先入れ先出しとは?10分で解説

2025.09.26

物流や製造の現場では、在庫をどう管理するかが業務効率や品質保持に大きく影響します。特に出荷の順序管理は、顧客満足度やコスト削減と直結する重要な要素です。その中でも基本かつ普遍的な考え方として知られているのが「先入れ先出し」。
これは、先に倉庫へ入ってきた商品から順番に出荷していく方法で、古い在庫が滞留するのを防ぎます。食品や飲料のように期限管理が必要なものだけでなく、工業製品や部品など幅広い分野で採用されています。

この記事では、先入れ先出しの意味、メリット、具体的な現場での運用方法、そして近年の物流業界での最新活用事例までを、物流初心者にもわかりやすく解説します。

📌 ポイントはここ
  • 古い在庫から出荷:入荷順に商品を出し、品質劣化や期限切れを防ぐ。
  • 保管方法と動線設計:古い在庫を取り出しやすい棚配置や流動ラックを活用し、入荷順に在庫が消化される仕組みを整える。
  • 表示・システム管理の徹底:ラベルやシステムで入荷日・期限を明確化し、出荷ミスを防止。

先入れ先出しの基本的な考え方

先入れ先出しは、「入荷順に出荷・使用する」という単純明快なルールです。
たとえば、2025年8月1日に入荷した製品Aと、8月10日に入荷した同じ製品Aがある場合、まずは8月1日に入荷した分から出荷します。
この方法によって、古い在庫が倉庫に残り続けることを防ぎ、品質の劣化や廃棄のリスクを下げられます。

一方で、対義語として「後入れ先出し(LIFO)」があります。これは、後から入荷した在庫から先に出荷する方法で、原材料価格が変動する業界や特殊な工程で用いられる場合もありますが、日本国内の物流や製造ではほとんどのケースで先入れ先出しが採用されています。

先入れ先出しを取り入れる効果とは?

先入れ先出しを徹底することで、どのような効果が生まれるのでしょうか?ここでは3つの効果について解説します。

1. 品質保持

時間の経過によって品質が低下する商品は多く、特に食品、医薬品、化学品などは厳密な期限管理が求められます。
古い在庫から出荷すれば、製品の鮮度や有効性を最大限保ったまま顧客に届けられます。

例えば、冷蔵品や冷凍品では保管温度だけでなく保管期間も品質に影響するため、入荷順に出荷することが不可欠です。
結果として、クレームや返品のリスク低減にもつながり、ブランドへの信頼性を維持できます。

2. 廃棄ロス削減

賞味期限切れや品質劣化による廃棄は、販売機会の損失に加えて廃棄コストも発生します。
先入れ先出しを徹底すれば、期限切れ在庫を最小限に抑えられます。
これは食品業界だけでなく、部品や資材を扱う製造業でも重要で、長期保管によるサビや変形を防ぐ効果もあります。

廃棄量が減れば環境負荷の低減にも貢献でき、企業のCSR活動としても評価されやすくなります。

3. 在庫の鮮度維持と回転率向上

古い在庫を残さずに出荷することで、常に倉庫内の在庫が新しい状態に。
これにより、回転率(在庫が売れるスピード)が高まり、資金効率も改善されます。

在庫回転が速いと、倉庫スペースを有効活用でき、過剰在庫による保管費用の増大も防げます。
また、市場のニーズ変化にも柔軟に対応できるため、販売機会を逃しにくくなるでしょう。

現場で先入れ先出しを実践するポイント

実際の倉庫現場では、先入れ先出しがどのように実践されているのでしょうか。
先入れ先出しを行う上での大事なポイントについて解説します。

1. 保管場所の工夫

倉庫レイアウトは、先入れ先出しが自然に行えるよう設計することが重要です。
入荷口と出荷口を分け、棚の手前に古い在庫、奥に新しい在庫を配置する仕組みを整えましょう。

パレットや棚を「流動ラック」にし、先入れ側から投入、先出し側から取り出す方式を採用すると、作業者が迷わず古い在庫を取り出せます。
こうした動線設計はピッキングスピードを向上させ、出荷ミスの防止にもつながります。

2. ラベル・日付管理

在庫ごとに入荷日・ロット番号・賞味期限を明記します。
手書きラベルでも対応可能ですが、バーコードやQRコードを印字すれば読み取りや検索が容易です。
特に期限が近い在庫には目立つ色のラベルを貼り、視覚的に優先順位がわかるよう工夫すると現場作業がスムーズに進みます。

その結果、新人スタッフや応援要員でも短時間で正しい順番の在庫を選びやすくなります。

3. システム連動

WMS(倉庫管理システム)を導入し、入荷日や期限をデータで管理します。
出荷指示時に古い在庫が自動的に選ばれる設定をしておくと、作業者の負担が減り、ミスも防げます。

さらに、リアルタイムで在庫状況を把握できるため、期限間近の商品を優先的に出荷する販促施策(値引き販売など)にも活用可能です。
システムと現場運用を連携させることで、在庫管理の精度とスピードが大幅に向上します。

最近の物流業界での活用動向

先入れ先出しは単なる手作業のルールから、テクノロジーを駆使した高度な在庫管理手法へと進化しています。

自動倉庫と連動
クレーンやロボットが入庫順を管理し、古い在庫を自動で取り出します。人手不足や作業効率化に有効です。

AIによる需要予測
AIが販売データから需要を予測し、先入れ先出しを前提に在庫量を最適化。期限切れや在庫切れを防ぎます。

RFIDタグ管理
商品1点ごとにICチップを付け、入荷日や期限を瞬時に読み取ります。棚卸しやピッキングのスピードの向上にもつながります。

先入れ先出しの導入における注意点

物流センター内で先入れ先出しを取り入れる上でいくつかの注意点があります。

倉庫レイアウトの見直し

動線が複雑だと古い在庫が取り出しにくくなり、ルールが形骸化する恐れがあります。
定期的に棚配置や通路幅を見直し、入庫から出庫までの流れをシンプルに保つことが重要です。
レイアウト改善により、作業効率の向上と出荷ミスの減少が期待できます。

従業員教育の徹底

新人スタッフにも先入れ先出しの重要性を理解させる研修が必要です。
実際のピッキング作業を体験させたり、期限切れ在庫が発生した場合の影響を具体的に説明することで、意識づけが進みます。
全員が同じルールを理解していれば、忙しい現場でも迷わず正しい順序で作業できます。

システムとの整合性確保

現場作業とシステムのルールが一致していないと、誤出荷や在庫ロスが発生します。
システム更新時には必ず現場フローとの整合性を確認し、必要があればマニュアルも同時に改訂します。
データと実務がリンクしていれば、先入れ先出しの精度が安定し、長期的な運用が可能です。

まとめ

先入れ先出しは、在庫管理の基本中の基本でありながら、品質保持・コスト削減・顧客満足度向上に直結する重要な仕組みです。
AIや自動倉庫、RFIDといった最新技術との組み合わせで、今後さらに効率化と精度向上が進むでしょう。
現場運営の土台となる考え方として、「先入れ先出し」の仕組みを押さえておきましょう。

先入れ先出しに関するよくある質問とその答え

Q1: すべての商品に先入れ先出しは必要ですか?
A: 賞味期限や使用期限がある商品は必須ですが、長期保管しても品質が変わらない商品でも在庫の滞留防止や回転率向上のために有効です。

Q2: 少量在庫の場合でも先入れ先出しを行うべきですか?
A: 在庫が少なくても、入荷順を守る習慣をつけておくことで、将来的な在庫増加時にもスムーズに運用できます。

Q3: 手作業だけで先入れ先出しは実現できますか?
A: 小規模な現場ではラベルや棚配置で対応可能ですが、在庫量が多い場合はWMSやバーコード管理などシステム連動が効果的です。

10分でわかりやすく解説の一覧を見る
WBS40社まとめ資料 無料ダウンロード TOP