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物流や製造の現場では、製品や資材を保管するために倉庫を利用することが一般的です。しかし「一棟丸ごと借りるのは大きすぎる」「一時的にスペースを確保したい」といったニーズも少なくありません。そうしたときに活用されるのが「坪貸し倉庫」です。
倉庫の一部を坪(約3.3㎡)ごとに区切り、必要な広さだけ借りられる仕組みで、不動産賃貸契約として扱われるのが特徴です。
今回は、この仕組みの意味や使われ方、メリット・注意点をわかりやすく解説していきます。
この記事のポイント
- 倉庫を必要な面積単位で借りられる仕組みを理解できる
- 物流業法ではなく不動産契約として取り扱われる点が重要
- 中小企業やEC事業者での活用が進んでいる背景を把握できる
坪貸し倉庫とは?

坪貸し倉庫とは、倉庫のスペースを坪(約3.3㎡)単位で貸し出す形式のことです。
「一棟貸し」や「フロア貸し」と異なり、利用者は必要な分だけ契約できるため、コストを抑えながら柔軟にスペースを確保できます。
契約形態は「倉庫業法」に基づく倉庫契約ではなく、不動産の賃貸借契約として扱われる点が特徴です。そのため、倉庫業者が在庫管理や入出庫作業を代行するわけではなく、基本的にはスペースそのものを借りる仕組みになります。
坪貸し倉庫のメリット
倉庫を坪単位で借りる形式には、コスト面や柔軟性などの利点があります。とくに中小企業やEC事業者にとっては、大きな固定費をかけずに物流を支えられる選択肢として注目されています。以下で代表的なメリットを見ていきましょう。
必要な分だけ借りられる
一棟丸ごとやフロア単位ではなく、坪ごとに契約できるため「数坪だけ確保したい」といった細かなニーズに対応できます。
例えば、繁忙期の追加在庫やキャンペーン商品の一時保管などに活用でき、無駄なスペースを抱えるリスクを減らせます。小規模な事業者でも利用しやすい点は大きな魅力です。
コストの最適化
坪単位での契約は、必要な広さに応じた賃料で済むため、経費を効率よくコントロールできます。一棟借りでは固定費が重くのしかかりますが、坪貸しであれば「使う分だけ支払う」仕組みです。これにより、資金繰りに余裕が生まれ、事業成長に合わせた投資判断がしやすくなります。
EC事業者やスタートアップが利用を広げている理由のひとつです。
柔軟な運用が可能
坪単位での契約は、必要な広さに応じた賃料で済むため、経費を効率よくコントロールできます。一棟借りでは固定費が重くのしかかりますが、坪貸しであれば「使う分だけ支払う」仕組みです。これにより、資金繰りに余裕が生まれ、事業成長に合わせた投資判断がしやすくなります。
EC事業者やスタートアップが利用を広げている理由のひとつです。
坪貸し倉庫の注意点
一方で、坪貸し倉庫には注意すべき点もあります。
倉庫業法に基づく倉庫契約とは異なり、利用者が担う範囲が広いため、導入後に「想定と違った」とならないよう確認が必要です。代表的なデメリットを整理します。
管理や作業は自社で行う必要がある
坪貸しは「スペースのみの賃貸」が基本です。そのため、在庫管理・入出庫作業・配送手配は利用企業が自ら行う必要があります。
倉庫業者によるフルサービスが含まれないため、人員や仕組みが整っていない企業にとっては大きな負担になる可能性があります。
小規模事業者では、人件費やオペレーション体制とのバランスをよく検討することが必要です。
契約条件の確認が必須
坪単価や最小契約面積、解約条件などは倉庫ごとに異なります。
「思ったより費用がかかった」「短期利用ができなかった」といったトラブルを避けるためには、契約前に細部まで確認することが不可欠です。
また、原状回復の義務や付帯費用(共益費・管理費など)が発生するケースもあるため、見積もりの段階から注意が必要です。
セキュリティ・設備の違い
倉庫によっては、防犯カメラや施錠設備、温度管理の有無などに差があります。
たとえば食品や医薬品など品質保持が重要な商品を扱う場合、設備が不十分だとトラブルにつながりかねません。
利用を検討する際は、実際に倉庫を見学してセキュリティや環境が商品特性に合致しているかを確認することが大切です。
物流業界での活用例と背景

坪貸し倉庫は、従来の大規模倉庫や外部倉庫サービスとは異なり「必要なときに必要なだけ」利用できる柔軟性が強みです。近年は、社会や産業の変化に伴い、多様な場面での活用が進んでいます。
EC市場の拡大と多品種小ロット化
EC(電子商取引)の急成長により、商品の在庫管理は従来以上に複雑になっています。少量多品種の出荷や、繁忙期と閑散期で大きく変動する需要に対応するため、事業者は固定費を抑えつつ柔軟に使える倉庫を求めています。坪貸し倉庫は、こうした需要変動に合わせて「数坪単位で追加」できるため、特にEC事業者が積極的に利用しています。
中小企業のサプライチェーン強化
中小メーカーやスタートアップ企業にとって、倉庫を一棟借りするのは大きな負担です。しかし、坪貸しなら事業規模に見合ったスペースを低コストで確保できます。
例えば、新製品の発売に伴い一時的に資材や完成品の保管場所が必要になった場合でも、短期間だけ坪貸し倉庫を活用することで柔軟に対応できます。
工場・物流拠点の補完として
生産拠点や物流センターの改修・移転などで一時的に保管場所が不足するケースも少なくありません。そのような場合に坪貸し倉庫を利用することで、ラインの稼働を止めずに調整が可能になります。
特に製造業では、納期を守るために「緊急避難的に坪貸しを利用する」例が増えています。
BCP(事業継続計画)の観点
自然災害や感染症流行といったリスクに備える動きが強まる中で、複数拠点に在庫を分散する企業も増加しています。
坪貸し倉庫は、低コストでサブ拠点を確保できるため、万一の物流停止リスクに備える「保険的な使い方」としても注目されています。
都市部での短期利用ニーズ
都市部では土地や倉庫の賃料が高いため、常時大きな倉庫を借りるのは非効率です。展示会やイベント、キャンペーン商品の一時保管など「数週間だけ必要」というケースで坪貸し倉庫が利用されています。
これにより、従来は高額なコストが発生していた都市圏での在庫運用を最適化できます。
人手不足とアウトソーシングの流れ
坪貸しは基本的に「スペースだけを借りる仕組み」であり、契約上は不動産賃貸として扱われます。そのため、在庫管理や入出庫作業といった業務は利用者側で行うのが原則です。
ただし近年では、利用者の利便性を高めるために、搬入出時のフォークリフト利用や簡易的な荷役補助をオプションとして提供する倉庫も一部に見られます。
標準サービスではないため、導入を検討する際は「どこまでが賃貸範囲で、どこからが追加サービスになるのか」を事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
坪貸し倉庫は、倉庫を必要な面積単位で借りられる柔軟な仕組みです。
不動産賃貸契約として扱われるため、倉庫業者による保管業務は含まれませんが、低コストでスペースを確保できる利点があります。
物流の変化に合わせて自社に必要な規模だけ契約できることから、今後も利用が広がっていくと考えられます。状況や用途に応じてうまく活用することで、無駄のない効率的な物流体制を整えることが期待できるでしょう。
坪貸し倉庫に関するよくある質問とその答え
Q1. 倉庫業法に基づく倉庫との違いは何ですか?
A. 倉庫業法に基づく倉庫は、保管業務や入出庫作業を業者が担うサービスですが、坪貸しはあくまで「場所の賃貸」です。管理や作業は利用者側で行う必要があります。
Q2. どんな企業が坪貸し倉庫を利用していますか?
A. EC事業者、中小メーカー、スタートアップなど、限られたスペースだけ必要とする企業に多く利用されています。特に繁忙期や新規事業立ち上げのときに便利です。
Q3. 契約するときの注意点はありますか?
A. 坪数あたりの料金設定や最小契約面積、解約条件、設備の有無などを必ず確認しましょう。特に温度管理やセキュリティが必要な商品を扱う場合は、倉庫環境が適しているかどうかが重要です。