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輸出入の物流では、貨物の遅延が思わぬコストにつながることがあります。
その代表的なものが超過保管料とよばれる「Demurrage(デマレージ)」です。これは、コンテナが港の保管施設に長く置かれすぎた場合に発生する追加費用です。
この記事では、輸入貨物を対象に発生するDemurrageの仕組みや、実際にどのような場面で費用が発生するのか、そして未然に防ぐためのポイントまでをわかりやすく解説します。
Demurrageとは何か?
貨物が船で港に到着した後、船会社ごとに、フリータイムと呼ばれる無料保管期間が設定されています。その間に引き取りを完了すれば、保管料は発生しません。
しかし、何らかの事情でコンテナの引き取りが遅れ、コンテナヤードに長く保管されると、一定の猶予期間を超えた分に対して追加の保管料がが発生します。
これは「Demurrage(デマレージ)」と呼ばれる費用で、輸入貨物が港のヤードに放置されている状態が続くことへのペナルティ的な意味合いがあります。
Demurrageが発生する要因
通常、輸入コンテナは港に到着した後、ターミナル内のコンテナヤードと呼ばれる場所に一時的に保管されます。
しかし、次のようなケースが起こった場合には、フリータイムを超えてしまうことがあります。
・通関に時間がかかり、コンテナの引き取りが遅れた
・荷主側のトラック手配が間に合わなかった
・書類の不備などで手続きが完了しなかった
・物流拠点のスペース不足により搬入できなかった
このような場合、フリータイムを過ぎた日数分に応じて、一定額の保管料が課されます。
Demurrageの金額はどのようにして決まるの?
Demurrageの金額は一律ではなく、いくつかの要素によって変動します。主に影響するのは以下の3つのポイントです。
1. 利用する船会社による違い
各船会社によって保管料の設定やフリータイムの日数は異なっており、同じ港に到着したコンテナであっても、どの船会社を利用しているかによって課される金額に差が出ることがあります。事前に契約条件を確認しておくことが重要です。
2. コンテナや貨物の種類
20フィートや40フィートといったコンテナのサイズ、またはコンテナの種類によっても料金は変動します。たとえば、冷凍・冷蔵貨物を運ぶリーファーコンテナの場合、冷却機能を維持するために電力を継続して供給する必要があることから、通常のドライコンテナに比べて保管コストが高くなります。そのため、フリータイムも短く、Demurrageも高額に設定されているケースが多く見られます。
3. フリータイムを超過した日数
フリータイムを1日過ぎた時点で即課金されるわけではなく、段階的に料金が上がっていく「累進課金制」を採用している船会社が一般的です。たとえば、最初の数日間は比較的安価でも、4日目以降や1週間を過ぎた頃から急激に金額が上がる仕組みになっていることもあります。結果的に、放置期間が長くなると1コンテナで数万円〜十数万円に達することもあり、コストインパクトは決して小さくありません。
このように、Demurrageの金額は複数の要因に左右されるため、輸入貨物のスケジュールやコンテナの種類に応じて、事前の確認と対応が不可欠です。
Demurrageを回避するポイント
では、どうすればこのDemurrageという予想外の出費を防げるのでしょうか?
以下の対策を意識することで、リスクを大きく減らすことができます。
1. フリータイムの日数を把握する
まず最も重要なのは、自社が使っている船会社のフリータイムを正確に把握することです。
会社や航路によって異なるため、輸入スケジュールを立てる際に必ず確認しておきましょう。
2. 通関スケジュールを逆算する
通関に必要な書類や手続きを事前に整えておき、コンテナ到着と同時に申告ができる体制を整えることが重要です。
3. 社内外の連携を強化する
物流部門・通関業者・配送会社など、関係するすべてのプレイヤーとタイムリーに情報共有し、責任の所在が曖昧にならないようにすることが大切です。
4. 予備日を考慮したスケジューリング
何らかの理由で遅れる可能性を見越し、1~2日余裕を持ったスケジュールを組むと安心です。
5. 有料延長の活用も視野に
どうしても遅れることが事前にわかっている場合、フリータイムの延長(有料)を申請することが可能な場合もあります。早めの相談がポイントです。
まとめ
Demurrageは、ちょっとした油断や手配の遅れによって簡単に発生してしまう物流コストのひとつです。港にコンテナを長期間置いたままにしておくとDemurrageが課されるため、速やかにコンテナを引き取れる体制を整えることが、輸入業務において重要です。
船社ごとのフリータイムをしっかりと把握し、無駄なコストを抑えた効率的な搬出手配を心がけましょう。