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倉庫に商品が入ってくると、検品や仕分けだけでなく「どこへ格納するか」を素早く判断する必要があります。
その中心となるのが逆ピッキングです。出荷時のピッキングと反対方向の流れで行われるこの作業は、在庫精度を保つための基盤ともいえるもの。新人スタッフが最初に覚える重要な工程でもあります。現場のイメージが湧くよう、入荷処理との関係から詳しく解説していきます。
- 逆ピッキングは、入荷・返品後の商品をロケーションへ戻す工程の総称
- 出荷ピッキングとは目的も動線も異なり、在庫精度を左右する領域
- WMSやスキャン機器と連携することで、作業ミスの減少につながる
逆ピッキングとは

逆ピッキングとは、入荷・返品された商品を棚へ戻すための照合・仕分け・格納の一連の作業を指します。
ピッキングが「棚から商品を取り出す」工程であるのに対し、逆ピッキングは「商品を棚へ戻す」という逆方向の動きで進むため、この名が使われています。
倉庫管理システム(WMS)に登録されたデータをもとに、商品コードやロットを確認し、適切なロケーションへ移動するのが基本の流れ。
入荷量が多い倉庫ほど、この作業の精度が在庫管理の品質を左右します。
逆ピッキングの役割と特徴
逆ピッキングのイメージがつかめたところで、具体的にどんな役割を担い、どのような特徴を持つ作業なのかを見ていきます。
出荷工程との目的の違い
出荷ピッキングは「オーダー通りに商品を集める」ことが中心ですが、逆ピッキングは「正しい在庫として登録する」ことが目的となります。
商品の種類が多い倉庫では、最初の仕分けが曖昧になりがちで、ここでの誤りが後の出荷ミスにつながるケースもあります。
情報照合の重要度
逆ピッキングは、現物とデータの一致確認が必須です。伝票、バーコード、数量の三つをそろえることが前提で、目視判断だけに頼ると在庫のズレが起きやすくなります。
スキャナやハンディターミナルの導入が広がっているのは、この作業の正確性を高めるためです。
返品処理との密接な関係
返品センターでは、商品状態の仕分けと同時に逆ピッキングが用いられます。
再販可能なもの、不良在庫として隔離すべきものなど、棚に戻す区分が細かく設定されるため、倉庫によっては専用のチームが設けられることもあります。
逆ピッキングの一般的な流れ

逆ピッキングは以下の流れで行われることが一般的です。
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1.入荷検品:
伝票と商品を照合し、状態・数量をチェック。
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2.仕分け:
SKU、ロット、サイズなどで分類し、仮置きエリアへ配置。
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3.ロケーション指示の確認:
WMSが表示する棚番を確認し、格納順を整える。
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4.棚入れ(格納):
指示されたロケーションへ商品を移動し、バーコードを読み取り登録。
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5.在庫更新:
WMSが表示する棚番を確認し、格納順を整える。
工程ごとに分業している倉庫もあれば、入荷担当が一括して行う現場もあります。
いずれにせよ、データ整合性を保つことが最優先です。
現場で採用されている工夫
逆ピッキングは単純作業に見えて、実際は“ミスの起こりやすい領域”です。現場では次のような工夫が取り入れられています。
- ゾーン別の色分けロケーションにより迷いを防ぐ
- 通路の一方通行化で動線を短縮
- ハンディターミナルのロケーション案内で間違い戻しを抑制
- 返品専用ロケーションの設定により混乱防止
EC物流の拡大により、SKU数が急増した倉庫では、こうした細かな工夫が効果を発揮します。
▶合わせて読みたい「SKUとは?10分でわかりやすく解説」
自動化とシステム連携の進展
自動搬送ロボット(AMR)や自動倉庫との連携が進むと、逆ピッキングの一部が機械に置き換えられるようになります。
例えば、入荷口に設置したスキャンゲートで商品情報を読み取り、ロボットが棚前まで運ぶ方式です。
人は最終的な格納チェックだけを担当し、負担が大きく減るケースも見られます。
加えて、画像認識の活用範囲も広がりつつあります。形状やパッケージの特徴から自動分類する技術が進めば、仕分け工程の大半を自動化する倉庫も珍しくなくなるでしょう。
返品業務における逆ピッキングの応用
返品処理では、状態確認と分類が欠かせません。
「再販可能」「検品待ち」「廃棄」「返送」など複数の流れがあり、それぞれに適したロケーションが設定されています。
逆ピッキングは、この判断結果を棚入れに反映させる役割を担います。
特にECでは返品率が高いため、逆ピッキングの効率がそのまま処理スピードに影響します。
ロケーションの細分化や自動仕分け台の導入は、こうした課題に対応するための改善策として広がっています。
ミスを減らすためのポイント
逆ピッキングのミスを減らすためには、以下のポイントを守ることです。
- バーコード照合を徹底する(口頭指示は極力避ける)
- ロケーションの更新履歴を明確化する
- 繁忙期だけルールを変えない(臨時対応で混乱しやすいため)
- 新人とベテランを混成チームにすることで判断を補完
逆ピッキングは、倉庫全体の“在庫の正確さ”を支える土台です。現場の慣習がそのまま精度に響くため、標準化と教育が欠かせません。
まとめ
逆ピッキングは、入荷や返品のあとに商品を適切な棚へ戻すための基盤となる工程であり、在庫管理の信頼性を支える存在です。
一見すると単純な棚戻しのように見えても、照合・仕分け・格納が連動するプロセスであるため、運用ルールの明確化と現場の理解が欠かせません。
自動化が広がる中でも、この工程が担う“在庫を整える力”は残り続けます。作業の正確さが倉庫全体の品質を底支えする——その意味を押さえておくことが、これからの改善にもつながっていきます。
逆ピッキングに関するよくある質問とその答え
Q1. 逆ピッキングは入荷担当の仕事ですか?
A:倉庫によって異なります。入荷担当が一括で行う場合もあれば、格納専任チームを設けるケースもあります。
Q2. ピッキング時のミスと逆ピッキングのミス、どちらが影響は大きい?
A:長期的には逆ピッキングの影響の方が大きくなりがちです。在庫のズレは全ての出荷に波及するためです。
Q3. 自動化すれば人による逆ピッキングは不要になりますか?
A: 完全にゼロにはなりません。返品処理や例外対応など、商品の状態判断が必要な場面では人の関与が求められます。




