運送業界で安全な輸送を維持するために欠かせないのが「運行管理者」の存在です。その運行管理者に求められる知識や責任を確認し、法令順守を徹底するために設けられているのが運行管理者講習。この記事では、講習の目的から種類、実務での活かし方を解説します。

📌 ポイントはここ
  • 運行管理者講習は、運送業の安全管理体制を支える法定講習
  • 講習の内容は「一般講習」と「基礎講習」の2種類がある
  • 講習はあくまで受験資格の一つであり、講習だけで運行管理者の資格を得ることはできない

運行管理者講習とは

運行管理者講習とは、運行管理者やその候補者が、業務に必要な知識を習得・確認するための法定講習です。
道路運送法および関係省令に基づき、国土交通省の認定を受けた機関が実施しています。
貨物自動車運送事業だけでなく、旅客運送(バス・タクシー)業界でも同様の制度が存在します。

運行管理者はドライバーの勤務時間・休憩・健康状態などを管理し、事故防止の中核を担う立場です。
そのため講習は単なる形式ではなく、現場安全のレベルを高める実務的な内容で構成されています。

運行管理者講習の種類

運行管理者講習には、大きく分けて「基礎講習」と「一般講習」の2種類があります。
対象者や受講目的が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

基礎講習

基礎講習は、これから運行管理者試験を受けようとする人や、補助者として業務を行う予定の人が受講する講習です。
法律・安全管理・点呼実務などを体系的に学び、試験合格や現場実務に備えます。
おおむね3日間(合計18時間程度)で実施され、最後に修了証が交付されます。

一般講習

一方の一般講習は、すでに運行管理者として選任されている人が毎年1回受講する義務のある講習です。
最新の法令改正や安全管理の動向を学び、知識のアップデートを図ります。
受講を怠ると監査時に指摘される場合もあるため、忘れずに受講スケジュールを管理することが大切です。

講習の主な内容

講習では、法令だけでなく、現場で発生しがちなトラブルや事故事例を通して、実践的な対応力を磨くことを目的としています。
代表的な内容を以下に挙げます。

  • 道路運送法・労働基準法などの関係法令
  • 点呼・運行記録計(タコグラフ)の管理方法
  • 健康管理とアルコールチェックの運用
  • 運転者の労務・拘束時間の管理
  • 事故防止のための事例研究

講習は講義形式のほか、グループディスカッションや映像教材を取り入れる機関も増えています。

受講方法と費用の目安

受講は、国交省が指定した講習機関(例:公益財団法人全日本トラック協会など)を通じて申し込みます。現在はオンライン講習を導入する団体もあり、地方在住者でも受講しやすくなっています。

費用はおおむね以下の通りです。

  • 基礎講習:約13,000〜15,000円
  • 一般講習:約6,000〜8,000円

講習修了後に交付される修了証は、運行管理者試験の受験資格や監査時の確認資料として扱われます。

運行管理者講習と試験の関係

運行管理者になるためには、基礎講習の修了後に「運行管理者試験」に合格する必要があります。
講習はあくまで受験資格の一つであり、講習だけで資格を得ることはできません。
試験は年2回(3月・8月)実施され、法令・安全管理・実務の3分野から出題されます。

講習で学んだ内容はそのまま試験対策に直結するため、受講中は理解を深めておくことが合格への近道です。

【運行管理者になるまでの流れ】

STEP 運行管理者になるまでの基本的なステップ
  1. 受験資格を得る
    運行管理者試験を受けるには、次のいずれかを満たす必要があります。
    • 運行管理の補助業務を1年以上経験
    • 「運行管理者基礎講習」を修了(実務経験がなくてもOK)
  2. 運行管理者試験に合格する
    年2回(3月・8月)実施。基礎講習で学んだ内容がそのまま出題されます。
  3. 資格者証を申請・交付される
    合格後、「運行管理者資格者証」を取得します。ここで初めて資格者になります。
  4. 会社で正式に選任される
    所属する営業所が国に「選任届」を提出し、正式な運行管理者として業務開始。
  5. 選任後は毎年「一般講習」を受講
    法改正や安全管理の最新情報を学び、知識を更新していきます。

講習が果たす役割と実務での活かし方

講習の意義は、単に法令遵守を確認するだけではありません。
ドライバーの安全意識を高め、事故を未然に防ぐための実務スキルを磨く場でもあります。

たとえば、点呼の際にドライバーの疲労やストレスを見抜く力や、アルコールチェック機器の正しい使用方法など、日常業務に直結するノウハウが数多く学べます。
また、運行管理者が社内教育の中心となることで、全社的な安全文化の定着にもつながります。

まとめ

運行管理者講習は、安全輸送を支える人材育成の基盤です。
基礎講習で知識を習得し、一般講習で最新情報を更新することが、現場の安全意識と法令遵守を維持する鍵となります。
単なる義務ではなく、「事故ゼロ」の職場づくりに直結する大切な仕組みとして捉えたいところです。

安全は一人の努力では守れません。
運行管理者講習を通じて得た知識と意識をチーム全体で共有し、
「守る運行」から「育てる安全文化」へとつなげていくことが、これからの物流現場に求められています。あなた自身の学びが、会社全体の安心と信頼を支える力になるはずです。

運行管理者講習に関するよくある質問とその答え

Q1. 運行管理者講習はオンラインで受けられますか?
A1. 一部の認定機関ではオンライン講習が導入されています。機関ごとに実施形態が異なるため、事前に公式サイトで確認しましょう。

Q2. 講習を受けないとどうなりますか?
A2. 一般講習の未受講は法令違反には直結しませんが、監査で指摘対象となる場合があります。会社として信頼を保つためにも、毎年の受講を確実に行うことが重要です。

Q3. 基礎講習の修了証は有効期限がありますか?
A3. 有効期限は特に定められていませんが、修了後できるだけ早めに試験を受けるのが望ましいとされています。

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