目次
物流において、生産して消費される商品もあれば、利用またはそのまま廃棄になる商品もあります。
廃棄になると限られた資源が減少してしまい、今後増えていく人口増加に対応できません。
本記事では、循環経済を実現するためのサーキュラーエコノミーを解説します。
- サーキュラーエコノミーとは循環型経済と呼ばれる経済システム
- 体現するにはバタフライダイアグラムの理解が必要
- 物流企業はサーキュラーエコノミーを体現する企業を探すのが最適
サーキュラーエコノミーとは?
資源から製品を作り、利用して捨てる経済では持続可能な社会を形成できません。
そのため、サーキュラーエコノミーを活用して資源を循環させることが必要です。
サーキュラーエコノミーの概要や注目されている理由、3R・SDGsとの関わりなどを解説します。
概要
サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、直訳すると循環型経済と呼ばれる経済システムです。
従来は生産、使用、廃棄の一方通行で経済を回していたリニアエコノミー、いわゆる線型経済でした。
多くの資源がリユースやリサイクルされることなく、廃棄を前提とした仕組みです。
対するサーキュラーエコノミーは、廃棄せずに資源を循環させるのを目的としています。
資源消費を最小化したり、廃棄物の発生抑止等をしたりすれば、持続可能な循環経済への移行が可能です。
サーキュラーエコノミー | リニアエコノミー | |
ステップ① | 原材料 | 原材料 |
ステップ② | 製品 | 製品 |
ステップ③ | 利用 | 利用 |
ステップ④ | リサイクル※ステップ①に戻る | 廃棄 |
注目されている理由
サーキュラーエコノミーが注目されている理由は、人口の増加による資源不足が考えられるからです。
国際連合の推計によると、2022年11月15日時点で世界人口が80億人に達したと公表されました。
しかし、2050年の世界人口は98億人になるという推計がされて、さらに人口が増加する可能性が高いです。
そのため、一人当たりの製品利用料も増加して、その分の資源が必要になります。
生産、消費、廃棄が大量に行われ、サーキュラーエコノミーの考え方が欠かせません。
将来のために脱プラや使用資源の減量も注目されていて、無駄を出さない持続可能な発展が求められます。
3Rとの違い
サーキュラーエコノミーと3Rは類似していますが、若干の違いがあります。
ポイントは、廃棄を前提としているかどうかです。
3Rは原材料を調達して製品を作る際、廃棄を前提にしてリユースやリサイクル、リデュースをする流れになります。
しかし、サーキュラーエコノミーは廃棄物の概念をなくすのを目指していて、廃棄を前提としていません。
リサイクルに関しては、サーキュラーエコノミーの循環の中で行われるステップの一部になります。
SDGsとの関係性
サーキュラーエコノミーとSDGsとの関係は密接的です。
SDGsの持続可能な開発目標を達成するための手段として、サーキュラーエコノミーの仕組みが採用されています。
特に以下3つのSDGsの目標がサーキュラーエコノミーとの関連が深く、目標に沿った導入や配慮をすれば大きく貢献できるでしょう。
SDGs目標 | 該当する主な項目 |
その9「産業と技術革新の基盤をつくろう」 | 9.42030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 |
その12「つくる責任、つかう責任」 | 12.22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
その15「陸の豊かさも守ろう」 | 陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る |
サーキュラーエコノミーの体現に必要なバタフライダイアグラム
サーキュラーエコノミーの体現には、バタフライダイアグラムの図を体現する必要があります。
バタフライダイアグラムとは、あるゆるものが寿命に至るまでの生物サイクルと技術サイクルを表現した図です。
イギリスのエレン・マッカーサー財団が提唱した図で、見た目が蝶の羽に見えることからバタフライ(蝶)ダイアグラム(幾何学的な図示)と名づけられています。
生物的サイクル
バタフライダイアグラムの左図が生物的サイクルで、自然の仕組みで循環させていく構造です。
環境問題を積極的に改善できるサイクルで、再生可能な資源を有効に活用できます。
例えばスーパーやコンビニにあるような食材は、弁当や冷凍食品、惣菜などに加工されます。
しかし、賞味期限や消費期限が過ぎれば、商品としての価値がありません。
そこで廃棄物処理施設で焼却するのではなく、養豚場の飼料にすれば焼却せずに済みます。
飼料を食べて育った豚は食材に加工されて市場に出され、豚の糞はたい肥にして栄養ある土に活用可能です。
豚が食べられない廃棄物は焼却になりますが、廃棄量を最小限に抑えるためCO2の排出を削減できます。
物流では静脈物流と動脈物流の循環ができて、効率の良い物流サイクルを形成できるのが強みです。
※動脈物流:製造業が原材料を輸入して、小売業・その他産業に届けるまでの流れ
技術的サイクル
バタフライダイアグラムの右図が技術的サイクルで、枯渇してしまう資源を循環させていく構造です。
枯渇してしまう資源は金属や石油などで、生産に限りがあります。
例えば道路で走っている車も技術的サイクルが行われていて、使えなくなったら焼却処分するわけではありません。
定期的にメンテナンスを行い、1台の車を数十年使えるように消費していきます。
しかし、メンテナンスをしても寿命が来てしまい、いつかは廃車買取に出すことになるでしょう。
廃車買取では業者が使えそうな部品を有効に活用してくれるため、無駄にはなりません。
金属であれば溶かして部品を生産していけば、廃棄物の削減に繋がります。
より上部で壊れない製品を作ると、生産や廃棄が少なくなって技術的サイクルの循環が形成できるでしょう。
サーキュラーエコノミーでは回収した製品をリサイクルするために、運ぶための物流業者が欠かせません。
サーキュラーエコノミーには静脈物流が必須
サーキュラーエコノミーには、静脈物流が欠かせません。
静脈物流とは、消費者や企業が排出する廃棄物を回収して、廃棄物処理施設や再資源化してくれる企業へ運ぶための物流です。
これまでの静脈物流(1992年以前)と、サーキュラーエコノミーにおける静脈物流を見ていきましょう。
これまでの静脈物流
これまでの静脈物流は、返品をするためにトラックを走らせるイメージでした。
消費者の返品・返送に対して荷物を運ぶ、いわゆる回収物流・返品物流・廃棄物物流の役割を担っていました。
サーキュラーエコノミーが普及しておらず、廃棄物処理の焼却でCO2排出量が出る危機感も少ない時代です。
環境問題への関心が低く、静脈物流はサプライチェーンのコストがかかるといった印象が大きかったことでしょう。
サーキュラーエコノミーにおける静脈物流
現在のサーキュラーエコノミーにおける静脈物流は、循環型社会を実現するための物流になっています。
1992年にアメリカの研究者ジェームス・ストック氏が「リバースロジスティクス」を提唱しました。
3Rの実現をすれば、環境問題の解決に大きく貢献できるという内容でした。
具体的には廃棄物処理方法を見直すリデュース、修理・メンテナンスをするリユース、解体した部品を活用するリサイクルの実現です。
価値のない、または価値の低いものを扱っていたこれまでの静脈物流は、環境問題の解決で新たな価値を見出せる静脈物流という認識がされました。
サーキュラーエコノミーで物流企業に求められること
サーキュラーエコノミーやバタフライダイアグラムなどの用語のみを見ると、難しいイメージを持ってしまうでしょう。
しかし、物流企業に求められることはシンプルです。
どのような内容か、わかりやすく解説します。
情報収集していくこと
一部の企業では、サーキュラーエコノミーの取り組みが遅い、または重要視していないことでしょう。
今月の利益を優先しすぎて、循環型経済ではなく線型経済のビジネスをしてしまうと廃棄物が出続けてしまいます。
そのため、企業は市場の情報を収集して可視化しておくのが重要です。
情報があればどのような行動がとれるか、具体的な戦略が練れます。
ビジネスモデルをもとに情報を収集すると、集めるスピードが変わってくるでしょう。
例えば食品を取り扱う企業は、廃棄物を出さないために循環型経済に積極的です。
小売業界ではすでに商材を獲得している物流企業の競争相手がいる可能性が高いですが、情報収集をすれば商材を掴めます。
サーキュラーエコノミーの取組を始めている企業を探し、営業していくと良いでしょう。
競争に勝てるために話し合うこと
物流企業の競争相手がいない、または少ない企業を見つけた場合、静脈物流を担当する営業だけでは弱いです。
営業先が求めていることに対して柔軟に対応できれば、高い価値を提供することにつながります。
そのため、競争に勝てるように、営業で話し合うことが必要です。
ターゲットとなる産業や顧客を定めて、営業先が何を求めているかを確認してください。
他社よりも優れている対応ができれば、商材の獲得につながります。
サーキュラーエコノミーの導入事例
サーキュラーエコノミーの経済システムは多くの企業で導入されていて、廃棄物を出さない仕組みになっています。
どのような仕組みになっているか、見ていきましょう。
Free Standard株式会社
Free Standard株式会社は、ヤマトホールディングス株式会社が出資した会社です。
従来の物流は、製造・新品販売・2次流通プラットフォーム・廃棄といった流れで動いています。
対してFree Standard株式会社が提供しているRetaior(リテーラー)は、廃棄をするステップはありません。
Retaiorの物流は、製造・お試し・新品販売をして、メンテナンスまたはリユース販売をします。
お試しとは、ECサイト上で購入するだけではなく、試してから購入する機能です。
リユース機能とは、生産量を増やさなくてもリユース品に欠かせない機能を提供するサービスを指します。
公式ECサイトでレンタルまたはリユースの機能を構築または運営可能にするのが、Retaiorのサービスの特徴です。
参考:Retaior公式サイト
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所(以下日立)と国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下産総研)は、循環経済社会の実現に向けてラボを設立しました。
ラボは産総研臨海副都心センター内にあり、名称は「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」です。
日立のOT×IT×プロダクトの強みと、産総研の研究開発力や標準化活動などの強みを活かしたラボになっています。
ラボ内では主に以下のことを研究して、サーキュラーエコノミーの循環経済に貢献しています。
- 循環経済社会の全体構想を考えて、業種を横断する評価方法や指標を策定
- データを活用して生産活動における設計、調達、製造から使用、回収までのバリューチェーンの各プロセスでのリサイクルや資源循環を促進するソリューションを開発
- カーボンニュートラルと循環経済を統合的に支援するとともに、業種をまたいで資源循環を行う、循環経済のロールモデルを将来的に構築
- 標準化戦略の立案および施策の提言
まとめ
サーキュラーエコノミーは循環型経済と呼ばれる経済システムで、人口の増加による資源不足で注目されています。
体現するにはバタフライダイアグラムが必要で、廃棄物を出さない工夫が欠かせません。
物流企業はサーキュラーエコノミーを実現しようとしている企業がいるかを情報収集して、競争に勝つための価値を提供するのが良いでしょう。
なお、サーキュラーエコノミーで原材料・製品・利用・リサイクルの循環ができると、運搬するための物流企業の力が必要になります。
案件の受注・発注で人員が不足してしまうイレギュラーな事態に備えて、企業同士が協力して物流事業を行えるパートナー登録を済ませておくのがおすすめです。
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