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倉庫や配送センターで「見た目ほど重くないのにスペースを取る荷物」に出会ったことはありませんか?
それが、いわゆる「嵩高貨物(かさだかかもつ)」と呼ばれるものです。輸送現場では、重さよりも体積が料金計算や積載効率に影響するケースが多く、この概念を理解しておくとコスト管理や輸送計画の質が大きく変わります。
- 嵩高貨物とは「軽いのにかさばる荷物」のこと
- 運賃計算では“容積重量”の考え方が重要
- 積載効率を上げる工夫がコスト削減につながる
嵩高貨物とは
嵩高貨物とは、重量に比べて体積が大きい貨物を指します。
たとえば、紙製品・プラスチック容器・衣料品・発泡スチロールなどが代表的な例です。実際の重量は軽いものの、トラックやコンテナのスペースを大きく占めるため、輸送の計画段階で工夫が求められます。
航空・海上・陸上輸送を問わず、嵩高貨物は「容積重量(ボリュームウェイト)」という概念で料金が決まることがあります。これは、実際の重さではなく、占有する体積を基準に仮想的な重量を計算する方法です。
容積重量の考え方

嵩高貨物を扱う際に重要なのが「容積重量(ようせきじゅうりょう)」の考え方です。
これは、荷物の体積をもとに仮想的な重量を算出し、運賃や積載効率を判断する指標のことを指します。
容積重量とは
トラック輸送では、貨物の“重さ”よりも“かさ”がネックになることがあります。たとえば、軽いけれど大きい段ボールが荷台をすぐに埋めてしまうようなケースです。
こうした不公平をなくすため、運送会社では「体積を重量に換算」して運賃を計算する場合があります。
一般的な陸送では、1立方メートル(1㎥)あたりを280kg~330kgとして計算するのが目安です。
つまり、実際の重量がそれより軽い場合でも、容積重量の方を採用して運賃を算出します。
たとえば、次のように計算します。
容積重量(kg)= 縦m × 横m × 高m × 280(1㎡あたり280kgと考えた場合)
たとえば、0.8m × 1.0m × 1.0m の荷物であれば、
0.8 × 1.0 × 1.0 × 280 = 224kg が容積重量です。
実重量が100kgなら、224kg分として扱われます。
このように、陸運では「体積で見ると重い荷物」とみなして料金や積載効率を計算することで、輸送コストの公平性を保っています。
嵩高貨物が物流現場に与える影響
嵩高貨物は、輸送・保管の両面でコストに影響を及ぼします。
積載効率の低下
トラック1台に積める荷物の量が減り、空気を運ぶような状態になるため、輸送効率が大きく下がります。
特に中距離・長距離輸送では、重量よりも体積が先に上限に達するケースが少なくありません。
荷台が容積的に満載になることで、実質的な積載効率が下がり、1回あたりの輸送コストが高くなり、車両回転率の低下につながる傾向にあります。
その対策として、積み付けの工夫や荷姿の見直しが求められるのです。
倉庫保管スペースの圧迫
倉庫でも、軽いわりに棚やパレットの面積を占有してしまうため、限られた保管スペースを圧迫します。嵩高貨物が増えると、他の在庫を一時的に外部倉庫へ移す必要が出るなど、保管コストの増加を招くことがあります。
さらに、空間効率が下がるとピッキング作業の動線が長くなることもあり、現場の生産性にも影響します。
このため、多くの倉庫では、嵩高貨物専用エリアの設置やラックレイアウトの見直しが行われています。
作業性への影響
嵩高貨物はサイズが大きく、人手では扱いにくい形状をしている場合が多いです。
そのため、積み下ろしや仕分けに時間がかかり、作業員への身体的な負担も増加します。
現場ではこうした負担を軽減するため、手作業ではなくパレットに載せてまとめて運ぶ方法が広く採用されています。フォークリフトや電動リフトを使って運搬することで、作業時間を短縮し、安全性と効率の両立を図ることができます。
また、パレット単位での管理を行うことで、在庫の移動やトラックへの積み付けもスムーズに進みます。
嵩高貨物の取り扱いを最適化する方法

嵩高貨物をうまく扱うには、輸送・包装・保管の3つの観点から工夫が必要です。
1. 輸送方法の見直し
複数の小口荷物をまとめて運ぶ「混載便」や「共同配送」を活用すれば、トラックの空きスペースを有効に使えます。特に軽くてかさばる荷物では、車両1台あたりの積載効率を高めやすく、輸送コストの削減につながります。
また、輸送距離が長い場合には、鉄道コンテナや海上コンテナを利用して効率的に運ぶ方法もあります。
ただし、荷姿や納期条件によっては混載が適さないこともあるため、輸送形態を選ぶ際は事前のシミュレーションが重要です。
2. 梱包の改善
嵩高貨物の効率化では、梱包そのものの見直しも欠かせません。
過剰包装を減らし、折りたたみ式容器や圧縮包装を採用することで体積を抑えられます。
最近では、AIを活用して出荷前に最適な箱サイズを自動選定する「パッケージングシステム」を導入する企業も増えています。
AIによる箱選定で梱包材削減・積載率向上・輸送コスト低減の効果がでている現場もあります。
3. 保管スペースの最適化
倉庫では、嵩高貨物専用エリアを設けてレイアウトの効率化を図るケースが増えています。
高さを有効活用できるラック収納や、可変式棚(可動ラック)の導入により、
同じ面積でも多くの在庫を保管できるようになります。
また、WMS(倉庫管理システム)を活用して入庫時に自動的に適切な棚位置を割り当てる仕組みを取り入れることで、保管効率と作業スピードの両方を高めることが可能です。
倉庫全体のスペースを「動的に使う」考え方が、嵩高貨物の管理でも重視されています。
まとめ
嵩高貨物は、重量より体積が大きい荷物を指し、物流現場では容積重量を基に運賃や積載効率が決まります。扱い方を誤ると、輸送コストや倉庫費用が増大する一方で、工夫次第では大幅なコスト削減が可能です。
包装設計・輸送手段・保管方法の3点を見直し、データを活用した最適化を進めることが今後ますます重要になっていくでしょう。
嵩高貨物に関するよくある質問とその答え
Q1. 嵩高貨物はどのくらいの基準で判断されるのですか?
A. 明確な基準はありませんが、一般的には「容積重量が実重量を上回る貨物」が嵩高貨物とされています。運送会社によっては、1立方メートル=280kgなど独自の基準を設けています。
Q2. 嵩高貨物の運賃を下げる方法はありますか?
A. 梱包の見直しで体積を減らすことが最も効果的です。折りたたみ容器や圧縮包装を利用したり、共同配送で積載率を上げる方法も有効です。
Q3. 嵩高貨物はどの業界で多いですか?
A. 家具・家電・アパレル・食品容器・日用品など、軽量でかさばる製品を扱う業界に多く見られます。ECの普及により、宅配便でも嵩高貨物の比率は年々増加しています。




