目次
物流の現場では、日々さまざまな用語が使われています。
その中でも「アイドルタイム」は、作業者が実務を行っていない時間を指し、作業の効率化やコスト削減を考えるうえで欠かせない視点です。
この記事では、アイドルタイムの基本的な意味から、物流業界での活用例、削減の工夫までをわかりやすく解説します。
- アイドルタイムとは「作業が滞り、従業員が手を止めている時間」のこと
- 物流現場ではアイドルタイムが発生しやすく、コストや効率に直結する
- ITシステムの活用やレイアウト改善などの工夫によって削減が可能で、生産性向上につながる
アイドルタイムとは何か
アイドルタイムとは、作業者が実務を行っていない時間で、作業者が現場にいながらも業務を進められない状態を指します。
例えば、トラックがまだ到着していないために荷下ろしができない、次の指示を待っている、設備のトラブルで作業が止まっているといったケースが典型です。
実際には作業をしていないため、一見すると目立たないコストですが、積み重なると大きな影響を与えます。
作業が後ろ倒しになることで、その後の工程まで連鎖的に遅れが広がり、倉庫全体の稼働効率を下げたり、残業代の増加や追加人員の投入といった人件費の負担が大きくなり、結果としてコストが上がる要因につながります。
アイドルタイムが発生する主な原因

それでは、なぜ倉庫内でアイドルタイムが発生するのでしょうか?ここでは3つの原因について解説します。
トラックや荷物の遅延
トラックの到着が予定より遅れると、荷役作業員は作業を進められずに待機するしかありません。
原因はさまざまで、交通渋滞や事故、天候不良による道路規制などが代表的です。
輸送スケジュールが少しでもずれると、倉庫での荷下ろしや仕分けの工程が連鎖的に遅れ、結果として現場全体の効率に影響を及ぼします。
指示や情報の遅れ
倉庫内の仕分け作業では、適切なタイミングで作業指示が届かないと、作業員は動けずに待機せざるを得ません。
例えば、WMS(倉庫管理システム)からの指示が遅れる場合や、紙ベースの指示書がまだ手元にない場合がそれにあたります。
情報伝達が滞ることで現場の流れが止まり、アイドルタイムの発生につながってしまうのです。
設備トラブルや作業動線の不備
フォークリフトの不調やラック配置の問題も、アイドルタイムを生みます。必要な設備が使えなければ、作業員が待たざるを得ません。
さらに、動線設計が不十分だと、無駄な移動や待機が増え、結果的に稼働率が下がります。
ちょっとしたレイアウトの不備が作業全体のテンポを崩し、次の工程にまで影響を及ぼすことも少なくありません。
そのため、日常的な設備点検やレイアウトの見直しが、無駄な待機時間を防ぐうえで欠かせない取り組みとなります。
アイドルタイムが現場にもたらす影響
アイドルタイムが発生することで、物流現場にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
ここでは3つの影響について解説します。
コスト増加
アイドルタイムは「見えないコスト」と呼ばれることがあります。
特に大きいのは人件費で、作業をしていなくても給与や残業代は発生します。
さらに、設備の稼働率が下がることによるリース料の無駄や、倉庫スペースが滞留で埋まることによる追加費用など、間接的なコストも積み重なっていきます。
アイドルタイムで発生する可能性があるコストは、以下の通りです。
- 人件費:待機中でも給与・社会保険、後ろ倒しに伴う残業代。
- 設備コスト:遊休時間でもリース料・減価償却は発生。
- スペースコスト:滞留による保管延長・一時保管費、作業スペースの逼迫。
- 納期対応コスト:急配便・チャーター追加などのイレギュラー費用。
- 調整・管理コスト:再計画や手戻り、臨時人員の手配・教育負担。
納期遅延のリスク
作業が滞ると、その分出荷や納品が遅れます。取引先との信頼関係に関わるため、アイドルタイムの削減は納期遵守のためにも重要です。とくに製造業や小売業では、わずかな遅延が生産ライン全体の停止や店頭欠品につながることもあります。
このような納期遅延が頻繁に発生すれば、企業の信用やブランドイメージに影響を与えかねません。
現場のモチベーション低下
待ち時間が長いと、作業員の集中力やモチベーションがどうしても下がります。
効率的に働ける環境を整えることは、人材定着の面からも大切です。
待ち時間が少なくスムーズに仕事が進むと、作業員が達成感を得やすくなる場合があります。そうした状況は、現場の雰囲気改善にも一定の効果をもたらすでしょう。
アイドルタイム削減の取り組みとは?

各倉庫・物流センターでは、アイドルタイムの発生削減にむけてさまざまな取り組みをしています。
ここでは3つの取り組みについてご紹介します。
ITシステムの導入
WMSやTMS(輸送管理システム)を活用することで、指示の遅れや情報不足を防ぎます。
また、リアルタイムで作業指示を出すことで、無駄な待機を減らすことにもつながります。
さらに、稼働状況をデータで可視化できるため、アイドルタイムがどの工程で多いのかの把握が可能です。こうした分析結果をもとに改善策を講じれば、現場の生産性を持続的に高められるでしょう。
作業プロセスの見直し
倉庫レイアウトを改善したり、トラック到着時間を平準化したりする工夫も効果的です。
そのため、ボトルネックになっている作業を把握し、段取りを見直して整えることが重要です。
- トラック予約受付システム(ドライバーアポイント)で到着時間を事前分散し、同時刻の集中を回避。
- 納品時間の平準化交渉:荷主・運送会社と時間帯を調整し、入庫・出庫のピークを分ける。
- シフト調整・夜間/早朝荷受けで作業の山を分散し、待機を低減。
- レイアウト/動線の微修正:仮置き場所の明確化や一方通行化で局所的な渋滞を防止。
人員配置の柔軟化
作業が滞った場合でも、すぐに別の作業へシフトできる体制をつくることで、無駄な待ち時間を最小限に抑えられます。そのためには、複数の作業を担当できる人材を育成することが欠かせません。
現場で「誰でもどこでも動ける」体制を築くことで、突発的な遅延にも柔軟に対応できます。
結果として、労働時間の有効活用や人材の定着にもつながります。
まとめ
アイドルタイムとは、作業者が実務を進められずに手を止めている時間のことです。
物流現場では輸送の遅れや情報不足、設備トラブルなどが原因で発生しやすく、コストや納期に直結します。
ITシステムの導入やプロセス改善、人員配置の工夫によって削減が可能であり、アイドルタイムを少しでも削減しようという意識と仕組みや作業の工夫が、企業の競争力を高めるカギとなるでしょう。
アイドルタイムに関するよくある質問とその答え
Q1. アイドルタイムは完全になくすことができますか?
A. 完全にゼロにするのは難しいですが、システム導入や作業改善で大幅に削減することは可能です。
Q2. アイドルタイムが多いと、どのような問題が起こりますか?
A. 人件費の無駄や納期遅延、作業者のモチベーション低下など、現場全体に悪影響を及ぼします。
Q3. 小規模な倉庫でも削減の工夫はできますか?
A. 可能です。例えば、作業指示を明確にする、設備点検を徹底する、
トラック到着時間を調整するなど、小さな改善でも効果があります。




