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物流の現場では、製品や部品、商品などを「いかに効率よく、かつ安全に運ぶか」が常に問われています。そのためには、輸送や保管に使われる資材や器具にも工夫が求められます。
なかでも近年、多くの企業で導入が進んでいるのが「折り畳み式コンテナ」です。運んだ後は小さくたたんで回収できるというこの容器は、物流のムダを削減する有力な手段として注目されています。
本記事では、この折り畳み式コンテナの特徴や使い方、導入メリットについて詳しく解説していきます。加えて、物流業界でよく耳にする「オリコン」という呼び名の背景や注意点についても触れていきます。
「オリコン」とは何か?
「オリコン」という言葉は、物流業界では比較的よく使われる表現のひとつです。しかし、実際には、これは一般名称ではなく、あるメーカーが展開している特定の商品名に由来する言葉です。正式には「折り畳みコンテナ」と呼ばれるもので、商標登録された商品名が、業界内でそのまま通称として使われている状態です。
このように、「オリコン」という名称が広まった背景には、その製品が持つ高い汎用性と利便性があります。現在では多くのメーカーが似た構造の製品を提供しており、汎用語のように扱われることもあります。
ただし、業務文書や契約書類などの正式な場面では、「折り畳みコンテナ」や「折コン」といった一般名称を用いるのが適切です。呼び名に親しみがある一方で、こうした点を理解しておくことも大切です。
オリコンの種類は?

折り畳みコンテナには、用途や業種に応じてさまざまな種類が存在します。単に「畳める」だけでなく、現場のニーズに合わせて設計や仕様が細かく工夫されているのが特徴です。
ここでは、代表的な種類と、各製品に見られる工夫について紹介します。
材質による違い
一般的な折り畳みコンテナは、軽量で取り扱いやすいポリプロピレン(PP)製が多く使われています。耐久性があり、洗浄しやすく、リユースにも向いています。
しかし、使用環境によっては他の材質が選ばれることもあります。たとえば、以下のような例が挙げられます。
- 耐熱性が必要な現場
熱処理工程や食品加工現場では、高温に耐える特殊樹脂を使用した製品が選ばれます。 - 耐薬品性が求められるケース
化学薬品や溶剤を扱う現場では、薬品への耐性がある材質を採用したコンテナが使用されます。 - 静電気対策が必要な電子部品分野
帯電防止加工や導電性樹脂を使用したタイプも存在し、電子部品の保護に役立っています。
蓋付き・蓋なしタイプ
運搬中の内容物の保護や、異物混入・飛び出しの防止といったニーズに応じて、蓋付きと蓋なしのタイプが選ばれます。
- 蓋付きタイプ
ホコリや雨などの外的要因から商品を守りたい場合に適しています。施錠や封印が可能なものもあり、セキュリティ性が求められる現場にも対応できます。 - 蓋なしタイプ
開閉作業が少ない、または頻繁に出し入れする現場で好まれます。作業スピードの向上やコストダウンが期待できます。
また、一体型の蓋付きタイプ(蓋が本体とつながっているタイプ)もあり、蓋の紛失防止や開閉の簡易化にもつながります。
セキュリティ仕様
金融機関の書類回収や、メーカー間の製品サンプルの受け渡しなど、内容物の管理が厳格に求められる場面では、封印機能やロック機構が付いた折り畳みコンテナが使われます。
具体的には、以下のような仕様が見られます。
- 封印タグが取り付けられる穴がある
- ナンバリング付きで管理が容易
- 鍵付きの開閉部を備えたモデル
セキュリティ性の高いタイプは、宅配の集荷箱やリース回収箱としても重宝されています。
オリコンが活用されている現場は?

折り畳みコンテナは、さまざまな業種・業態で活用されていますが、とくに以下のような分野でその利便性が発揮されています。
製造業の部品供給ライン
自動車や家電、機械部品などを扱う製造現場では、複数の協力工場や仕入先から部品を集め、組み立てラインへと供給する仕組みが一般的です。このような場合、折り畳みコンテナが最もよく使われるのが「納品と回収」の工程です。
たとえば、サプライヤーが一定数の部品をこの容器に詰めて納品し、組立ラインで使用された後には空の容器が折り畳まれて回収されます。これにより、運搬時の積載効率が上がり、トラックの積み込み回数や輸送コストを削減できます。
小売・流通業の店舗配送
スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアなど、小売店舗への配送においても、折り畳みコンテナの活用が広がっています。たとえば、センターで商品を仕分け・梱包し、この容器に詰めて店舗へ送るという流れが一般的です。
店舗では中身を棚に陳列した後、空になったコンテナを折り畳んで一時保管。回収便がまとめて持ち帰ることで、効率的な運用が可能になります。
特に都市部の店舗では、バックヤードが狭く、空容器の置き場に苦労するケースも少なくありません。折り畳み可能な容器であれば、省スペース化が図れ、作業動線も確保しやすくなります。
倉庫内のピッキング作業
EC市場の拡大に伴い、多品種・小ロットの商品を迅速に出荷するための物流センターの存在がますます重要になっています。そのなかでも「ピッキング作業」に折り畳みコンテナが活用される場面が増えています。
作業員が棚から商品を取り出してコンテナに入れていく「摘み取り方式」のピッキングや、一度に複数のオーダーを処理する「種まき方式」など、いずれの方法でも一時保管の容器として適しており、作業後には折り畳んで収納できる点が重宝されています。
また、コンテナにバーコードやQRコードを貼付して管理することで、どの注文にどの商品が対応しているのかが一目でわかるようになり、誤出荷やピッキングミスの防止にも役立ちます。
折り畳み式コンテナの導入メリット
折り畳み式コンテナは、物流現場においてコスト削減・作業効率の向上・環境配慮という三つの面で大きなメリットを発揮します。使用後に小さく折り畳めることで、空容器の回収時に必要な輸送スペースが削減され、運搬コストの抑制につながります。
また、軽量で持ち運びやすく、展開・収納もスムーズなため、作業者の負担を軽減し、現場の作業効率も向上します。加えて、繰り返し使える構造は廃棄物の削減にも貢献し、環境への配慮が求められる今の時代に合った資材と言えるでしょう。
このように、折り畳み式コンテナは経済性と実用性、そしてサステナビリティを兼ね備えた、現代の物流に欠かせない存在となっています。
オリコン導入の際に注意すべき点
折り畳み式コンテナは長期的にコスト削減が見込める一方で、初期導入費が高めな点には注意が必要です。段ボールのような使い捨て資材と比べて単価が高く、一定量をまとめて導入する場合は初期投資がかさむため、費用対効果を見込んだ計画的な導入が求められます。
また、繰り返し使うためには、回収・保管・洗浄といった運用体制が整っていることが前提です。配送先での管理ルールが曖昧だと、紛失や回収漏れが起こりやすく、逆に運用コストが増えてしまうこともあります。関係部門や取引先との連携が重要です。
さらに、コンテナのサイズや仕様が自社の棚や搬送設備と合わないケースもあるため、導入前に現場とのすり合わせが欠かせません。現場の作業環境や物流フローとマッチした製品を選ぶことが、スムーズな活用につながります。
今後の展望と業界動向
近年、物流の現場では自動倉庫やロボットによる仕分けが普及しており、それに対応した「自動化対応コンテナ」の需要が増えています。自動搬送機と連携できる構造や、センサー付きのスマートコンテナなど、テクノロジーと一体化した製品の開発も進んでいます。
また、環境配慮の観点から「リサイクル樹脂」を使った製品も増えており、今後はより高機能かつエコな折り畳みコンテナの登場が期待されます。
まとめ
折り畳み式のコンテナ、いわゆる「オリコン」は、物流業界において欠かせない存在となっています。省スペース性や輸送効率の高さ、作業のしやすさなど、さまざまな利点を持ち合わせており、導入企業の多くがその利便性を実感しています。
今後も、物流の効率化・省人化・環境対応が求められる中で、こうしたコンテナの役割はますます大きくなっていくことでしょう。