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倉庫や物流センターでは、限られたスペースの中でいかに効率よくモノを保管・管理するかが重要です。そんな中で注目されているのが「移動棚」です。スペースの有効活用が求められるなか、多くの企業が自社のニーズに合わせた移動棚の導入を検討・実施しています。
この記事では、「移動棚とは何か」「どのような仕組みで動くのか」「どんなメリットがあるのか」などを、10分でわかるボリュームでわかりやすく解説していきます。
移動棚とは?固定棚との違い
通常の棚は床に固定されており、作業者が通るための通路を棚の間にあらかじめ確保しておく必要があります。しかし、この通路は常に使っているわけではなく、保管効率を下げる原因にもなっています。
一方、移動棚は棚自体がスライドして動く構造を持っており、必要なときだけ通路を作ることができます。通常は棚同士を密着させて設置しておき、荷物の出し入れを行うときにだけ、対象の棚を横に動かして通路を開ける仕組みです。これにより、保管スペースを従来よりも大幅に増やすことができます。
移動棚の種類

移動棚の特徴は、棚が床に敷かれたレール上を横方向に動く点にあります。直線的に水平移動するため、動作はシンプルで故障リスクも低く抑えられています。
大きく分けると、次の2タイプがあります。
電動式移動棚
中型〜大型のラックに対応するのが電動式のタイプです。モーターを内蔵し、スイッチやタッチパネルを使って操作します。重量のある製品や大量の在庫を扱う現場で重宝されており、安全装置やセンサーが搭載されていることも多く、人が棚の間にいるときは動かないようになっています。操作の省力化により、作業者の負担軽減にもつながる点が大きな特徴です。
また、定位置に自動で戻す機能などを備えている製品もあり、誤操作やトラブルを防ぐ工夫が施されています。
手動式移動棚
軽量でコンパクトなタイプの棚は、手動で操作できるものが主流です。取っ手を回すことで棚を動かす方式が一般的で、小規模な倉庫や書類保管スペースなどでよく使われています。導入コストも比較的安く、限られたスペースでも導入しやすいのが魅力です。電源工事が不要なため、レイアウト変更や移設も容易で、短期間の利用にも向いています。
ただし、頻繁に動かす用途では作業負担が大きくなる可能性があるため、使用頻度とのバランスを考慮して選ぶことが重要です。
移動棚導入のメリット
移動棚にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは3つのメリットについて紹介します。
1. スペースの有効活用
最大のメリットは、なんといっても保管効率の向上です。常設の通路が不要になることで、同じ床面積でもより多くの商品を収納できます。特に都市部の高コストな倉庫では、わずかな空間の有効利用がコスト削減に直結します。
導入によって、新たな保管棚を追加することなく在庫量を増やせるため、設備投資の抑制にもつながります。
2. 保管環境の整備がしやすい
棚同士を密閉に近い状態で配置できるため、湿気やホコリの侵入もある程度防げます。文書や医薬品など、環境管理が必要なアイテムの保管にも向いています。
さらに、棚間の風通しを最小限に抑えることで、保管エリアの温度や湿度が安定しやすくなり、空調環境の効率化につながるケースもあります。
3. 盗難・紛失リスクの低減
移動棚の中でも電動式のタイプには、棚の動作を制御する機能が搭載されていることが多く、特定の担当者のみが操作できるよう設定することが可能です。必要なときにだけ通路を開ける構造は、セキュリティ面でも一定の効果があります。
さらに、操作履歴の記録機能が備わっているモデルでは、作業のトレーサビリティを確保しやすくなり、不正なアクセスの抑止や管理体制の強化にもつながります。
移動棚導入にあたっての注意点

一方で、移動棚導入にあたっての注意点もあります。ここでは主な3つの注意点を解説します。
1.設置工事と床補強の必要性
まず、移動棚を導入するには、棚が移動するためのレールを床に設置する必要があります。このため、必ず設置工事が発生し、施工期間の確保や業務への影響を考慮することが求められます。
さらに、レールの荷重を支えるために床の強度が不足している場合には、床の補強工事が必要になるケースもあります。古い建物や二重床の施設では、事前に構造調査を行うことが重要です。
2.電動式導入時の安全対策とメンテナンス
電動式の移動棚を採用する場合、電源の確保が必須となるほか、定期的な点検やメンテナンスも欠かせません。機械的な構造である以上、長期的な使用に備えて保守体制を整える必要があります。
また、人が棚の間にいるときに誤作動が起きると、事故やけがにつながる恐れもあるため、安全センサーの設置や緊急停止装置の導入が推奨されます。操作マニュアルの整備や作業者への教育も、安全な運用のために重要です。
3.手動式の運用負担と選定時の注意点
手動式の移動棚は電源を必要とせず、導入や設置が比較的簡単な点がメリットです。しかし、頻繁に棚を動かす必要がある業務では、作業者の身体的負担が大きくなることがあります。特に重量物を多く扱う現場や、高頻度でアクセスするエリアでは、操作の手間が作業効率に影響する場合もあります。そのため、使用頻度や保管物の性質に応じて、手動式と電動式のどちらが適しているかを慎重に見極めることが大切です。
今後の展望とトレンド
EC市場の成長や多品種少量生産の増加により、物流現場ではより多くの商品を、より効率的に保管・管理する必要が高まっています。この流れのなかで、移動棚はますます注目される存在となっています。
最近では、IoTと連携して、在庫のデジタル管理と連動するスマート移動棚も登場しています。棚が動くだけでなく、どの棚に何があるかをリアルタイムで把握できるようになってきており、より高度な在庫管理を実現させています。
また、省エネ設計の電動棚や、AIを活用した最適配置提案など、今後はさらなる進化が見込まれています。
まとめ
移動棚は、限られたスペースを最大限に活用しながら、安全性と作業効率を両立できる設備です。固定棚では実現できない柔軟なレイアウトと高い収納力により、物流・製造・医療など多くの分野で導入が進んでいます。
移動棚を導入する際は、電動式か手動式かにかかわらず、自社の業務や保管物の特性に合ったタイプを選定することが大切です。もし今後、倉庫内のスペースが足りない、あるいは保管効率を上げたいという課題を抱えているなら、移動棚の導入を一度検討してみてはいかがでしょうか。