改善基準告示とは?10分で解説

ドライバーの長時間労働や過労運転を防ぎ、安全で持続可能な輸送体制を築くために設けられているのが「改善基準告示」です。
この基準は、トラック・バス・タクシーといった自動車運送事業者が守るべき労働時間や休息時間のルールを定めたもので、物流現場に関わる人なら知っておくべき重要な法令のひとつです。
2024年4月には大きな改正(いわゆる「2024年問題」)が実施され、運転者の働き方改革が本格的に進んでいます。

📌 ポイントはここ
  • 改善基準告示は、運転者の労働時間・休息時間の最低基準を定めたルール
  • 2024年の改正で「年間拘束時間」「休息期間」などが厳格化
  • 運行管理・配車計画にも直接影響するため、管理者も理解が必須

改善基準告示とは

改善基準告示(正式名称:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)は、自動車運送事業者が守るべき労働時間の上限や休息時間の下限を示す基準です。
根拠法は労働基準法であり、厚生労働省が告示という形で詳細ルールを定めています。

もともとは、長距離輸送に従事する運転者の過重労働や交通事故を防ぐことを目的として制定されました。

つまり、ドライバーの安全と健康を守ると同時に、安定した物流サービスを社会全体で維持するための制度です。

なぜ改善基準告示が重要なのか

トラックドライバーの働き方は、他業種と比べて特殊です。
荷待ちや渋滞といった予測できない拘束時間が多く、単純な「労働時間の短縮」だけでは現場が回らないケースもあります。
このため、運転・待機・休息の区分を細かく定義した基準を設け、無理のない運行を確保する仕組みが必要とされました。

特に2024年改正では、年間拘束時間が「3,300時間以内」に引き下げられ、1日の最大拘束時間や休息期間も見直されています。
これにより、ドライバーの健康を守るだけでなく、輸送計画全体の見直しを迫られる企業も増えています。

改善基準告示の主な内容

  • 労働時間と拘束時間の上限: 1日の拘束時間は原則13時間以内、最大でも16時間を超えない。 運転時間は1日9時間2日平均18時間まで。
  • 休息期間の確保: 勤務終了後から次の勤務開始まで連続11時間以上(最低9時間)を休息時間として確保。 長距離輸送や夜間運行では特に配慮が必要。
  • 休日・連続運転時間の制限: 1週間に1日以上の休日を設定。 連続運転は4時間以内とし、途中で30分以上の休憩を取る。

2024年改正のポイント

2024年4月施行の新基準では、以下のような変更が行われました。

  • 年間拘束時間の上限:
    年間の拘束時間が3,300時間以内に短縮。
    労使協定を結んだ場合でも最大3,400時間が限度。
  • 月間拘束時間の目安:
    原則として284時間以内に設定(改正前は293時間以内)。
    長時間労働を抑制し、健康確保を重視。
  • 休息期間の見直し:
    勤務終了後から次の始業まで原則11時間以上(最低9時間)を確保。
    ドライバーの睡眠・休養の質を重視した改正。
  • 連続運転時間の上限:
    4時間以内とし、その後は30分以上の休憩を義務付け。
    運転中の集中力低下や疲労を防止。
  • 労働時間管理の厳格化:
    デジタコや運行管理システムによる拘束・休息時間の記録義務が明確化。
    事業者の労務管理責任が一層強化された。

また、労働時間の記録義務運転者ごとの労働時間管理も強化されています。
デジタコや運行管理システムを活用して、運行ごとの拘束・休息を正確に把握することが求められています。

改善基準告示と「2024年問題」

「2024年問題」とは、この改正によって生じるドライバー不足・輸送力低下の懸念を指します。
拘束時間の上限が短くなった分、従来の運行スケジュールでは配送が間に合わないケースが発生。
その結果、リードタイムの延長共同配送・モーダルシフトの導入など、業界全体の構造改革が進んでいます。

物流会社にとっては、単に「法令遵守」ではなく、働き方改革をチャンスに変える発想が求められています。
効率的な積載・ルート設計、荷主との協働による待機時間削減など、現場の工夫が成果を左右します。

現場での対応・実務上のポイント

運行管理者や配車担当者にとって、改善基準告示は「数字で守る安全基準」です。
たとえば、スケジュール作成時には次のような視点が必要になります。

  • 休息時間の確保: 前日の終業から次の出発まで、 原則11時間(最低9時間)の連続休息を確保しているか。
  • 拘束時間の確認: 日次で13時間以内(最大16時間を超えない)、 週次・月次でも基準超過がないか。
  • 長距離時の体制: 交代運転者の配置や中継拠点の活用など、無理のない計画になっているか。

これらを管理するには、手書きの日報では限界があります。
最近では、運行管理システムが自動で基準チェックを行い、違反の恐れがある場合にアラートを出す仕組みも一般的です。

改善基準告示の今後

国は、物流業界の人手不足対策と並行して、デジタル化・効率化による働き方改革を後押ししています。荷主・運送会社・ドライバーが一体となり、「守るべきルールを守りながら利益を確保する」体制づくりが求められています。

将来的には、AIを活用した運行最適化や、自動運転トラックの実用化によって、さらなる改善が進むことが見込まれています。

まとめ

改善基準告示は、ドライバーの健康と安全を守り、物流の信頼を支える土台となる制度です。
2024年以降は、この基準を軸にした運行設計や労務管理が、企業の競争力を左右する時代に入りました。

単なる「規制」ではなく、現場をより良くするための指針と捉えることが大切です。
人が安心して働ける環境を整えることは、結果的に安定した輸送と顧客満足につながります。

ドライバー、運行管理者、荷主が同じ方向を向き、「安全」「効率」「働きやすさ」を両立させる物流を築いていく。
それこそが、改善基準告示が目指す本来の姿といえるでしょう。

改善基準告示に関するよくある質問

Q1. 改善基準告示に違反するとどうなりますか?
A. 行政指導や監査の対象となり、是正勧告を受ける場合があります。悪質な場合は事業停止処分となることもあります。

Q2. 改善基準告示はどの業種に適用されますか?
A. トラック、バス、タクシーなど、自動車運送事業に従事する運転者が対象です。自家用車運転者は対象外です。

Q3. 改善基準告示の改正に対応するために何をすればいいですか?
A. まず現状の労働時間を可視化し、拘束・休息時間を数値で把握することが第一歩です。そのうえで、運行管理システムの導入や荷主との協議によって、無理のない運行体制を構築します。

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