Build to Orderとは?10分でわかりやすく解説

製品の製造といえば、あらかじめ大量に作っておいて、注文が入ったら出荷する「作り置き」のイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし近年、需要に応じて製品を作る「受注生産型」のスタイルが、製造業・物流業界で一般的になりつつあります。 英語では「Build to Order(BTO)」と呼ばれ、直訳すると「注文に応じて作る」という意味になります。

この記事では、Build to Orderの考え方についてわかりやすく解説します。

Build to Orderとは?在庫を持たない「賢いモノづくり」

Build to Orderとは、お客様から注文が入ってから製品を作るというスタイルの製造方式です。これは「見込み生産(作ってから売る)」と対になる考え方です。

物流の世界では、受注生産は「製造だけ」の話ではありません。 注文が入ってから資材を調達し、製造し、保管・出荷・納品までの一連のプロセスすべてが、顧客ごとのカスタマイズ対応になります。

つまり、物流部門にも次のような工夫が必要になります。

・必要な資材をすぐに揃えられるか?
・製品完成後にスムーズに配送できる体制があるか?
・納品先ごとに梱包・ラベル貼付などが個別対応できるか?

このように、受注生産は製造・在庫・物流すべての工程を柔軟かつ正確に管理する仕組みが必要なビジネスモデルと言えるのです。

Build to Orderのメリット

この方式には、製造側・購入側の両方にとってさまざまな利点があります。

製造者のメリット

たとえば、家電メーカーが一定数の洗濯機を見込みで製造し、売れ残った在庫を倉庫で抱えてしまう「作りすぎ」のリスクは、企業にとって大きな負担になります。
Build to Orderなら、お客様から明確な注文を受けてから製造を始めるため、過剰在庫や在庫廃棄のリスクが大幅に減少します。

また、商品ごとに仕様を変えることができるため、顧客ニーズに合わせた多品種少量生産が可能になります。特に、製品のバリエーションが多い業界(家電、自動車、医療機器など)では、受注生産が柔軟な対応を可能にしています。

購入者のメリット

購入者にとっては、「欲しい機能だけを選んで、自分に合った仕様で商品を手に入れられる」ことが最大の魅力です。

たとえば、パソコンを注文するときに、

・メモリ容量を増やす
・必要ないソフトを省く
・色やサイズを選ぶ

のようなカスタマイズが可能なのは、Build to Orderを取り入れるからこそです。これにより、ムダな機能を省き、コストを抑えた自分仕様の製品を手に入れることができます。

Build to Orderのデメリット

一方でBuild to Orderには以下のような3つの課題があります。

1. 納期が長くなる傾向にある

注文が入ってから部品を調達し、製造を開始するため、在庫品と比べて出荷までに時間がかかります。たとえば家電製品の特注モデルでは、通常品より1〜2週間余計にかかることもあります。

2. 管理の手間が増える

製品ごとに仕様が異なるため、生産指示や部品管理の手間が増えるという面もあります。生産現場や倉庫では、「この注文はこの部品で」「この顧客にはこの梱包で」といった個別対応が求められるため、管理が煩雑になります。

3. 各部門の連携が必須

営業・製造・物流の部門間での連携が重要です。受注内容が正確に現場に伝わらないと、製造ミスや納期遅延の原因になることもあるのです。

SCMがカギ!Build to Orderを支える「サプライチェーン・マネジメント」とは?

Build to Orderは柔軟性が高い一方で、「注文を受けてから動く」という性質上、製造や物流の遅れが全体の納期に直結するというデリケートな面を持ちます。そこで重要になるのが、SCM(サプライチェーン・マネジメント)です。

SCMとは、原材料の調達から製造・在庫管理・出荷・納品までを一連の流れとして最適化する仕組みのことです。

 たとえば、こんな仕組みが動いています。

需要予測と連動した部品発注システム

  過去の注文データやトレンドをもとに、将来的な注文内容を予測。あらかじめ必要になりそうな部品を最小限の量で確保することで、受注後の部品調達のタイムロスを減らします。

リアルタイムでの進捗管理

製造ラインの状況、部品の入荷状況、出荷スケジュールなどをITシステムで一元管理。どこかで遅れが生じた場合でも、即時対応ができる体制を整えます。

物流との連携強化

製品が完成した後の出荷タイミングを、顧客の希望納期に合わせて細かく調整。トラック手配や配送ルートの最適化まで含めて、一貫して効率化が図られます。

外注先やサプライヤーとの連携

組み立てに必要な部品を外部から調達している場合、サプライヤーにも製造計画を共有し、供給のタイミングと量を正確にコントロールします。

SCMの進化が、受注生産を「普通の選択肢」に変えた


かつては「受注生産は管理が大変で非効率」とされていましたが、今ではクラウド型システムやIoT機器の活用により、サプライチェーン全体の「見える化」と「最適化」が進んでいます。

その結果、従来は特注品や高級品に限られていた受注生産が、一般的な製品にも広く適用できるようになり、メーカーの選択肢として定着してきたのです。

まとめ

Build to Orderは、在庫リスクを減らしつつ、お客様の要望に細かく対応できる柔軟な製造方式です。
一方で、納期管理や情報連携など、全体の流れをコントロールする力も求められます。

時代のニーズに応えるモノづくりの形として、今後ますます重要性を増していく仕組みだと言えるでしょう。

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