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物流の現場では、製品を「安全に」「確実に」目的地まで届けることが求められます。そのために欠かせないのが荷崩れ防止の対策です。今回ご紹介する「ラッシング」は、まさにそのための重要な技術です。物流初心者の方にもわかりやすく、ラッシングの基本と活用方法をご紹介します。
ラッシングとは?
ラッシングとは、トラックやコンテナに積んだ貨物が移動中に動いたり崩れたりしないよう、ワイヤーやロープ、ラッシングベルトなどで固定する作業のことを指します。
また、海上輸送の現場では、コンテナを船にしっかりと固定することも「ラッシング」と呼びます。目的はどちらも同じで、「輸送中の揺れや振動から貨物を守ること」です。
なぜラッシングが必要なのか?
輸送中の車両や船は、ブレーキ、カーブ、波などで想像以上に揺れます。この揺れで貨物が動くことで、以下のトラブルが発生する可能性があります。
・荷物の破損
輸送中に荷物が倒れたり、他の荷物とぶつかったりすると、中身が破損してしまう可能性があります。特に精密機器やガラス製品などは、少しの衝撃でも故障や破損の原因になります。
・他の荷物への損傷
一つの荷物が倒れたり滑ったりすると、周囲の貨物にも影響を及ぼします。 domino(ドミノ)効果のように被害が広がることもあります。
・作業員のケガ
輸送中に固定が甘いと、荷物が不意に動いてトラックの扉を開けた瞬間に落下することもあります。荷役作業中の事故を防ぐためにも、しっかりとしたラッシングは欠かせません。
・輸送効率の低下やトラブル
荷崩れが起きた場合、再積み込みや点検、クレーム対応などに時間と労力がかかります。結果的に納期遅延や信頼低下にもつながる可能性があります。
ラッシングに使われる主な道具
ラッシングに使われる資材は、貨物の重さや輸送手段によって適切に選ぶ必要があります。
・ラッシングベルト
ベルト状の強化ナイロンやポリエステルでできた資材で、荷物をしっかりと締め付けるのに使われます。ラチェットという金具で締め付け具合を調整できるため、重量物の固定にも適しています。最も広く使われている道具です。
・ロープ
比較的軽量な荷物や、一時的な固定に使われます。伸縮性があるため、しっかりと結び方を理解していないと荷崩れの原因にもなるため注意が必要です。
・ワイヤー
金属製のワイヤーは耐久性と強度に優れており、重たい機械や大型部品などの輸送時に使われます。ベルトよりも緩みにくいため、しっかり固定したい場面で使われます。
・チェーン
鉄製で、最も頑丈な固定資材です。特にコンテナや建設機械などの非常に重い貨物の固定に用いられます。扱いには注意が必要ですが、耐荷重性に優れています。
現場でよくあるラッシングの例
・トラック輸送でのラッシング
家具や大型家電、建材などをラッシングベルトで固定します。荷台の側面や床面に取り付けられたフックにベルトを通してしっかりと締め、走行中の揺れやブレーキによる前後移動を防ぎます。
・海上輸送でのラッシング
海上コンテナは、波や風の影響で大きく揺れるため、コンテナ同士を「ツイストロック」と呼ばれる金具やワイヤーで連結し、船体にも固定します。コンテナが船上で動くと大事故につながるため、ラッシングは非常に厳重に行われます。
・航空輸送でのラッシング
航空機は短時間で高速移動するため、貨物に対する固定も厳密です。ラッシングネットや専用のベルトを用い、機体の傾きや振動に耐えられるようにします。荷物が機内で移動するとバランスが崩れ、安全に支障が出る恐れがあるため、慎重な作業が求められます。
ラッシングの注意点
ラッシングを進める中でいくつかの注意点があります。ここでは3つの注意点について紹介します。
1. 荷物の形状に合った固定方法を選ぶこと
例えば、段ボール製品には強く締めすぎると破損してしまうことがあります。荷物の材質・形状・重さに応じて最適な道具と固定方法を選ぶことが重要です。
2. 固定する力が強すぎても、弱すぎてもNG
ラッシングベルトを締めすぎると荷物に圧力がかかり、破損の原因になります。一方、緩すぎると固定の意味がありません。適度な力加減が求められます。
3. 定期的に点検すること
長距離輸送中に、振動や温度変化でラッシングが緩んでしまうことがあります。休憩や荷降ろしのタイミングでラッシングの状態を確認し、必要に応じて再調整することが大切です。
まとめ
ラッシングは、物流の安全性を支える重要な作業です。製品を壊さずに届けるという、当たり前のようで難しいミッションを実現するために、現場では欠かせない存在となっています。
製品そのものの品質はもちろんですが、その品質を損なうことなく、確実に届けるための「輸送品質」も企業の信頼を左右する重要な要素です。
ラッシングの知識と意識を持つことが、安全・安心な物流体制づくりの第一歩となることでしょう。