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電気を使わない人工筋肉技術を用いたアシストスーツを開発する株式会社イノフィス。2024年問題を契機に深刻化する物流業界の人手不足と労働環境改善の両立に対し、東京理科大学の技術を基盤とした身体的負荷を軽減するソリューションで挑戦しています。
今回は、介護現場から物流・建設・製造業まで幅広い分野で「誰もが元気に働き続ける社会」の実現を目指す株式会社イノフィス代表取締役社長の乙川直隆さま(以下、敬称略)に、大学発ベンチャーとしての強み、独自技術の優位性、そして物流業界への展開可能性について、お話をうかがいました。モデレーターを務めるのは、株式会社ロジテックの朝倉です。
「使うことありき」で開発された人工筋肉技術

朝倉: まず最初に、会社の成り立ちや概要についてお伺いしてもよろしいですか?
乙川: 我々の会社は株式会社イノフィスです。「イノベーション・フォー・フィジカルサポート」を短くした造語で、誰もが元気に生き続ける社会を実現するという願いを込めています。
東京理科大学の小林宏教授が2000年頃から「世の中に役立つものを作りたい」という想いで研究を重ねられてきました。ある企業さんが事業化を見送ったことをきっかけに、先生を中心にこの会社を設立しました。先生は今でも最高技術責任者として開発に携わっていただいています。
朝倉: 日本は「技術はあるけれども、ビジネスが得意ではない」と言われますが、御社がここまで成長できた理由は何でしょうか?
乙川: 小林教授が研究大好きというより「世の中に使ってもらうものを作りたい」という人だったので、創業時点で研究ありきではなく、使うことありきで開発されてきたんですね。会社を立ち上げたときには、もう既に製品の8割がたが完成していました。
さらに、入浴介護サービスの大手企業さんが設立して間もなく500台を購入してくれたんです。モノがあって、お客さんがあってという非常に恵まれた状況でスタートできました。その頃、政府も介護ロボットに力を入れていたので、資金調達も比較的順調でした。従来の大学発はシーズありきで苦労されますが、我々は恵まれた環境の中でスタートできたと思います。
電気を使わない独自技術の競争優位性

朝倉: 製品のラインナップや特徴についてお伺いできますか?
乙川: 我々のアシストスーツは大きく2種類あります。「外骨格」型はフレームがあって大きなサポートをするもの。「内骨格」型はフレームがない代わりに動きやすい。共通しているのは「人工筋肉」という技術で、電気を必要とせず空気で力を発生させるというのが最大の特徴です。
朝倉: 他社製品と比べた御社の強みは何でしょうか?
乙川: アシストスーツの黎明期は電動のものが主流でしたが、実は我々が一番最初に世の中に「アシストスーツ」として出したんですが、当社は最初から人工筋肉を使った、電気を使わないタイプでした。
電気モーター式との大きな違いは3つあります。一つは充電不要で軽量。バッテリーやモーターがないので重さが違います。二つ目は使用環境の制約がない。入浴介助や雨の日の建設現場でも使える。極端な話、プールの中でも使えます。三つ目は価格で、電気モーターを使っているものよりも非常に安価に作ることができます。
朝倉: 他社は同じものを作れないのでしょうか?
乙川: この人工筋肉を使った形状でアシストするというものは特許を取得していて、基本の特許を大学が持っています。また、我々の人工筋肉は非常に繊細で、我々は安く大量に作る技術というノウハウを構築しています。特許とノウハウの二重構造で守られているので、技術的に難しい部分があると思います。
朝倉: これが大学発ベンチャーの強みですね。
乙川: そうですね。コアな技術を学術の世界からお借りして、それをどうやって世の中で使いやすいものに展開していくかというところが、大学発として強みを発揮できているところだと思います。
物流業界での活用と導入効果

朝倉: 物流現場での導入事例についてお聞かせいただけますか?
乙川: 我々のアシストスーツは介護からスタートして、農業、建設現場、製造業と展開してきました。物流の現場は我々にとっても非常に大きな市場で、たくさんの企業様に使っていただいています。
一番多いのはバンニング、デバンニング、パレットからコンベヤーへの荷物移動ですね。全自動化している物流センターはごくわずかで、自動化しきれないところに人が介在せざるを得ない。そこで使っていただいています。
外骨格型は重たいものを持つことに適していますが、動きに制限があります。一方、内骨格型は装着したままフォークリフトに乗れますし、車の運転もできます。輸送の方は着たまま運転して、荷下ろしの時にスイッチをオンにして作業する、そういった使い方もされています。
朝倉: 私たちも現場でお水の仕分け作業があって、1ケース20キロぐらいあるんです。腰の負担や労災リスクもありますし、継続して高い生産性を出すためには、御社のスーツは有効だと感じました。
乙川: アシストスーツの効果は大きく2つあります。一つは体を守るということ。ある会社さんでは、このアシストスーツを入れたことで腰痛による離職者が0になりました。健康でずっと働き続けることができ、ノウハウとクオリティーを維持できます。
もう一つは作業効率です。重たいものをずっとやっていると疲れて作業効率が落ちますが、このスーツを着ていることで負荷が軽減され、作業効率を一定に保つことができます。体を守りながら、企業側としては作業の効率とクオリティーを維持できるんです。
また、女性や高齢者の方もアシストスーツをつけることで持てなかったものが持てるようになり、活躍の幅が広がります。企業によっては福利厚生として、働く人たちを大事にしているというメッセージにもなっています。特に地方では人が雇えないという問題を抱える会社さんが多いので、そういった目的で導入いただいている会社も複数ございます。
法令化を見据えたグローバル展開

朝倉: 今後の展望についてお聞かせください。
乙川: 今後本当に働き手が不足する業界にソリューションを提供していきたいと思っています。物流業界は日本の大動脈で、物流が機能しなければ日本も機能しません。動きやすい内骨格タイプも物流向けに開発していて、物流業界は我々にとって今後一番拡大していきたい業界の一つです。
また、実は日本はアシストスーツ先進国なんです。世界的にも研究開発、製品化が進んでいます。我々の製品をグローバル展開していくのが、もう一つの方向性です。既に20カ国以上で販売していますが、特にヨーロッパへの展開に力を入れています。
さらに今取り組んでいるのが、標準化、法令化です。我々はこれを「腰のヘルメット」だと思っていて、15キロ以上の重量物を持つ人はアシストスーツをつけることが義務であるような、労働安全衛生法への組み込みを目指しています。今年熱中症対策が法令化されましたし、高所作業用ハーネスも法令化されました。
議員連盟も立ち上がっていて、我々も意見を述べさせていただいています。私が若いときはヘルメットなんて面倒くさくてみんなしなかったですが、今は絶対あり得ないですよね。10年、20年先には、当たり前のようにアシストスーツを着る世界が来ると思います。そのためにも、よりウェアラブルなものへの技術革新が必要です。
朝倉: AIがホワイトカラーの仕事を奪うと言われても、ブルーカラーの仕事はなくなりません。いつまでも長く働き続けられるなら、御社のような製品で社会はより良い方向に行きますね。
乙川: 物流の方々とのルートをもっとつくっていきたいと思っていますので、これを機にご協力させていただければと思います。
朝倉: 本日、実際に製品を体験させていただいて、より軽量化や労働者の負担削減に向けてイノフィスさんが取り組まれていることを実感しました。エブリィパワーはアシスト力が強く重量物に対応でき、ソフトパワーは軽量で違和感なく現場で使える。実際のロジテックの現場でも使えますし、取引先にもぜひ御社の製品を紹介していきたいと思います。本日はありがとうございました。
乙川: ありがとうございました。
イノフィスのマッスルスーツを試着体験

朝倉: それでは、実際の製品について、広報担当の清水さんにお話をお伺いしていきたいと思います。よろしくお願いします。
清水: よろしくお願いします。
マッスルスーツ Exo-Power(エクソパワー):最大27キロのアシスト力
清水: こちらは「マッスルスーツ Exo-Power」という製品で、マッスルスーツシリーズの中でも最もアシストする力が強いモデルです。空気圧を利用した人工筋肉によって腰の負担を軽減するアシストスーツです。
朝倉: 実際に身に着けさせていただいてもよろしいですか?
清水: もちろんです。こちらはまずリュックのように背中に背負っていただきます。装着自体は慣れれば10秒、20秒で自分でも装着することができます。
空気入れがついていまして、これで背中に入っている人工筋肉に空気を入れることで、アシストする強さを調節することができます。少しお辞儀していただいていいですか? 空気を入れていきますね。
朝倉: わかります。勝手に起き上がります。
清水: だらんと前傾姿勢をとっていただいて、ここに寄りかかるような形で体を預けることができますので、中腰の姿勢を維持することができます。例えば仕分け作業や農作業、介護施設でのベッド上介助など、中腰姿勢が続く作業が楽になります。
朝倉: 本当に力を入れてない、腕を下げている感じで中腰の姿勢が取れますね。
清水: 空気を最大まで入れると、人工筋肉の力によって上体を引っ張る力が最大27キロになります。人間は物を持ち上げる時には、荷物の重さだけじゃなくて上半身の重さも腰に負担がかかりますので、それを含めてサポートしてくれます。
朝倉: これ、スーツ自体の重さはあまり感じないんですけど、どれぐらいなんですか?
清水: スーツの重さは4.3キロあります。ただ、腰のベルトをしっかり締めていただくことで、肩にはあまり重さがかからないので、そんなに重さを感じにくいです。
朝倉: 確かに。これなら1日中着てても何とかやれそうです。
清水: ただ、こちらの製品は着けたまま歩き回ったり、フォークリフトに乗ったりするような作業には向かないんです。そういった場合には、もう一つのソフトシリーズがありますので、そちらもご紹介したいと思います。
マッスルスーツ Soft-Power(ソフトパワー):430gの超軽量モデル
清水: こちらは「マッスルスーツ Soft-Power」というソフトシリーズの製品です。同じく人工筋肉技術を応用したゴムが入っていまして、より1日中着けていても邪魔にならないということを重視しています。車両の乗り降りもできますし、1日着けたまま、かつ腰の負担を30%以上軽減する製品です。
朝倉: 着脱しやすそうですね。
清水: 製品自体の重さも430gしかないので、慣れてくれば着けているのを忘れてしまうほどです。
ーーー装着
朝倉: 普通に歩いていられますね。確かに荷物を持ち上げる最初の動きがやっぱりちょっと楽になります。私も物流現場やってて、持ち上げる一番最初の動きが結構きついんですよね。体から一番距離が遠いところが一番腰に負担がかかりますし、体力的にも結構きつかったりするんですけど、その初動のところをアシストしてくれる感じがあります。
清水: あと、こっちの製品は体の可動域を制限しないですね。やっぱりアシストスーツの一番の敵って違和感なので、今まで着けてなかったものを着けるわけですから、特に夏場に着けると暑かったり、動きを少しでも邪魔したりすると現場からは受け入れられません。極力体に接触する部分を少なくして、邪魔しないようにという観点で作られています。
朝倉: これはどういう力が働いてるんですか?
清水: 本来腰骨1本で支えている力を肩と足に分散させているようなイメージですね。腰にかかっている力を4箇所に分散できるんです。1日着けた後のお客様からは「1日終わった後の疲れが違う」っていう声が出るんです。
朝倉: 目的として自分が力持ちになるんじゃなくて、体の負荷を腰だけじゃなくいろんなところに分散させて腰痛になりにくくしたり、より長く働けるようにしたりするということですね。
清水: おっしゃるとおりです。アイアンマン的なイメージがあるので、「できないじゃん」って言われることもあるんですけど、そもそもそうじゃないんですよね。社長が言ったように「腰のヘルメット」に近い発想で、地味ですがデータ的にもきちんと負荷が軽減できることが検証されています。
この「Soft-Power」は腰周りの筋肉への負荷を30%以上軽減、「Exo-Power」は50%軽減できています。物流現場のように365日稼働する環境では、疲労の蓄積を改善してくれるものになると思います。
ちなみに一つ前のモデルもここにあるのですが、元々はエアタンクを背負っていたり、コンプレッサーが繋がっていたりして、80万円、重さ7キロからスタートして、どんどんスリムになっていきました。
朝倉: すごい進化ですね。本日、実際に製品を体験させていただいて、軽量化や労働者の負担軽減に向けてイノフィスさんが取り組まれていることを実感しました。「Exo-Power」はアシスト力が強く重量物に対応でき、「Soft-Power」は軽量で違和感なく現場で使える。実際のロジテックの現場でも使えますし、取引先にもぜひ御社の製品を紹介していきたいと思います。本日はありがとうございました。
清水: ありがとうございました。
株式会社イノフィスさまとの対談の様子は、以下のURLから動画でもご覧いただけます!
【対談】イノフィス乙川社長から学ぶ!アシストスーツの可能性とは?【株式会社イノフィス|前編】
企業プロフィール
会社名:株式会社イノフィス
本社所在地:東京都八王子市東町7-6 エバーズ第12八王子ビル5階
設立:2013年12月



