目次
物流では商品を販売するために運ぶ動脈物流と、売れなかった商品を返品・返送する静脈物流があります。
このうち、静脈物流をリバースロジスティクスといい、循環型社会の形成に必要な物流の仕組みです。
なるべく返品・返送をするのを少なくするのが理想ですが、なかなか実現できません。
そこで本記事では、リバースロジスティクスの現状問題や効率化で重要な3Rを解説します。
- リバースロジスティクスとは、製造業が届けた商品を小売業・その他産業が返品・返送する物流のこと
- 返品・返送した商品の量が多かったり費用などが発生したりするのが課題
- 3Rでリバースロジスティクスに対策可能
リバースロジスティクスとは?
リバースロジスティクスとは、製造業が届けた商品を小売業・その他産業が返品・返送する物流のことです。
製造業が原材料を輸入して、小売業・その他産業に届けるまでの流れを動脈物流といいます。
対して動脈物流の反対(リバース)する流れを静脈物流といい、最終的に廃棄物処理施設へ流れていく仕組みです。
サプライチェーンとリバースチェーンで循環型社会を実現することで、消費者と企業を結ぶ重要な役割を果たしています。
リバースロジスティクスの現状問題
リバースロジスティクスには現状問題があり、物流の流れにおいて改善点が多くあります。
どのような問題があるのか、1つずつ見ていきましょう。
製造業に返品・返送する商品が大量にある
動脈物流で製造業から小売業・その他産業に届けた商品は、返品・返送して製造業に運ばれます。
理想は小売業・その他産業から製造業へ返品・返送が無いことですが、完売したり商品の不備をゼロにしたりするのは困難です。
現状は廃棄物流として廃棄物処理施設へ大量の商品を流していて、多くは焼却処分されます。
食品製造業からの食品廃棄が最も多く、外食産業や食品小売業、食品卸売業も廃棄しているのが課題です。
費用が発生する
商品を返品・返送すると、返送料や返金手数料がかかります。
返品・返送する商品がゼロであれば費用がかかりませんが、需要が多くて供給が少ないビジネスをしないと実現が不可能でしょう。
また、返品物流をするサービスを使うと、よりコストがかかって小売業・その他産業の負担が大きくなります。
加えて食品の仕分けの必要性が高かったり、1つの小売業・その他産業における発生量が少なくて発生場所が多かったりするため、費用に見合った効率的な配送が実現しにくいです。
処理までに時間がかかる
1つの企業に対して時間はかからないものの、物流網全体で見た時に時間がかかってしまうという問題があります。
小売業・その他産業から出る商品は、リサイクル物流でリサイクル施設に一部預けられるのが一般的です。
その後は廃棄物処理施設に流し、売れなかった商品や欠陥のある商品は廃棄処理されます。
製造業に返品・返送する走行中に廃棄物処理施設に商品を運ぶこともあり、施設までに届けるのを考慮すると時間がかかりやすいです。
リバースロジスティクス効率化で重要な3R
リバースロジスティクスで返品・返送を減らすには、3Rで対策するのが有効です。
食品のリバースロジスティクスに効果的で、各物流現場が取り組んでいます。
これ以上廃棄を増やさないために、どのような3Rをしているのかを見ていきましょう。
リサイクル(Recycle)
リサイクルとは、廃棄物を資源に再利用することです。
リサイクルを行えるような共同化をすると、廃棄量の減少に貢献できます。
例えば食品の仕分けをするときに、商品の情報を管理して分離技術を駆使すれば、リサイクルの量が減るでしょう。
具体的にはトラックに積まれた荷物の所在地や質、量などの情報を把握します。
把握した情報をもとに食品残渣や加工食品などに分かれば、その後の利用がスムーズです。
家畜の餌に使った後、家畜の糞をたい肥にして農家で使う循環をつくると効果的なリサイクルができます。
リデュース(Reduce)
リデュースは「減らす」という意味で、食品の廃棄量をなるべく抑える取り組みです。
方法は単純で、需要と供給の現状を知り、取引条件がどうなっているかを確認すると効果が現れます。
例えば需要が少ない中で供給が多くなってしまうと、売れ残りが生じて廃棄になってしまう可能性が高いです。
また、返品条件や賞味期限などを把握しておけば、最適な入荷タイミングが図れます。
このように情報と取引条件の詳細を把握すると、効果的なリバースロジスティクスが実現するでしょう。
リユース(Reuse)
リユースは一度使ったものを再度使う意味ですが、食品よりも製品の方がイメージがしやすいです。
例えば中古車や中古家電などを廃品にしてしまい、返品・返送することがあります。
しかし、修理・修復などで再利用できる製品なのかの見分けができれば、リユースしてリバースロジスティクスに貢献できるでしょう。
リユースするために、回収した製品を保管するスペースを確保しておく必要があります。
リバースロジスティクスは今後どうなるか?
物流業界ではトラックドライバーの不足が課題となっていて、運転手の高齢化や労働環境の厳しさ、競争の激化などが要因として挙げられます。
このような状況が続くと、物流業界全体の効率やサービス品質に影響を及ぼす可能性があるでしょう。
リバースロジスティクスにおいても、トラックドライバーの不足は今後の課題となり得ます。
返品や廃棄物の回収、リサイクルなど逆流物流を担当するトラックドライバーの需要が増えている一方で、人材の確保が難しい状況があるからです。
そのため、物流企業は労働環境の改善や待遇の見直し、労働力の多様化などに取り組んだ対策が必要になります。
また、自動化技術やドローン、自動運転技術なども進展しており、 これらの技術を活用することで人手不足の解消や効率化に期待できます。
しかし、技術の利用には初期費用が伴い、2024年にはドライバーの時間外労働の規制が始まります。
ドライバーが満足する賃金が渡せず、さらに企業の利益が減少する予測がある中で、費用はなるべく抑えたいものです。
そこで必要なのが、業者間の連携した取り組みになります。
企業が連携して取り組むと現状の課題が解決して、持続的なリバースロジスティクスが実現できます。
リバースロジスティクスの取組事例
リバースロジスティクスの取組は既に行われていて、効率的な物流の仕組みが実現しています。
非効率なものや無駄なものなどを削減・解決できる仕組みになっているため、参考にしてみてください。
回収や同時交換業務を行う「回収くん」でトータルサポート|佐川急便
佐川急便では、回収や同時交換業務を行う際の課題を解決できる「回収くん」があります。
効率的な業務フローの構築をするシステムで、幅広い業務に対応可能です。
Web・電話・メール・FAXなどで返品依頼をすると、事業者がCSVや拠点などのデータ登録をします。
あとは回収・同時交換・発送のみの3つの中から、依頼内容に応じた業務を行ってくれるシステムです。
主な運用事例は以下の通りで、物流業務全体の最適化を実現できます。
- リコール対応
- 修理品対応
- 通販返品対応
- 買い取り販売業務
向上の食品残渣を畜産農家の飼料に活用|株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、専用工場で出た食品残渣を飼料化に有効活用しています。
飼料は養豚場の豚が食べて豚肉として専用工場で処理されるサイクルが生まれるため、無駄がほとんどありません。
食品残渣は腐敗しないように冷蔵保存していて、豚が食べても安心安全です。
また、豚糞はたい肥になり、おでんに使う大根を育てるために利用されます。
専用工場から1日15トンの処理量があり、焼却しないで有効に活用する手段はリバースロジスティクスに貢献できる画期的な仕組みです。
店舗に食品の処理機を設置|ユニー株式会社
ユニー株式会社は店舗に食品の処理機を設置することで、リバースロジスティクスに貢献しています。
処理機があることで循環型リサイクルを実現できて、食品の廃棄を有効に活用可能です。
店舗で売れなかった食品を真空乾燥させて、肥料工場で生産者が使えるたい肥にします。
生産者はたい肥で野菜等を育てるために使い、商品を出荷して再び店舗で陳列されるという流れです。
このような食品リサイクルループを循環させることで、物流課題を解決しつつ、消費者に供給する野菜を提供できます。
可燃ごみの焼却施設を共同化|各自治体
可燃ごみの焼却施設を共同化させることで、コストを大幅に軽減できた自治体の取組事例があります。
自治体Aと自治体Bがそれぞれ焼却施設を抱えている状態と、自治体Aにしか焼却施設がなく、自治体Bが自治体Bの焼却施設まで運ぶ2つの条件で試算しました。
結論、自治体Aにある焼却施設へ自治体Bが運んだ方が効果的です。
自治体Bにあった焼却施設がなくなることで、建設費や維持費がかからず、自治体Aの焼却施設に施設規模を充当できます。
自治体Bの中継点で集めてから焼却施設へ行く必要がありますが、効率来な物流が可能です。
コピー機の共同回収|中国地方
中国地方ではコピー機の共同回収では、牛乳配達方式を採用しています。
例えば物流拠点から各県回収デポまで届ける場合、届け方は2つです。
1つは物流拠点から各社物流手段で届ける方法で、もう1つは共同配送をして届ける方法があります。
共同配送をすれば、各県回収デポまで届けるのにトラックの台数を抑えられて効率的です。
その後は交換センターで各メーカーに返却をして、再資源化工程に移ります。
各社がリユースやリサイクルをして再資源化をすることで、リバースロジスティクスにかかる物流の負担を少なくしています。
食品共同回収システム|一般社団法人日本フードサービス協会
一般社団法人日本フードサービス協会では、茨城県下妻市において、農業者と店舗が協力したサイクルを実現しています。
スーパーマーケットの売れ残り商品や外食店舗の食べ残しなど、ゴミとして捨ててしまうものが多いです。
それを農事組合法人の百姓俱楽部に、たい肥の原材料として提供しています。
百姓倶楽部はたい肥を使った野菜を生産して、スーパーマーケットや外食店舗が購入するという流れです。
まとめ
返品・返送をするリバースロジスティクスは、できるだけ削減して無くなることが理想です。
3Rを駆使した解決手段が有効で、トラックドライバーが不足している現状に対してどのような解決をするかが企業に求められています。
各企業が物流業務内の無駄をなくす事例があるので、ぜひ参考にして効率的な物流を展開していきましょう。
案件の発注・受注にお困りですか?
「仕事を依頼したいけど引受先が見つからない」「仕事を受けたいけど依頼元が見つからない」といったことはありませんか?
大手物流企業はAIやシステムなどで人員が少なくても対応できる体制が整っていますが、中小物流企業は大幅な予算を組めずに対応できない悩みがあるでしょう。
そこで生まれたのが、仕事を依頼したい企業と仕事を受けたい企業の物流ニーズをマッチングさせるロジパレです。
パートナー登録した企業同士が協力をすることで、事業の最適化・業務拡大をご支援いたします。