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私たちの生活を支える「物流」。そのなかで欠かせないのが「倉庫」の存在です。一言で倉庫といっても、その種類は多岐にわたり、用途や建物の性能によって区分けされています。
この記事では、倉庫の中でも「2類倉庫」と呼ばれるタイプに焦点を当てて、概要から特徴、活用事例までをわかりやすく解説します。特に最近、物流業界や製造業でどのように2類倉庫が活用されているのかを理解することで、自社の物流戦略にも役立つヒントが見つかるかもしれません。
2類倉庫とは何か?
「2類倉庫」は、正式には「営業倉庫」と呼ばれる分類の中の一つです。営業倉庫とは、他社の貨物を預かり、保管料を受け取る倉庫のことで、国土交通省が定めた基準に基づき登録・運営されています。
その中で「2類倉庫」は、比較的高い安全性が求められる品物を保管するための倉庫ですが、建物自体に防火・耐火の厳しい基準は設けられていません。このため、保管できる品物の種類には一定の制限があります。
倉庫の分類について
営業倉庫には主に以下のような分類があります:
- 1類倉庫:最も厳しい構造基準を満たしており、可燃性のある品目や化学薬品なども保管可能
- 2類倉庫:構造基準は1類倉庫より緩やか。非危険物かつ常温で保管できる一般的な物品が対象
- 3類倉庫:冷蔵・冷凍など温度管理が必要な品目向け
2類倉庫は、この中でも「防火・耐火構造ではない」という特徴を持ち、火災などに対する構造的な強度が1類倉庫よりも劣るため、より危険性の低い品目が対象になります。
どんな品物が保管されるのか?

2類倉庫に適しているのは、主に以下のような品目です。
- 紙製品(書籍、段ボールなど)
- 日用品(洗剤、雑貨など)
- アパレル製品(衣類、靴、バッグなど)
- 非可燃性の梱包済み製品
- 家電製品(小型で可燃性の低いもの)
逆に、化学薬品、可燃性液体、スプレー缶、引火性のある原料などの危険物は保管できません。 これらの品目を取り扱う場合は、防火・耐火構造が義務付けられている1類倉庫が必要です。
建物構造と安全性の違い
2類倉庫は、「火災に対する構造的な強度が不要」とされているため、建物自体は一般的な鉄骨造や木造などでも許可されます。ただし、だからといって安全管理が軽視されるわけではありません。
荷物の保管・出荷・管理には、以下のような基本的な安全対策が求められます
- 消火器や火災報知器などの設置
- 荷物の積み方・保管方法のルール化
- 換気や通路の確保など、作業員の安全に配慮した設計
構造の制限が緩やかな分、運用面での安全管理がより重要になります。
なぜ2類倉庫が必要なのか?

物流コストや保管効率を考えたとき、「必ずしもすべての品物を1類倉庫に入れる必要はない」という考え方があります。
例えば、以下のような状況であれば、建物コストや運用コストの面で、2類倉庫の方が効率的とされます。
- 保管する品物が危険物ではない
- 火災のリスクが極めて低い
- 長期保管の必要がない
- 一時的な在庫保管やシーズン商品の管理
コストと用途のバランスを考慮したとき、2類倉庫は現実的かつ柔軟な選択肢として重宝されます。
昨今の物流業界における2類倉庫の活用
近年、2類倉庫のニーズは以下のような背景で高まっています。
1. EC(ネット通販)の拡大
アパレルや雑貨、書籍など、比較的リスクの低い商品を扱うEC業界では、スピーディーな在庫保管と出荷が求められます。 こうした商品群は、2類倉庫での保管に非常に適しています。
倉庫側でも自動化されたピッキングシステムや在庫管理システムを導入することで、スムーズな物流オペレーションが実現しています。
2. サテライト倉庫・中継拠点としての利用
都市部の配送効率を高めるために、大型倉庫から小規模な2類倉庫へ荷物を一時的に移す「中継拠点」として活用するケースが増えています。これにより、エンドユーザーへの配送リードタイムを短縮することが可能になります。
3. 物流2024年問題への対応
トラックドライバーの労働時間規制により、配送スケジュールの見直しが求められているなか、輸送拠点の分散化や在庫の前倒し保管が重要視されています。 この流れを受け、初期投資を抑えつつ柔軟に運用できる2類倉庫が注目されています。
他の倉庫との使い分けがカギ
多くの物流会社やメーカーでは、1類倉庫と2類倉庫を上手に組み合わせて使い分けています。例えば以下のような運用が一般的です:
- 1類倉庫:化学薬品、アルコール、スプレー缶などの保管
- 2類倉庫:家電、紙類、衣類、雑貨などの保管
- 3類倉庫:食品や生鮮品の保管
すべての品物を1つのタイプの倉庫で管理しようとすると、コストがかさむだけでなく、スペースの無駄遣いにもなりかねません。保管する商品の特性に応じた最適な倉庫の選択が、現代の物流戦略では重要なポイントです。
まとめ
2類倉庫は、「高コストな防火・耐火性能が不要な代わりに、保管できる品物が限定される」という特徴を持っています。そのため、保管品の特性や物流フローの目的に応じて、効率よく活用することが求められます。
特に昨今のように物流業界全体が変化している中で、2類倉庫は「コストを抑えながら、スピーディーかつ効率的な物流を実現する手段」として、ますます重要な役割を担っています。
今後、自社の物流戦略や在庫管理の見直しを検討する際には、2類倉庫の活用を選択肢に加えることで、より柔軟な体制づくりが可能になるでしょう。