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物流業界へ革新的なソリューションを提案するGaussy株式会社は、創業から約2年で順調に事業を拡大しています。今回は、物流のオペレーション、倉庫の開発・運用にも携わって経験を積まれ、2020年からロボット事業に従事されている櫻井社長にお時間をいただき、株式会社ロジテック代表取締役の川村がモデレーターを務め、ロボット化の取り組みと物流業界の展望について話を伺いました。
Gaussyの革新的な物流ソリューション
川村 まずは、Gaussyの事業内容について教えていただけますか。
櫻井 ありがとうございます。Gaussyでは物流業界の課題解決を目指して、「WareX」というシェアリング倉庫サービスと、「Roboware」という倉庫ロボットのサブスクリプションサービスを提供しています。WareXは、物流会社や荷主が一時的に倉庫スペースを共有できるプラットフォームで、現在全国で1,500拠点が登録されています。
川村 WareXは非常に時代にマッチしていますね。物流業界では需要の波動が大きく、繁忙期には倉庫スペースが不足し、閑散期には余ってしまう問題があります。このサービスはそのギャップを埋めるのに非常に有効だと感じます。
櫻井 その通りです。例えば、3ヶ月間だけ500坪の倉庫が空いてしまう場合や、食品業界の繁忙期などで一時的に倉庫スペースが必要な場合に、このプラットフォームを活用して効率的に倉庫を見つけることができます。
川村 次に、倉庫ロボットサービス「Roboware」の特徴についても教えてください。
櫻井 はい、ロボットサービスでは、生産労働人口の減少や物流業務の効率化を目指しています。特に2024年問題を背景に、トラックドライバーの業務が制限される中で、倉庫業務も影響を受け始めています。これを解決するために、立体型仕分けロボット「Omni Sorter」を中心としたロボットの導入が進んでいます。Gaussyでは、ロボットの販売だけでなく、ソフトウェアや保守メンテナンスを含むトータルサポートを提供しています。
川村 そのソフトウェアについても詳しく教えていただけますか。
櫻井 我々のソフトウェアは、複雑なシステム連携を解決するために開発されました。例えば、WMS(倉庫管理システム)とロボット制御システムの連携をスムーズに行うことができます。このソフトウェアを使うことで、コストや時間を大幅に削減できます。また、24時間365日のサポート体制も整えており、現場が止まることなく運用できるようにしています。
川村 それは非常に心強いですね。現場でトラブルが発生した場合にも迅速に対応してもらえるというのは、顧客にとって大きな安心材料です。ところで、先ほど2024年問題に触れられましたが、倉庫業にどのような影響を及ぼしているのか、もう少し詳しく教えていただけますか。
櫻井 2024年問題により、ドライバーの労働時間を減らさなければならない状況が生じています。しかし、現在の日本では、ドライバーが倉庫で荷下ろしを求められることがありますが、ヨーロッパでは、ドライバーが貨物を降ろすことはありません。しかし、日本ではまだその慣習が残っています。2024年問題の影響で、ドライバーの残業時間や作業時間を削減しなければならないため、倉庫側が荷下ろしなどの作業を引き受ける必要があります。倉庫側の業務負荷を軽減するために、ロボットの導入が真剣に検討されるようになってきています。我々のミッションは、フレキシブルな物流でビジネスに選択肢を提供することですから、この課題にも積極的に取り組んでいます。
川村 弊社はトラックドライバーの派遣を始めようと考えていますが、ドライバーの立場で考えると、彼らが倉庫で荷下ろしをしている理由の一つは、早く次の拠点に行きたいからではないでしょうか。そうしたドライバーの心理を利用して倉庫が怠慢になっているのかもしれませんね。
Gaussyの考える技術と人材のバランス
川村 私どもロジテックは、倉庫スペースを共有できる「WareX」のユーザーです。私たちの会社は元々人材派遣会社で、2010年から「バイトレ」という短期派遣会社を立ち上げました。そこから10年ほど経ち、8割が物流業界のお客様でした。そうしたことから物流業界で新しいことにチャレンジしたいと考え、2021年から自社の倉庫を持ち3PL事業に進出しました。2024年春からは「サバケル」というサービスを開始しました。荷主と倉庫のマッチングプラットフォームですが、我々の強みである人材も提供できる点が特徴です。
櫻井 御社の「サバケル」は、「WareX」と比べてどの辺に違いがありますか。
川村 「WareX」とは基本的に異なるモデルです。我々は人材を中心に据えているので、作業の伴う物流サービスを提供します。荷主向けに倉庫スペースを紹介するだけでなく、そこで働く人材も提供します。
櫻井 確かに人は大切ですよね。私どもも全てをロボットで自動化できるとは考えておりません。
川村 物流業界は技術と人材のバランスが重要ですね。完全な自動化は難しいですが、適切なバランスを見つけることが大切です。
櫻井 そのとおりです。日本は地震大国なので、地震が起きるたびに自動倉庫の荷物が落ちてしまうことがあります。そうなると復旧が非常に大変です。だからこそ、完全な自動化ではなく、ロボットと人手の両方が必要だと考えています。最悪の場合、ロボットが故障しても人手で何とかすることができますからね。
川村 確かにそうですね。自動化を望むお客様も多いですが、地震などのリスクを考えると、完全な自動化には慎重にならざるを得ませんね。お話を伺うと、柔軟性のあるソリューションが求められていると感じます。
ロボット化を推進する秘策
川村 技術と人材のバランスが重要と話しましたが、やはり倉庫のロボット化は物流業界のトレンドです。しかし、ロボットを導入するとなると高額な投資を必要とするため、大手企業を除く中堅・中小企業は一歩を踏み出しにくかったと思います。
櫻井 その通りです。荷主との契約期間が短い倉庫会社は、リスクが高いので大規模な設備投資に踏み出せません。しかし、移設が可能なロボットで他の場所でも再利用できる、レンタルサービスであれば柔軟に対応できます。例えば「Omni Sorter」のような立体型仕分けロボットは、省スペースで効率的に仕分けができ、移設も簡単です。これがレンタルでも利用できるので、従来の設備投資に比べて桁が一つ少ないくらいの金額でロボット化が可能です。
川村 レンタルサービスは非常に便利ですね。初期費用が抑えられ、必要に応じて利用できるというのは、多くの企業にとって魅力的です。ただ、最終的には購入する方が安くなる場合も多いですよね。
櫻井 現在のところ、多くのお客様は最終的にロボットを購入されていますが、短期間のレンタルもニーズはあります。実際に使用してみて、その価値を実感すると、購入を選ぶ方も多いですが、レンタルを通じて導入のハードルを下げることができるので、その点で多くの企業に利用されています。
川村 倉庫のロボット化を阻んでいるもう一つの理由は技術革新のスピードです。1年も経つと新しい技術が登場するため、どのロボットを選べば良いのか判断するのが難しいです。その点、Gaussyさんは多種多様なロボットの中から厳選してお客様に提案されているので、専門家の仲介する役割はますます重要になると感じています。
櫻井 ありがとうございます。ロボットの種類も多様化しており、どのロボットを選べば良いか悩まれるお客様が多いので我々が適切なソリューションを提案していきます。
「Omni Sorter」
ロボットと人間が協力して働く未来
川村 本日は非常に有意義なお話を伺うことができました。最後に、今後の展望や目標について教えていただけますか。
櫻井 ありがとうございます。これからも「Omni Sorter」などの新技術を導入し、物流業界の効率化と持続可能性を追求していきます。特に、重量物を運べるロボットや多機能なピッキングアシストロボットの導入を進めていく予定です。近いうちに自律走行ロボット、AMR(Autonomous Mobile Robot)を市場に投入する計画もあります。
川村 AMRですか、それは興味深いですね。どのような性能があるのですか。
櫻井 弊社のAMRは600kgまで運ぶことができます。従来のロボットは60kg程度しか運べなかったので、これにより大幅に効率が向上します。さらに、1.5トンまで運べるタイプも準備しています。これらの新しいロボットを投入し、海外からも優れた技術を取り入れることで、常に最先端のソリューションを提供していきます。物流現場が停止することなく、持続可能な運営を実現したいと考えています。
川村 それは素晴らしいですね。現場が止まらないことは本当に重要です。
櫻井 私たちも、ロボットと人間が協力して働く未来を見据えて、技術革新による現場の改善を進めていきます。
川村 そうですね。ロボットは人の敵ではなく、味方として共に働く存在だと考える必要があります。現場の判断はロボットが行い、その基準を決めるのが人間の役割です。例えば、需要の波が上がるのは皆が物を買うからで、商品の付加価値を高める作業などは人間の手が必要です。お話を伺って、未来の物流業界がますます楽しみになりました。本日はありがとうございました。
櫻井 こちらこそ、ありがとうございました。共に物流業界を進化させていきましょう。