カーボンニュートラル物流とは?10分でわかりやすく解説

2025.12.13

カーボンニュートラル物流とは、輸送や保管の工程で発生するCO₂を抑え、残る分を吸収・オフセットして実質ゼロに近づける考え方を指します。近年は、荷主のサプライチェーン全体を対象に排出量を管理する動きが広がり、物流部門にもより精緻な取り組みが求められるようになりました。

取り組みを具体化するには、まず“どこで排出が生まれ、何が改善の手がかりになるのか”を理解することが出発点になります。これから詳しく解説します。

📌 ポイントはここ
  • CO₂排出の少ない輸送体制をつくるための考え方と、実務に直結する要素が整理されている
  • カーボンニュートラル実現へ向けた取り組みが、物流現場でどのように進んでいるかがつかめる
  • 今後の制度動向や、企業が取り組むべき観点を把握できる

カーボンニュートラル物流の基本概念

カーボンニュートラル物流は、「排出量削減」と「排出量算定」の2つを軸に進められます。とくに算定の精度が上がることで、改善の優先順位が見えやすくなります。輸送手段の選択や積載率の改善だけでなく、拠点配置の見直しといった中長期の企画にも関わります。

CO₂排出量のとらえ方

CO₂排出量は、輸送距離・重量・使用するエネルギーによって決まります。トラック単体の効率だけでなく、無駄な往復や半端な積載が積み重なると排出量はすぐに膨らみます。荷物量が変動しやすい企業ほど、日々のオペレーション管理が鍵になります。運行状況をこまめに振り返るだけでも、見落としていたロスが浮かび上がりやすくなります。

削減施策の全体像

施策は大きく「効率化」「エネルギー転換」「オフセット」の3方向に分類されます。
効率化は積載率向上や輸配送ルートの再設計が中心です。エネルギー転換では、EVトラックやバイオ燃料の導入が進みつつあり、オフセットはカーボンクレジットの活用などが該当します。
三つの方向を並行して進めることで、短期と中長期の取り組みを無理なくつなげられます。

物流現場で取り組まれている施策

ここでは、国内で広がる実務レベルの取り組みを紹介します。単体の施策だけでなく、組み合わせて効果を出す企業が増えています。

📦 物流現場で取り組まれている施策
  • 共同配送・混載の拡大:

    複数の荷主の荷物をまとめることで、便数を減らしつつ積載率を底上げできます。都市部は共同配送の余地が大きく、日中の走行規制や配送効率の観点から導入が進みやすい領域です。地方では波動調整の手段として活用されるケースも見られます。

  • EV・FCVトラックの導入:

    短距離配送ではEV、中長距離では燃料電池トラックの実証が増えています。とくに都市内では充電設備の整備が少しずつ前進し、宅配やルート配送での採用が現実味を帯びてきました。一方で、航続距離や導入コストは依然として課題になります。

  • 倉庫の脱炭素化

    屋根への太陽光パネル設置やLED照明化は、多くの拠点で進行しています。最近では、WMSやセンサーを使った電力最適化に踏み込む企業も出てきました。設備投資と運用改善の両面から検討すると、削減効果が大きくなります。

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カーボンニュートラル物流の進め方

施策を並べるだけでは進まず、社内での役割分担や数値管理が明確であることが欠かせません。

排出量データの可視化が起点

まずは、自社の輸送におけるCO₂排出量を正確に把握する必要があります。
運行データ・配送実績・燃料消費を統合すると、改善ポイントが自然と浮かび上がります。ITツールを活用した可視化は、社内の理解促進にも有効です。

短期・中期・長期の施策を分ける

短期では積載率改善やルート最適化、中期は車両更改や拠点再配置、長期でエネルギー転換を検討する流れが適しています。期間を分けておくと、経営陣の判断がしやすくなり、現場も無理なく取り組めます。

荷主との協働が不可欠

単独での削減には限界があるため、荷主企業と情報を共有しながら進める取り組みが増加しています。納品頻度や発注ロットを調整するだけでも効果は大きく、双方にとってのコスト低減につながる場合があります。

今後の展望

Evoto

脱炭素は“環境×コスト×サービス”の同時最適へ向かいます。制度の整備、技術の成熟、サプライチェーン連携の深化が並行で進む見通しです。準備を早めるほど、投資回収と競争力の両立がしやすくなります。

1. 制度整備とデータ標準化の前進

排出量算定のルールが整い、開示の精度と比較可能性が重視されます。スコープ3の管理が本格化し、荷主と物流事業者の共同でデータをそろえる動きが当たり前になります。WMS・TMS・車載データの定義統一とAPI連携が鍵で、監査に耐えるログ管理まで含めて設計するのが現実解です。

2. 車両・エネルギーの選択肢拡大

小型〜中型の電動トラックが先行し、中距離は燃料電池や合成燃料の検討が進みます。倉庫の太陽光・蓄電とPPAの組み合わせで、拠点と車両を“面”で最適化できます。ルート最適化は高頻度データで精度が上がり、台数を増やさずにCO₂とコストを同時に下げる設計が現場に浸透していきます。

3. 連携モデルとファイナンスの実装

発注ロット・納品頻度・締め時間の見直しを荷主と同期させるだけで、ムダ走行は確実に減ります。共同配送やハブ共有は都市部に限らず、地方の幹線・二次輸送でも再評価が進みます。補助金や残価設定、環境価値・クレジットの活用、トランジション・ファイナンスを組み合わせると、初期負担を抑えつつ移行を前倒しできます。

まとめ

カーボンニュートラル物流は、単なる輸送効率の話で終わるテーマではありません。
エネルギーの選び方や拠点の配置、社内の運営まで視野を広げて設計する姿勢が大切です。
日々の小さな工夫を重ねるほど、排出は着実に減っていきます。明日の一便を少し見直す、来週の配車でムダを一つ外す、次のKPIに現場の気づきを添える――その積み重ねが、会社の脱炭素を静かに前へ進めます。

カーボンニュートラル物流に関するよくある質問とその答え

Q1. EVトラックはすぐに普及するのか?

A: 短距離配送から広がる傾向があります。インフラ整備やコストがネックですが、自治体と企業の共同プロジェクトが徐々に進んでいます。

Q2. 中小企業でもカーボンニュートラルは取り組める?

A: 可能です。まずは積載率改善やアイドリング削減など、投資を伴わない部分から着手すると進めやすくなります。

Q3. カーボンクレジットは物流企業でも使える?

A: 利用できます。ただし、削減努力を行ったうえで、不足分を補う位置づけとして活用するのが一般的です。

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