1類倉庫とは?10分で解説

企業の生産や流通を支える「物流」の現場では、さまざまな種類の倉庫が活用されています。中でも、「1類倉庫」は、汎用性が高く、多種多様な貨物を保管できることから、多くの物流拠点で重要な役割を担っています。

この記事では、「1類倉庫」とはどのような倉庫なのか、その特徴やメリット、制限事項、そして昨今の物流業界における活用状況まで、わかりやすく解説します。

倉庫業における「類」とは?

まず、「1類倉庫」の「1類」とは何を指すのでしょうか。

日本の「倉庫業」は、国の法律(倉庫業法)に基づき、一定の条件を満たした施設が「営業倉庫」として登録され、営業活動を行うことができます。この営業倉庫は、保管する貨物の種類や倉庫の構造に応じて、以下のように「類」に分類されています。

  • 1類倉庫(汎用倉庫)
  • 2類倉庫(湿気や温度に弱い貨物向け)
  • 3類倉庫(冷凍・冷蔵設備を持つ)
  • 貨物の性質に応じた特殊倉庫(危険物倉庫など)

この中でも「1類倉庫」は、いわばスタンダードなタイプ。さまざまな貨物の保管に対応できる、高い機能と柔軟性を備えた倉庫です。

1類倉庫の特徴とは?

多くの貨物に対応可能な汎用性

1類倉庫は、建物の構造や設備が高水準で設計されており、温度や湿度などの管理も一定レベルで対応できます。食品や電子部品、衣料品、医薬品の一部など、多様な業界の貨物が保管可能です。

ただし、「冷凍・冷蔵が必要な貨物」や「危険物に該当する貨物」は対象外となります。これらはそれぞれ専用の設備や安全基準が必要なため、1類倉庫では取り扱いができません。

高い構造基準

1類倉庫として認められるためには、耐火性や防湿性、防鼠(ぼうそ:ネズミ侵入防止)など、厳しい基準をクリアしている必要があります。また、荷物の出し入れをスムーズに行える搬出入設備や、フォークリフトの導線を考慮した設計など、現代の物流ニーズにも対応しています。

保管できるもの・できないもの

保管可能な例

  • 一般的な食品(常温保管)
  • 家電製品
  • 書籍や紙製品
  • 衣類
  • 医薬部外品

保管できない例

  • 冷蔵・冷凍が必要な食品(要冷温管理)
  • 可燃性・引火性の化学薬品(危険物)
  • 高圧ガスなどの特殊な取扱いが必要な製品

このように、1類倉庫は「高性能だけれど、万能ではない」倉庫です。安全や品質管理の観点から、保管できる品目には一定の制限があります。

他の類との違いとは?

たとえば、冷蔵機能を備えた「3類倉庫」や、危険物専用の「危険物倉庫」は、専用設備を持ち、保管する貨物の性質に応じて細かな管理が必要です。

それに対して、1類倉庫はそのような専門機能を備えていない代わりに、広く多様な貨物に対応できる「オールラウンダー」として機能しています。多くの企業がまず初めに活用を検討する倉庫タイプともいえるでしょう。

物流業界での活用例

1. EC物流センターでの活用

近年、EC(電子商取引)市場の拡大に伴い、日用品やアパレルなど幅広い商品を扱う物流センターでは、柔軟性のある倉庫が求められています。1類倉庫は、温度管理までは不要だが、ある程度の清潔さと構造強度が求められる商品をまとめて保管・出荷できるため、EC業界での採用が進んでいます。

2. 医薬品や化粧品メーカーの中継拠点

医薬部外品や化粧品は温度や湿度に対する一定の配慮が必要ですが、冷蔵までは必要ない場合がほとんど。そのため、1類倉庫が中継・保管の拠点として使われています。

3. BCP(事業継続計画)対策としての拠点保管

自然災害やパンデミックのリスクに備え、サプライチェーンの寸断を防ぐ目的で、分散型保管を採用する企業が増えています。その際、対応力の高い1類倉庫は、BCPの観点からも重要な役割を果たしています。

1類倉庫の今後の動向

近年では、AIやIoT技術を活用して、1類倉庫内の在庫状況をリアルタイムで把握したり、自動搬送ロボット(AGV)を導入するケースも増えています。

また、持続可能性への取り組みとして、太陽光発電や省エネ設備を取り入れた「グリーン倉庫」としての活用も注目されています。

さらに、外部委託の需要増により、企業が自社で保管せず、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)企業に委託する中で、柔軟性の高い1類倉庫はますます重要な存在となっていくと見られています。

まとめ

1類倉庫は、ハイグレードな構造と高い保管能力を持ちながらも、特別な保管条件を必要としない多くの貨物に対応できる、非常に汎用性の高い倉庫です。

冷蔵倉庫や危険物倉庫など、専門性の高い施設には対応できないという制約はあるものの、日々の物流業務において最も多く利用される倉庫タイプのひとつとして、物流業界を支えています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)やサステナビリティ、BCPなど、企業を取り巻く環境が複雑化する中で、柔軟に対応できる1類倉庫の価値は今後ますます高まっていくでしょう。

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