自家倉庫とは?10分で解説

2025.09.22

物流や製造の現場でよく耳にする「倉庫」という言葉。実は倉庫にもいくつか種類があり、そのひとつが「自家倉庫」です。
これは、企業や個人が自分の製品や物品を保管するために所有・利用している倉庫を指します。外部の倉庫会社に委託するのではなく、自社で管理するのが特徴です。

この記事では、自家倉庫の基礎から、物流業界での活用事例、そして導入する際の注意点まで、わかりやすく解説していきます。

📌 ポイントはここ
  • 自家倉庫とは、自社が所有・管理し、自社製品を保管する倉庫のこと
  • 在庫管理や輸配送の自由度が高い一方で、運営コストや人材確保が課題
  • 近年はEC物流やメーカーの生産拠点周辺で活用が進んでいる

自家倉庫の基本的な意味

自家倉庫とは、読んで字のごとく「自分の会社のための倉庫」です。
外部の物流会社が運営する倉庫を借りるのではなく、自社で建設・保有・運営し、自社の製品や原材料、部品などを直接保管します。

自家倉庫の特徴

自家倉庫は、外部の倉庫会社に委託する形とは異なり、自社で直接管理・運営する倉庫です。そのため、利用範囲や設備、運営ルールにおいて大きな特徴があります。ここでは、代表的な3つのポイントを整理して解説します。

利用者が限定される

自家倉庫は基本的に自社専用であり、他社の商品を混載することはありません。外部倉庫のように複数企業の荷物が集まることがないため、製品の混同や誤出荷といったリスクが低減されます。
さらに、入出庫のスケジュールも自社都合で組めるため、急な生産計画の変更や顧客からの特急オーダーにも柔軟に対応しやすくなります。

保管物に応じた設計が可能

自社で建設・運営する倉庫なので、保管する物品の性質に合わせた仕様に最適化できます。
例えば製造業なら部品や半製品の形状に合わせた棚やラックを設置できますし、食品メーカーであれば冷蔵・冷凍設備を導入して温度管理を徹底できます。化学品を扱う場合には、危険物倉庫として消防法や労働安全衛生法に基づいた特別な設備を備えることも可能です。

こうした柔軟性は、自社の商品特性を最大限に活かした効率的な保管や品質維持につながります。

社内管理の一環

自家倉庫では、在庫データや受発注システムと倉庫管理を直接連携できるため、業務の標準化と精度向上が期待できます。外部倉庫では倉庫会社のシステム仕様に合わせる必要がありますが、自家倉庫であれば自社の基幹システムや販売管理システムとシームレスに統合可能です。
これにより、在庫数や出荷状況をリアルタイムで把握しやすくなり、経営判断にも役立ちます。
また、自社基準で作業マニュアルを作成できるため、教育や品質管理の徹底にもつながります。

自家倉庫を持つメリット

自家倉庫は、外部の倉庫会社に委託する形とは異なり、自社で直接管理・運営する倉庫です。そのため、利用範囲や設備、運営ルールにおいて大きな特徴があります。ここでは、代表的な3つのポイントを整理して解説します。

1. 在庫管理の自由度が高い

自社専用の倉庫であるため、在庫の配置や管理方法をすべて自社ルールで設計できます。
棚割りやロケーション管理を柔軟に変えられるので、商品の種類が増えたり、出荷の頻度が変わったりしても対応しやすいのが特徴です。

また、外部倉庫に比べて他社の都合に左右されないため、誤出荷や情報伝達ミスのリスクが少なく、在庫精度の向上にもつながります。

2. 輸配送との連携がスムーズ

工場や営業拠点の近くに倉庫を設ければ、輸送距離が短縮され、リードタイムを大幅に削減できます。
例えば製造業では、部品をすぐに生産ラインへ供給できるため、生産効率の向上が期待できます。
さらに出荷拠点として店舗や顧客の近くに構えるケースもあり、「即納体制」を整えたい企業にとっては大きな強みです。

特に近年のEC市場では、翌日配送や当日配送への対応力を強化するため、大手EC事業者を中心に、自社倉庫や専用拠点を戦略的に配置する動きが広がっています。

3. 情報セキュリティ面で安心

他社と共有しないため、在庫情報や製品情報の漏洩リスクが大幅に減ります。
特に新製品の出荷前や機密性の高い部品を扱う場合、外部倉庫だと情報管理が複雑になりがちです。
その点、自家倉庫なら社内基準でセキュリティを強化でき、カメラ設置や入退室管理なども自由にカスタマイズ可能です。

情報管理と品質保持を両立できる点は、自社ブランドや技術力を守るうえでも大きなメリットといえるでしょう。

自家倉庫のデメリット・課題

自家倉庫には多くのメリットがありますが、同時に運営やコスト面での課題も抱えています。
特に、外部倉庫に委託する場合とは異なり、建設から人材確保、維持管理までをすべて自社で担う必要があるため、企業規模や経営状況によっては大きな負担となることがあります。ここでは、自家倉庫を導入・運営する際に注意すべき代表的な課題を整理します。

1.運営コストが高い

自家倉庫は自社の資産として所有するため、初期投資に加えてランニングコストが発生します。
建設費用や土地取得費、固定資産税、保険料、光熱費など、倉庫を稼働させるだけで継続的な支出が必要です。さらに、老朽化に伴う修繕費や設備更新費用も見込まなければなりません。

外部倉庫であれば利用量に応じて料金を支払うだけで済みますが、自家倉庫は使わない時期でも維持費がかかる点が大きな負担になります。

2.人材の確保と教育が必要

倉庫の運営には、入出庫作業員や在庫管理担当者、フォークリフトオペレーターなど、多様な人材が欠かせません。特に繁忙期や季節波動が大きい業界では、人員の確保とシフト調整が大きな課題となります。

さらに、物流現場では安全対策や作業品質の標準化も重要であり、社員教育やマニュアル整備に時間とコストを割く必要があります。

3.立地の制約と輸送コストのバランス

都市部では土地代が高く、新たに倉庫を建設するのは現実的に難しい場合が多いです。郊外や地方に建設すれば土地代は抑えられますが、今度は配送距離が長くなり、輸送コストが増大する可能性も。
自家倉庫をどこに設置するかは、コストと利便性のバランスを慎重に見極める必要があります。
さらに、顧客や取引先が広域に分散している場合、一つの倉庫だけでは効率が悪く、複数拠点の整備が必要になることもあります。

物流業界における活用例

自家倉庫は単に商品を保管するだけでなく、企業の戦略に直結する重要な拠点として活用されています。
業界や業種によって使い方はさまざまですが、「生産効率の向上」「配送リードタイムの短縮」「安定供給の確保」など、企業の競争力を高める役割を担うケースが目立ちます。ここでは代表的な活用例を紹介します。

メーカーの生産拠点に併設

製造業では、工場の隣に自家倉庫を設けるケースが多く見られます。
これにより、原材料や部品を工場に直結させて供給でき、生産ラインへの投入時間を大幅に短縮可能です。さらに、製造直後の製品を一時保管してから出荷できるため、生産から出荷までの動線がシンプルになり、在庫管理も効率化されます。

特にジャストインタイム生産方式を採用しているメーカーにとって、自家倉庫は不可欠な存在といえます。

EC物流での拠点確保

近年、EC市場の拡大に伴い、自家倉庫を配送拠点として活用する企業が増えています。
大手EC事業者は都市部に小規模な倉庫を複数配置し、翌日配送や当日配送といったスピード重視のサービスを実現しています。アパレルや日用品メーカーでも同様に、需要が集中する地域に自社倉庫を設けることで、柔軟かつ迅速な配送を可能にしています。

中小企業においても、自社倉庫を返品対応や在庫バッファ用として利用することで、外部倉庫だけでは難しい細やかな対応を行う事例が増えています。

流通業での在庫安定化

小売業や卸売業では、繁忙期やセール時に商品を切らさずに供給するため、自家倉庫を活用するケースが目立ちます。
たとえば、大型スーパーやドラッグストアチェーンは、各店舗の近隣に自社倉庫を設けることで、需要の急増にも即応できる体制を整えています。これにより、本部からの一括配送に頼らず、地域ごとに最適化した在庫戦略を実現できるのです。

さらに、販促キャンペーン前に大量の商品を事前に保管しておくことで、売り場の安定供給にもつながります。

自家倉庫と外部倉庫の違い

倉庫は大きく「自社で運営する自家倉庫」と「外部の倉庫会社に委託する外部倉庫(営業倉庫)」に分けられます。
どちらも在庫を保管する役割は同じですが、コスト構造や管理方法、柔軟性に違いがあります。
ここでは、自家倉庫と外部倉庫の特徴を比較しながら整理してみましょう。

項目自家倉庫外部倉庫(営業倉庫)
所有・運営自社が所有・運営倉庫会社が所有・運営
利用範囲自社専用。他社の荷物は扱わない複数企業が共同利用するケースが多い
初期投資建設費・土地代など大きな投資が必要初期投資は不要。利用料を支払うだけ
ランニングコスト固定費(維持費・人件費・設備費)が常に発生変動費型。使用量に応じた料金
在庫管理の自由度高い。自社基準でルールやシステムを統一可能倉庫会社の運営ルールに従う必要あり
輸配送との連携工場・店舗近くに設置できれば効率的倉庫会社の立地に依存
人材確保倉庫スタッフを自社で採用・教育する必要あり倉庫会社が人材を確保
セキュリティ自社基準で強化可能。情報漏洩リスクが低い他社と同一倉庫を利用するため、管理体制に依存
柔軟性自社ニーズに合わせた設計・運用が可能契約条件次第で柔軟に拡張・縮小可能
リスク災害・需要変動時も自社で責任を負う倉庫会社にリスク分散できる

このように、自家倉庫は「自由度が高く戦略的に活用できる」一方で、「コストや人材面の負担が大きい」のが特徴です。
外部倉庫は「初期投資が不要で柔軟に利用できる」反面、「自社独自の管理を徹底するのは難しい」といえます。

まとめ

自家倉庫は、自社製品や資材を自らの基準で管理できる利点がある一方、建設や運営に多くのコストと労力を要します。
近年はECや多品種小ロット化に伴い、迅速で柔軟な物流対応が求められる中で、自家倉庫の活用が再評価されています。
両者を組み合わせながら活用していくことが、これからの物流戦略のカギとなるでしょう。

自家倉庫に関するよくある質問とその答え

Q1. 自家倉庫と物流センターは同じ意味ですか?
A. 違います。物流センターは配送機能や在庫調整を行う拠点を指し、必ずしも自社専用ではありません。自家倉庫はあくまで自社のための専用倉庫を意味します。

Q2. 中小企業でも自家倉庫を持つメリットはありますか?
A. はい。大量に在庫を持たない業種でも、顧客への即納体制や情報セキュリティ強化の観点からメリットがあります。ただしコスト面とのバランスが重要です。

Q3. 自家倉庫を持つより外部倉庫を借りた方がよいケースは?
A. 需要が不安定で在庫量が変動する企業や、倉庫運営ノウハウが不足している企業は、外部倉庫を利用する方が効率的な場合が多いです。

10分でわかりやすく解説の一覧を見る
WBS40社まとめ資料 無料ダウンロード TOP