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物流センターや工場の運営では、スタッフ一人ひとりの作業効率をどう高めるかが常に課題になります。その状況を客観的に把握する指標として使われるのが「人時生産性」です。
現場の負担を軽くしながら作業量を増やす取り組みは、企業全体の収益にも直結します。
考え方自体はシンプルで、初めて学ぶ方でもイメージしやすいテーマです。
- 人時生産性は「1人が1時間でどれだけ成果を生み出したか」を測る指標
- 作業改善・人員配置・設備投資の判断材料として使われる
- 物流現場ではピッキング精度や動線の設計とも密接に関わる
人時生産性の基礎を押さえる

人時生産性は、延べ作業時間に対してどれだけ成果を生み出せたかを測る指標です。現場の動きや人員配置の妥当性を短時間で把握できるため、物流センターの運営では欠かせない視点になっています。単純な「効率の良し悪し」を示すだけでなく、工程のどこに負荷が集中しているかをつかむ手がかりにもなります。
人時生産性の基本計算式
人時生産性は次の式で表されます。
どんなときに人事生産性の数値が上がったり下がったりするのでしょうか?
そこから読み取れることについても次の項で解説します。
数値が高いときに読み取れること
人時生産性が高いと、作業が流れに沿ってスムーズに進んでいると考えられます。
棚割りや動線が整理され、作業指示も過不足なく伝わっている状態です。
人数と作業量のバランスが取れているため、人件費の見通しも立てやすくなります。改善施策の効果がそのまま数字として表れるため、次の改善テーマを見つける際にも役立ちます。
数値が低いときに起きている可能性
人時生産性が下がると、どこかの工程で停滞が発生している可能性が高まります。
動線の混雑や検品の渋滞、作業指示の見返しなど、細かなロスが積み重なっているケースも少なくありません。
新人比率が高い時期は処理速度が安定しにくく、人員過多によって逆に効率が落ちる場合もあります。数値の低下が続くと、繁忙期の人員予測がずれやすくなる点にも注意が必要です。
物流現場における活用シーン
人時生産性は数字そのものより、「なぜその数値になっているのか」を読み解く点が重要です。
現場運営のあらゆる場面で意思決定に役立ちます。
ピッキング工程での活用
ピッキングはもっとも人手が集中する工程で、人時生産性の差がそのまま処理効率に表れます。
動線が長くなるほど移動に時間を取られ、数値が思うように伸びません。
このため、棚割りの調整や頻出商品の集約といったレイアウト改善が効果を発揮します。
さらに近年はデジタル端末によるピッキング指示が普及し、棚へ戻って指示を確認し直す場面が減ったことで、人時生産性の底上げにもつながっています。
荷受け・仕分けの改善
荷受けは作業量の変動が大きく、待機時間が生じることがあります。
そのため、作業順序の整理やレーンの再構築で無駄な滞留を抑えられます。
仕分け工程では、設備の活用度に応じて数値が大きく変わるため、ラインバランスの調整が効果的です。
労務計画への応用
人時生産性が安定していれば、将来の繁忙期に必要な人員数を算出できます。
経験の浅いスタッフが多い期間はやや数値が下がりますが、その変化を把握しておけば教育体制の見直しにもつなげられます。
改善を進めるステップ

人時生産性の改善は数字だけを追うと失敗しやすく、現場の運用とセットで考えることが欠かせません。
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現状を正確に把握する:
まずは工程ごとの作業量と時間を分けて計測します。ざっくりとした推測では誤差が大きく、対策が的外れになりかねません。 手書きの管理表でも構いませんが、時間ごとに記録するだけで改善ポイントが見つかります。
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改善策の検証:
施策を小さく試し、数値変化を追って有効性を判断します。 改善直後は定着に時間がかかるため、一定期間の推移を追うと判断がしやすくなります。 設備投資が関わる場合は、想定される生産性の増加量と照らし合わせて検討します。
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ボトルネックの特定:
人時生産性を押し下げている原因は一つとは限りません。移動距離の長さ、レイアウトの不整合、情報共有の遅れなど、多方面から確認します。作業者へのヒアリングを合わせると、数字には出ない課題が浮き彫りになります。
まとめ
人時生産性は、現場の動きを客観的に把握するための中心的な指標です。
数値の上下だけで判断するのではなく、工程ごとの負荷や作業の偏りを読み解くことで、改善の方向性が見えてきます。
日々の変化を捉える“現場のものさし”として活用していくと、運営全体の質を底上げする手がかりにもなるでしょう。
人時生産性に関するよくある質問とその答え
Q1. 人時生産性が下がる代表的な原因は?
A: 作業の滞留、複雑な動線、情報の行き違いが主な要因として挙げられます。突発的な欠員や新人比率の増加によって変動することもあります。
Q2. 人時生産性は高ければ良いのですか?
A: 高いほど効率が良い状態といえますが、無理な負荷をかけると品質や安全面に影響が出ます。作業者の負担とバランスを保ちながら改善することが大切です。
Q3. 設備導入と人時生産性の関係は?
A: 自動仕分け機やハンディ端末などを導入すると、作業時間の短縮が期待できます。
ただし、導入後の運用ルールが整っていないと期待ほどの数値にならない場合があります。




