ダブルピッキングとは?10分で解説

2025.11.16

倉庫や物流センターでの出荷作業を効率化する手法のひとつに「ダブルピッキング」があります。
この言葉は現場経験者の間ではよく耳にしますが、具体的にどんな作業方式を指すのか、仕組みやメリットを理解している人は意外と少ないものです。
この記事では、ピッキング作業の基礎からダブルピッキングの活用事例まで、現場で役立つ形で解説します。

📌 ポイントはここ
  • ダブルピッキングは「2つのオーダーを同時にピッキングする方式」
  • 作業効率と生産性を高める一方、仕分け精度の工夫が必要
  • WMS(倉庫管理システム)やデジタル端末との連携で効果が最大化

ダブルピッキングの基本

ダブルピッキングとは、2つの出荷オーダー(注文)を同時にピッキングする方法です。
従来のピッキングは1件ずつ指示書に従って商品を集める「シングルピッキング」方式が一般的でしたが、ダブルピッキングでは2件の作業をまとめて行います。
同じ商品を複数オーダーで扱う場合、移動や棚前での作業をまとめられるため、作業時間の短縮と歩行距離の削減につながります。

この方式は、特に小口出荷が多いEC物流や日配物流で効果を発揮します。
作業者の負担を減らしながら出荷スピードを上げることができるため、繁忙期や人手不足対策としても注目されています。

ダブルピッキングの仕組み

ダブルピッキングは、2つのオーダーを「同時進行」させる点に特徴があります。
例えば、A社とB社の注文書に共通の商品が含まれている場合、1回の棚アクセスで両方の注文分をまとめてピッキングします。
作業者は、2つのカートや仕分けボックスを使い、それぞれにピッキングした商品を入れていく流れです。

このとき重要なのが、仕分け間違いを防ぐ仕組みです。
ラベル・バーコードスキャン・音声指示システム(ボイスピッキング)などを活用して、どのオーダーにどの商品を入れるのかを明確に管理します。
システム連携が不十分な場合は誤出荷リスクが高まるため、WMSやピッキング端末の設定が成功の鍵になります。

ダブルピッキングのメリットと注意点

ダブルピッキングのメリット

  • 1.移動距離と作業時間の削減

    同じ棚から複数オーダーの商品を一度にピッキングできるため、歩行距離や移動回数が減少。 結果として、作業スピードが向上します。

  • 2.生産性の向上

    同一SKUの商品をまとめて処理できるため、1人あたりの出荷件数を増やせます。 ピーク時の処理能力を高めたい現場に適しています。

  • 3.人手不足対策につながる

    作業効率が上がることで、少人数でも同等の出荷量を維持可能。 繁忙期の応援要員削減にも役立ちます。

ダブルピッキングの注意点

  • 1.仕分けミスのリスク

    2つのオーダーを同時に扱うため、商品を入れ間違える可能性があります。 バーコードスキャンやライトピッキングなどの補助が必要です。

  • 2.オーダー構成による作業難易度の差

    商品点数が多い、または似た商品が含まれるオーダーでは混乱しやすくなります。 運用前に対象オーダーを精査することが大切です。

  • 3.システム連携が前提となる

    WMSやデジタルピッキングシステムとの連携がないと、誤出荷リスクが高まります。 仕組み面の整備と現場教育をセットで行う必要があります。

ダブルピッキングを支えるシステム技術

ダブルピッキングの運用を安定させるためには、WMS(倉庫管理システム)との連携が欠かせません。
WMSは、オーダーを最適な組み合わせでグルーピングし、作業者に「どの商品をどの順序で取るか」をリアルタイムで指示します。
また、バーコードスキャンや音声指示を使えば、仕分け間違いをほぼゼロに近づけることも可能です。

近年では、ピッキングカートにタブレット端末を搭載し、オーダーごとにライトが点灯する「デジタルピッキングシステム(DPS)」と組み合わせるケースも増えています。
これにより、初心者でも直感的に作業できる環境が整いつつあります。

他のピッキング方式との違い

ここでは、他のピッキング方法方式との違いについて解説します。

シングルピッキングとの比較

シングルピッキングは1件ずつ確実に作業できるため、誤出荷が少なく品質を重視する現場に適しています。
一方、ダブルピッキングはスピード重視の現場で有効です。
そのため、「精度」よりも「効率」を優先する業務に向いているといえます。

バッチピッキングとの違い

バッチピッキングは、複数オーダーをまとめてピッキングし、後で仕分ける方式です。
ダブルピッキングはその簡易版ともいえ、リアルタイムで仕分けを行う点が異なります。
そのため、後工程の負担が少なく、少人数でも運用しやすいのが特徴です。

各ピッキング方式の違い一覧

ピッキング方式の比較
項目 シングルピッキング ダブルピッキング バッチピッキング
概要 1件の注文ごとに商品をピッキングする方式。 2件の注文を同時にピッキングする方式。共通商品をまとめて処理する。 複数注文をまとめてピッキングし、後工程で仕分けを行う方式。
作業スピード やや遅め(1件ずつ処理)。 中程度〜速い(共通商品を一度で取れる)。 最も速い(移動回数が最小)。
誤出荷リスク 低い(1件単位で確実に作業)。 中程度(2件を扱うため混同リスクあり)。 高い(後仕分けでの取り違えが起こりやすい)。
適した現場 精度重視の出荷(高単価商品や個別管理品など)。 小口出荷が多いECや日配物流。 大量出荷・同一SKUが多い現場(量販・通販の繁忙期など)。
必要な仕組み 紙のピッキングリストでも運用可能。 WMSやスキャン端末との連携が望ましい。 仕分けラインやDPSなど後工程設備が必要。

現場での活用事例

食品や日用品のセンターでは、朝の時間帯に複数店舗向けの出荷が集中します。
このような現場では、ダブルピッキングを導入して共通商品(例:ペットボトル飲料や菓子類)をまとめて取ることで、出荷リードタイムを20〜30%短縮できた例もあります。
また、EC倉庫では、同一SKUの注文が多い場合に効果的で、作業者一人あたりの処理件数を1.2〜1.5倍に増やすケースも見られます。

▶関連用語「SKU

まとめ

ダブルピッキングは、2つの出荷オーダーを同時に処理することで効率化を図るピッキング方式です。歩行距離の削減や作業スピードの向上に効果がある一方、誤出荷を防ぐ仕組みづくりが欠かせません。

WMSやデジタルピッキングシステムと組み合わせることで、現場の生産性を大きく引き上げられる手法といえるでしょう。

ダブルピッキングに関するよくある質問とその答え

Q1. ダブルピッキングはどんな倉庫に向いていますか?
A. 小口出荷や共通SKUが多い現場に向いています。特にEC物流やドラッグストア向けの配送センターなどが代表的です。

Q2. どのような準備が必要ですか?
A. まずはWMSでのオーダー組み合わせ設定と、ピッキングカートやラベル運用の整備が必要です。作業者教育も重要なポイントです。

Q3. トリプルピッキングやマルチピッキングとの違いは?
A. ダブルピッキングは2オーダー同時ですが、トリプルピッキングは3件以上を同時に扱う方式です。扱う件数が増えるほど管理の難易度も上がります。

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