【業界ニュース】置き配が“標準”に
──宅配の新ルールが物流現場にもたらす変化とは 

宅配便の“当たり前”が変わる!?──置き配が標準、手渡しは有料へ

2025年6月、国土交通省が発表した新たな方針が、物流業界内外に大きな波紋を広げています。 

その内容は、「宅配便の基本ルールとして置き配を標準化し、従来の対面手渡しは有料オプションへ移行する」というもの。 

これにより、長らく“無料で当然”とされてきたサービス体系が見直され、宅配の常識が大きく変わろうとしています。 

なぜ今、置き配を「標準」にするのか? 

背景にあるのは、深刻なドライバー不足と、なかなか改善しない再配達率です。 

国交省は再配達率を「6%以下」に抑えるという目標を掲げていますが、直近では全国平均が約11%。目標にはまだ届いていません。 

特に都市部では、オートロック付きマンションなどでの対応に時間がかかり、1件あたり10分以上を要するケースも。 

こうした非効率な状況が続けば、宅配現場の負担は増す一方です。 

置き配を標準とするのは、再配達を前提としない配送モデルへの移行を意味します。持続可能な物流インフラを再構築するための一手として、今回の制度改正が進められています。 

制度変更がもたらす、物流の現場への4つのインパクト 

再配達件数の大幅な削減 

置き配が当たり前になれば、再配達そのものが不要になります。 

2023年度の宅配便取扱個数は約50億7,000万個、再配達率は約11%とされており、再配達は年間でおよそ5億5,000万件にのぼると推計されています。 

これは人件費や燃料費を含め、物流全体にとって極めて大きな損失です。 

「一度で完了する配送」が常態化すれば、ドライバーの時間的・心理的負担も大きく軽減されるでしょう。 

配達効率の向上と労働環境の改善 

1件ごとの配達所要時間が短縮されれば、1人あたりが対応できる件数が増加します。 

これは長時間労働の抑制だけでなく、新たな人材の参入ハードルを下げる効果も期待できます。 

サービスの明確化と選択肢の拡張 

手渡しが有料になることで、「置き配を選ぶか」「追加料金を払って対面を希望するか」という選択の自由が生まれます。 

物流サービスを“選べるもの”として設計し直すことで、価格と品質のバランスを利用者が主体的に判断できるようになるでしょう。 

トラブル対策の重要性が増す 

一方で、置き配にはリスクも伴います。 

盗難、誤配、雨濡れなどのトラブルを防ぐため、以下のような取り組みが進んでいます。 

・配達完了時の写真撮影・通知機能 
・宅配ボックスや鍵付きバッグの活用 
・配送保険の整備と補償範囲の明確化 

制度と並行して、安心して利用できる仕組みづくりが不可欠です。 

消費者の“不安”とどう向き合うか 

※イメージ写真です

現状、多くの人にとって「置き配=不安」という印象は根強く残っています。 

・盗難時の責任はどこにあるのか 
・誤配や破損があった場合の対応は? 
・雨天時の荷物保護はどうするのか 

こうした懸念に対しては、宅配事業者・ECサイト・物件管理側が連携し、明確な運用ルールを整備する必要があります。 

たとえば、集合住宅における置き場所の明示や、規約上の整備なども検討対象となるでしょう。 

 「選べる物流」への転換点

置き配の標準化は単なるルール変更ではありません。 

これは、これまで無償が当たり前だった宅配サービスに、“選ぶ自由”と“支払う責任”をセットで提示する制度的転換です。 

企業にとっては新たな収益源を確保する契機となり、利用者にとっては「自分に合った受け取り方」を選べる利便性が高まります。 

持続可能な物流のために、制度と理解の両輪を 

制度にはメリットもあれば、不安や誤解も伴います。 

大切なのは、「なぜこの制度が必要なのか」「どんな未来を目指すのか」を、きちんと伝え続けることです。 

置き配が当たり前になる社会とは、ドライバーが過剰な負担を背負わず、受け取る側も柔軟に対応できる、双方にとって持続可能な仕組みを指しています。 

まとめ

・置き配の標準化と手渡しの有料化は、再配達の多さや人手不足という構造課題に対応する制度です 

・効率化・働き方改革の面で期待される一方、盗難などへの不安への対応も不可欠です 

・制度だけでなく、現場や生活者の視点を取り入れた柔軟な仕組みが求められます 

ロジパレジャーナルでは、こうした制度変更の背景や現場への影響を丁寧に解説し、実務に役立つ視点を今後もお届けしてまいります。 

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