどのように定義し、管理するかは、今後の物流現場における大きなテーマのひとつと言えるでしょう。
SKUに関するよくある質問とその答え
Q1. SKUとJANコードは同じものですか?
A. 似ていますが異なります。JANコードは流通全体で使われる商品識別コードで、SKUは企業や倉庫が在庫を管理するために設定する単位です。
Q2. SKUは会社ごとに違うのですか?
A. はい。SKUは共通の規格ではなく、各企業が自社の管理方法に合わせて設定します。そのため同じ商品でも、会社によってSKUの付け方が異なります。
Q3. SKUを減らすとどんな効果がありますか?
A. SKUを整理すると、在庫管理の手間やコストが下がり、倉庫の作業効率も向上します。ただし、減らしすぎると販売機会を逃す可能性もあるため、バランスが重要です。