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「白トラ」は、本来自家用貨物運送のためのトラックでありながら、第三者から料金をもらい、無許可で商用目的に利用されているトラックです。
しかし、ぱっと一目見ただけでは、白トラが自社貨物を運んでいるのか、他社貨物を違法に運んでいるのかわかりにくく、摘発が非常に難しいと言われています。
- 摘発が難しい中でも、白トラ利用は「安さ」と「融通の利きやすさ」から依然として続いている。
- 国交省の「トラックGメン」導入などにより、白トラ摘発件数は2024年に過去最多を記録。
- 2025年4月の法改正で、荷主にも是正指導が及ぶなど、白トラ利用に対する責任強化が進んでいる。
白トラを使い続ける荷主がいる理由

そうした状況から「白トラを利用してもどうせばれないだろう」と、白トラを使い続ける荷主も存在します。
例えば、正規の運送会社に依頼した急な案件を、勤務時間の制限や料金面で折り合いがつかず、妥協点を見つけて進めるか、依頼自体を断念せざるを得ない場面があったとします。
一方で白トラは法律に背いて運行するため、荷主の無理な要求に即座に対応したり、市場価格を下回った料金で仕事を請け負うなど、いわば「都合よく動いてくれる」存在です。
白トラ摘発が過去最多に!増加の背景とは?

ところが、2024年には白トラの摘発の件数は、過去最多を更新しました。
白トラ業者が事故を起こし、警察がさまざまな経緯を調べていたら実は違法なトラック業者だった、ということも稀にありますが、実際には同業他社からの通報や、2023年から導入され、国土交通省が主導している「トラックGメン」の監視や指導の強化が、摘発件数の増加につながっています。
白トラ摘発後に困るのは荷主?現場の状況は?

ここで困るのが「白トラを利用していた荷主」です。
白トラが摘発されると、荷主としては今まで通りの運用では立ち行かなくなり、荷主の現場の混乱を招く事態になるでしょう。
とはいえ「この状況が二度と起こらないように正規の運送会社を利用しよう」と、荷主が改める動きにはなりません。
それどころか、新たな白トラ業者に乗り換えたり、通報した会社を「裏切り者」として探し回ったり、通報者が判明したら「扱いにくい業者」として言い広めたり、仕事のやり取りがあれば、わざと仕事を減らしたりするなど、不利益を与えるケースも。
法改正により、荷主も「是正指導」の対象に

このような状況の中で、2025年の6月にいわゆる「トラック新法」と呼ばれる、2025年6月成立の貨物自動車運送事業法と貨物利用運送事業法の改正があり、白トラを利用する荷主にも「是正指導」が入ることになりました。国土交通省の「トラックGメン」の指導体制も、白トラを利用する荷主への働きかけを強化するように。
国交省による是正指導とは、以下の手順で行われます。
1.違反行為を荷主がしている疑いがある【働きかけ】
2.荷主が違反行為をしていることを疑う理由がある【要請】
3.要請されても改善されない場合【勧告・公表】
4.それでも改善されない場合【命令】
5.命令でも改善されない場合【罰金:100万円以下】
参考資料:「国土交通省提出資料 第18回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」
「貨物自動車運送事業法附則第1条の2に基づく荷主への是正指導指針」
是正指導がもたらす意識改革

白トラが摘発されてもなお、利用され続けられていたのは、荷主自身に処分や責任が及ばなかったからです。是正指導の導入により、荷主も責任を問われる対象になり「白トラの継続利用が、自分たちの立場を危うくする」という危機感を与えるきっかけになり「白トラ利用をしない物流の仕組み」の再構築が欠かせません。
是正指導を無視すると「違法な行為を続けている会社」とみなされ、社会的信用を失い、国交省からの監視・指導が強化され、罰則が課されるリスクも。最悪の場合には、白トラの利用が事業の存続にも関わる可能性もあります。
白トラ利用のリスクを社会全体で共有するために

白トラを利用する荷主が「白トラ利用のリスク」を認識し、正規業者の利用を促していくためには、社会全体での告発・監視・通報の仕組みを築き、継続していくことが欠かせません。
法改正によって、運送会社と荷主の両方が是正指導の対象になることで、この仕組みが発揮される機会が増え、更なる白トラ利用の抑制が期待されます。
また、各企業においても、コンプライアンス研修や社内での啓発を通じて、物流部門の管理職だけでなく一般職員にまで「白トラ利用はリスクである」という意識を全体に浸透させることが必要です。
社会全体と企業内部、両面からの取り組みを行うことで、荷主全体の意識が少しずつ変わり、正規の運送会社の適正利用の増加につながるはずです。そうした動きを継続することが、健全で持続可能な物流環境の実現への原動力となっていくでしょう。




