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国際物流の世界では、海上コンテナがグローバルな貨物輸送の主役として重要な役割を果たしています。その中で頻繁に登場するのが「TEU」という単位です。この言葉は、港湾業務や国際輸送の場面だけでなく、物流戦略を考える上でも重要なキーワードとなっています。
本記事では、TEUの基本的な意味から、どのように使われているか、そして物流業界での実務的な活用例までを、わかりやすく解説します。
TEUとは何か?
TEUは、「Twenty-foot Equivalent Unit(20フィート換算単位)」の略称で、国際標準サイズの20フィートコンテナ1本分を1単位として数える方法です。つまり、コンテナの量や輸送能力を示すための「換算単位」です。
実際の輸送では、20フィートよりも大きなサイズのコンテナ(たとえば40フィート)がよく使われますが、それらも20フィート換算にして数えます。例えば40フィートコンテナ1本は、TEUで表すと「2TEU」となります。
このように、TEUはコンテナのサイズや本数がバラバラな現場でも「統一的に数量を比較・把握できる指標」として機能しています。
なぜTEUが必要なのか?

物流業界では、輸送能力や貨物量を定量的に把握し、港湾設備・輸送船のキャパシティを管理する必要があります。しかし、コンテナには複数のサイズがあり、それらをそのまま単純に本数で数えると、正確な輸送量の比較が難しくなります。
たとえば、ある港湾で以下のような貨物を取り扱っていたとします:
- 20フィートコンテナ × 500本
- 40フィートコンテナ × 300本
単純に本数を合計すると800本ですが、40フィートコンテナは20フィートの2倍の容量があります。そこで、40フィートコンテナを「2TEU」と換算すると、以下のようになります:
- 20フィートコンテナ × 500本 → 500TEU
- 40フィートコンテナ × 300本 → 600TEU
- 合計:1,100TEU
このようにTEUで換算することで、実際の物流量をより正確に把握することが可能になります。
TEUの具体的な利用シーン

TEUは、物流業界の中で様々な場面で活用されています。以下はその一例です。
1. 港湾の処理能力の把握
港湾やターミナルでは、年間に取り扱うコンテナの量をTEUで表現します。たとえば「年間300万TEU処理可能」という表現は、「20フィートコンテナ換算で300万本分の貨物を取り扱える能力がある」という意味になります。
このようにTEUは、港湾インフラの計画や改善、国際比較にも利用されます。
2. 船会社の輸送能力
海運会社が保有するコンテナ船の輸送能力も、TEUで示されます。大型のコンテナ船では、20,000TEUを超える輸送能力を持つ船もあります。
これにより、航路の輸送能力や積載効率の管理ができ、物流計画やコスト管理に大きく貢献します。
3. 輸出入実績の指標
国別の輸出入データもTEUベースで集計されることが多く、「〇〇国向けに年間50万TEU輸出」といった形で表されます。これは貿易の規模や動向を把握するための重要なデータであり、マーケティングや国際戦略立案にも使われます。
昨今の物流業界におけるTEUの活用
世界的なサプライチェーンの変化や、EC市場の拡大、脱炭素社会への対応など、物流業界は大きな転換期を迎えています。その中で、TEUという単位もさらに重要性を増しています。
グローバル物流網の最適化
近年、世界的に「ジャストインタイム」から「レジリエンス重視」の物流へと流れが変化しています。これにより、どの国・地域でどれだけの貨物が動いているかを定量的に把握することが重要になっています。
TEUベースで輸送量を可視化することで、拠点の統廃合、倉庫の再配置、航路の見直しなど、グローバルな物流戦略に貢献しています。
サステナビリティとTEU
また、脱炭素化が求められる中で、輸送効率の可視化にもTEUは役立っています。たとえば、1TEUあたりのCO2排出量を計算し、環境負荷の少ない輸送手段を選定する際の基準になります。
環境指標としてのTEUの活用は、今後さらに進むと見られており、物流のグリーン化とTEUは密接な関係にあります。
TEUと物流現場の課題
TEUは便利な単位ではありますが、実貨物量とのギャップが生じます。TEUはあくまでコンテナの大きさの指標であって、実際の重量や貨物の内容までは反映されません。つまり、同じ1TEUでも中に詰められている荷物の重さや体積は異なる可能性があります。
そのため、積載率(どれだけの空間を有効に使っているか)や重量管理など、別のデータと組み合わせて分析することが重要です。
まとめ
TEUは、国際物流における「見える化」の基盤となる単位です。コンテナサイズが異なっても、共通の尺度で比較・管理できるため、輸送計画・港湾管理・環境評価・国際比較など、さまざまな場面で使われています。
物流の全体像を理解するうえで、TEUは単なる数値ではなく、「物流の構造そのもの」を映し出す重要な概念です。今後も、物流がより複雑化・多様化する中で、TEUの役割はさらに広がっていくでしょう。