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倉庫の新設プロジェクトでは、テナント企業の業務内容に合わせて建物を企画するケースが増えています。その代表が「BTS型倉庫」です。
物流拠点の最適化や作業効率の改善が求められる中、標準仕様の倉庫では対応しにくい細かなニーズにも柔軟に応えられる方式として注目されています。ここでは、基本的な概念から日々の運用で踏まえておきたいポイントまでを整理します。
- BTS型倉庫=Build To Suit(特定企業の要望に合わせて建設する倉庫)
- 運用効率や動線計画をテナントの業務に最適化できる
- 近年は大型EC・メーカーを中心に採用が拡大している
BTS型倉庫とは何か

BTS(Build To Suit)は「特定の入居企業の業務に合わせて企画・設計する倉庫」を指します。
倉庫会社やデベロッパーが建設する点は通常の賃貸倉庫と同じですが、仕様が“借り手ありき”で決まるところに特徴があります。
荷姿や作業量に応じて天井高、床耐荷重、搬送設備、動線などを細かく調整できるため、標準倉庫では出しにくい作業効率を確保できます。
BTS型倉庫が選ばれている背景
物流需要が複雑化し、保管と配送の一体運営が求められる場面が増えています。
とくにEC企業は入出荷量の波が大きく、短いリードタイムを実現するための設備が欠かせません。
標準仕様のマルチテナント倉庫では調整しづらいケースもあり、業務戦略と合致する「オーダーメイド型の拠点」を選ぶ動きが強まりました。
自動化設備との相性もよく、近年の機器導入ニーズとも整合しやすい点が追い風になっています。
BTS型倉庫のメリット
実際に、BTS型倉庫を導入するメリットにはどのようなケースがあるのでしょうか?
ここでは3つのメリットについて紹介します。
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1.業務プロセスに合わせた設計ができる:
扱う商品に応じて必要な荷さばきスペースやラック形状が変わります。 BTS型倉庫であれば、動線計画をゼロから組めるため、余白の少ない作業環境を整えられます。 ピッキング方式や仕分け方法に合わせて設備を組み込むことも可能です。
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2.自動化・省人化と相性がよい:
ロボットや自動搬送装置(AGV・AMR)を前提にして天井高や電源設備を設定できます。 後付けでは調整が難しい部分を最初から織り込めるため、スムーズに立ち上げられます。 将来の拡張余地を持たせる設計も行いやすくなります。
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3.サプライチェーン全体の最適化:
配送網に合わせて立地や導線を調整でき、在庫配置を最適に保つ役割を担います。 メーカーであれば原材料の受け入れから出荷までを一つの建物に集約できる場合もあります。
BTS型倉庫のデメリット
一方でBTS型倉庫を導入するデメリットも見られます。これから3つのデメリットについて解説します。
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1.完成まで時間を要する:
設計調整が多いため、即入居はできません。 需要変動が大きい事業の場合、完成までのタイムラグがリスクになることがあります。
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2.契約期間が長くなりやすい:
建築コストを投資側が回収する必要があり、一般賃貸よりも長期契約が前提となります。 拠点戦略を継続できるかどうか、事前に入念な見極めが必要です。
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3.中途解約の柔軟性が低い:
専用仕様は他企業への転用が難しいため、解約条件がシビアになる傾向があります。 そのため、運営計画を慎重に組む必要があります。
BTS型倉庫の設計要素

倉庫計画では、運用の核心となる項目を明確にすることが重要です。ここでは設計段階で特に押さえておきたい観点を整理します。
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1.荷役方式:
フォークリフト主体なのか、ハンドリング中心なのかで必要な通路幅は大きく変わります。 さらに、扱う貨物に合わせて天井高やシャッター位置を調整すると、無駄のない動線づくりにつながります。
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2.保管方法:
パレットやケース、オリコンといった荷姿に合わせて、適した棚構造を選定します。 さらに、マテハン機器を導入する場合は、荷重条件やレイアウトの整合性もあわせて確認します。
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3.温度帯・衛生条件
食品・医薬品の場合は温度管理が不可欠です。 温調区画を建物内にどう組み込むか、動線に負荷が出ないよう調整します。
BTS型倉庫はどのように活用されているか
BTS型倉庫は、ECフルフィルメント、アパレル、家電など、多品種・高速処理が要求される領域で広く採用されつつあります。
近年は返品処理や流通加工の機能も倉庫に組み込み、複合型の運営を行う企業も増えました。
また、メーカーでは生産工場と物流拠点をセットで企画するケースが多く、在庫の移動距離を短縮する役割を持たせています。
海外企業が日本市場向けの拠点を構える際にも、BTS方式が選ばれる傾向があります。
まとめ
BTS型倉庫は、テナント企業の業務に合わせて企画する「特注型の物流拠点」です。倉庫の形状から設備まで自由度が高く、効率のよい作業環境を構築しやすい反面、長期契約や計画変更の難しさと向き合う必要があります。
その場の最適だけでなく、将来の姿まで描きながら拠点を選ぶ姿勢が、安定した物流運営につながっていきます。
BTS型倉庫に関するよくある質問とその答え
Q1. マルチテナント型倉庫との違いは?
A: マルチテナント型は複数企業が入れる汎用仕様のため、すぐ使える一方で自由度は限られます。
BTS型は単一企業向けに最適化するため、業務効率を最大まで引き上げやすい点が大きな違いです。
Q2. 自社で土地を持っていなくてもBTS型を利用できますか?
A: 可能です。多くの場合、デベロッパーが土地と建物を用意し、テナント企業が長期で賃借します。自社建設より初期投資を抑えられます。
Q3. 建設期間はどれくらいかかりますか?
A:規模により差はありますが、企画段階から竣工まで1〜2年程度が目安です。大型設備を組み込む場合はさらに期間が延びることもあります。




