目次
倉庫業務を外部に任せる企業は年々増えており、その際に基盤となるのが「倉庫請負契約」です。
荷主と倉庫会社がどこまで責任を持ち、どの範囲の作業を実行するかを定める重要な枠組みで、物流担当者であれば必ず理解しておきたい内容です。
日々の入出庫作業から在庫管理の精度まで直結するため、現場運営にも影響が及びます。ここでは基礎から実務でおさえたいポイントまで整理して解説します。
- 倉庫請負契約は、保管だけでなく入出庫・仕分け・在庫管理まで一括で任せる契約形態
- 倉庫保管契約より業務範囲が広く、役割分担や責任の線引きが明確になる
- 依頼する作業内容や運用の組み立て方によって、現場の動き方が変わりやすい
倉庫請負契約とは?

倉庫請負契約は、荷主が倉庫会社へ作業そのものを委託する契約形態を指します。単なる保管ではなく、入庫検品やピッキング、荷役作業、さらには在庫管理まで業務範囲が広がりやすい点が特徴です。
倉庫側は“作業の結果”に対して責任を負うため、契約内容の詰め方によっては、品質基準や作業手順が細かく設定されます。現場では委託範囲と責任分担が曖昧になることが多く、契約前の細かなすり合わせが必要です。
倉庫請負契約が求められる背景
なぜ、倉庫請負契約が求められているのでしょうか?ここでは3つの背景について解説します。
外部委託の加速
多くの企業がコスト最適化を目指し、物流機能を外部にシフトしています。その過程で、単純な保管だけではなく流通加工や在庫管理まで任せるケースが増え、請負契約の重要性が高まっています。
さらに、繁忙期の波動や人員確保といった課題に対応しやすい点も、外部委託を選ぶ理由として広がっています。
業務の高度化
SKU数の増加や出荷リードタイムの短縮など、倉庫運営は複雑さが増しています。請負契約で作業品質の基準を明確にしておくと、運用の再現性が高まり、現場トラブルを回避しやすくなります。
近年は各工程を可視化し、改善活動につなげる仕組みを求める企業も増えてきました。
法的区分の明確化
保管契約と請負契約を区別しておくことで、責任範囲が整理され、トラブル対応もスムーズになります。契約形態を明確にすることで、参画するステークホルダーの役割や義務も整理しやすくなります。
業界全体で標準化の動きが進んでいることも、明確な区分を後押ししているのです。
倉庫請負契約の主な契約項目

倉庫請負契約の主な契約項目は以下の通りです。
-
作業範囲の定義:
入庫・出庫・保管・棚卸・流通加工など、どの作業まで委託するかを明確にします。漏れがあると“想定外の作業”として扱われ、追加費用の発生や現場混乱につながります。
-
責任の所在:
誤出荷・数量差異・破損といったトラブルに対する責任分担を決めます。免責条件や荷主の協力義務もセットで確認しておくと、のちの運用が安定します。
-
KPI・品質基準
誤出荷率、入出庫リードタイム、棚卸精度など、品質を測る指標を設定します。過剰な数値設定は現場負荷を高めるため、委託側と倉庫側のバランス調整が必要です。
-
報酬体系
固定費方式、出来高方式、混合型など、業務内容によって報酬形式が変わります。変動が大きい業務ほど出来高方式との相性がよく、荷主側の予算管理にも影響します。
倉庫請負契約と保管契約の違い
倉庫請負契約と似たような言葉で「倉庫保管契約」も存在します。ここでは、両者の違いについて3つ解説します。
1. 目的の違い
倉庫請負契約は、入庫処理やピッキング、流通加工といった“作業の実行”を外部に任せることが目的です。反対に保管契約は、貨物を安全に預かり、適切な環境で保管することが中心になります。
どちらも倉庫を使う点は同じですが、委託する対象が「作業」か「保管」かで役割がまったく変わります。この違いを踏まえて契約を選ぶと、運用面でのズレを防ぎやすくなります。
2. 責任の範囲
保管契約では倉庫側が保管中の貨物を適切に管理する義務を負います。一方、請負契約は作業の結果が評価の軸となり、ピッキングミスや入庫数の不一致といった品質面が責任の対象になります。実務ではミス発生時の賠償範囲をどう定義するかが大きな論点です。
さらに、荷主側の指示内容やデータ精度が判断に影響することもあり、契約段階で条件を細かく固めておくと運用トラブルを避けやすくなります。整理が不十分なまま進めると、原因追及の場面で双方の認識が食い違いやすくなります。
3. 契約領域の違い
請負契約は、倉庫内の作業方法から保管環境、品質基準の設定まで、幅広い領域で合意形成を進める必要があります。入庫・出庫といった基本動作に加え、流通加工や在庫管理などの周辺業務も含まれるため、双方で細かな役割分担を整理しながら契約内容を決めていきます。
一方の倉庫保管契約は、貨物を安全に預かることが中心で、取り決めの範囲は比較的シンプルです。決める項目の広さに差があるため、同じ「倉庫の契約」であっても、扱う領域は大きく変わります。こうした違いを理解しておくと、委託内容の整理がスムーズになり、運用時の行き違いも避けやすくなります。
まとめ
倉庫請負契約は、倉庫会社へ単なる保管以上の業務を委ねる際の基盤になる契約形態です。作業範囲や責任の分担、KPIの設定次第で現場の運営方針が大きく変わります。実務では曖昧な表現をなくし、双方が合意した手順書とセットで管理していくことが欠かせません。外部委託が広がる中で、この契約の基本を押さえておくことが、業務の安定運営に直結するでしょう。
倉庫請負契約に関するよくある質問とその答え
Q1. 請負契約と派遣契約の違いは?
A: 請負契約は「結果」への責任があり、指揮命令権は倉庫会社にあります。派遣契約では指揮命令権が荷主側に移るため、運用ルールが大きく異なります。倉庫運営で人材を補う場合は、どちらの形態が適切かを見極める必要があります。
Q2. ミスが発生した場合の賠償はどう決まる?
A: 契約書に記載された責任範囲をもとに判断します。金額の上限や免責事項を事前に取り決めるケースも多く、実運用では手順書やKPIとセットで確認することが求められます。
Q3. 契約期間中に作業範囲を変更したい場合は?
A: 追加契約や覚書で対応するのが一般的です。業務が変われば必要な人員や設備も変動するため、費用体系の見直しと同時に調整することが望まれます。




