物流現場取材シリーズ【12】
物流の未来を切り拓く
丸紅ロジスティクスの挑戦と
未来展望から学ぶ

左から五島社長、川村

「経営視点に基づくサプライチェーンソリューション」を提供している丸紅ロジスティクス様は、ロジスティクス事業にデジタルソリューションを掛け合わせ、総合的な課題解決を実現しています。今回は、丸紅ロジスティクスの代表取締役社長、五島洋一郎氏にお時間を頂き、株式会社ロジテック代表取締役の川村が物流業界のあるべき姿についてお話を伺いました。

商社で培った強みとは

川村 まず、丸紅ロジスティクス様の特徴についてご紹介いただけますでしょうか。

五島社長 ありがとうございます。当社は、国内外の物流を手掛けております。但し、ただ荷物を預かったり、配送したりするだけではなく、商社系の強みを生かして、デジタルを活用したソリューションも提供しながら、サプライチェーンの様々な課題を解決する事業を行っています。

川村 「商社系の強み」とは何か、もう少し具体的に教えて頂けますでしょうか。

五島社長 丸紅は様々な業界のお客様との取引を行い、対面する業界や商流に精通していますが、それらを通して培われた業界やビジネスの知見、並びに人的ネットワークを活用できること、また丸紅グループが提供するITや金融などのサービスを複合的に提案できることなどが、商社系の強みであると思っています。我々は、これを「丸紅力」と呼んでいます。

この丸紅力を背景に、我々は、お客様の業界を俯瞰し、お客様のサプライチェーンはどうあるべきか、経営的視点からロジスティクスのありようを、定量効果をお示ししながらお客様の経営へご提案し、業務を受託させていただいています。

川村 丸紅グループの仕事が多いのでしょうか。

五島社長 実はそうでもありません。当社の売上は420億円ほどあり、その多くは国内事業の売上ですが、国内事業のうち、丸紅グループ向けの仕事は10%ほどしかありません。ただ、先ほど申し上げた丸紅力を生かして、ビジネスにつながるケースも多いので、丸紅グループとは連携してビジネスを進めるようにしています。

川村 丸紅グループ中心かと思っていましたが、意外ですね。

川村 ところで、デジタルを活用したソリューションの提供についてもう少し詳しく教えてください。

五島社長 AIを活用したデジタルソリューションと、フィジカルロジスティクスソリューションを掛け合わせて、お客様のサプライチェーンを改善する取り組みを行っています。

川村 AIの活用は非常に興味深いですね。どのような視点でAIを活用していますか。

五島社長 従来、我々は物流センターに商品が入庫した後の改善を主に行っていましたが、そもそもお客様が商品を製造・発注する物量や、物流センターに入荷する物量そのものを最適化すれば、さらに効率化ができると考え、一部のお客様に対してはAIを用いて最適な物量を推奨するサービスを丸紅と組んで提供しています。また従来、お客様や当社のベテラン社員がエクセルを使って行っていた各地の拠点への在庫送り込み数量の計算を、AIを活用し、最適な送り込み数量を推奨する仕組みを複数の案件で導入しています。

川村 御社は、業界ごとのソリューションにも力を入れています。例えば、ペットフード業界に強みがあるそうですね。

五島社長 はい、現在当社では、日本のペットフードの物流市場で40%のシェアがあり、ペットフード業界、並びにペット用品業界への貢献を果たすため、サプライチェーンの改善につながる取り組みを行っています。

また菓子業界でも取り組みを行っています。菓子メーカーには中小・中堅企業が多く、物量がまとまらないが全国に配送をしなければならないため、多くの企業が路線便を活用されています。一方、多くのお客様から、輸送中の破損、残荷、物流費の高騰など、物流が経営課題となっている声をお聞きしました。そこで当社は、菓子業界専用の物流網を構築し、工場から商品を集荷し、菓子専用の幹線車両、支線配送車両で共同配送するサービスを提供し、課題を解決するようにしています。こうした業界に特化したプラットフォームは、非常に好評です。

2024年問題と業務委託の課題

川村 五島社長は「2024年問題」をどのように捉えていらっしゃいますか。ぜひご意見をお聞かせください。

五島社長 「2024年問題」に際して、我々の自社車両事業においては、運行計画の見直し、ドライバーの時間管理、給与体系の見直しなどを2年前に行っています。ただ、物流は我々だけで提供できるサービスではなく、多くの協力会社の協力があって成り立っています。我々が配送をお願いしている協力会社においても、課題解決に向けて一緒に取り組んでいかねばなりません。委託しているから良い、協力会社の問題、ということでは問題の解決には全くならず、発荷主様や着荷主様も含めて一緒になって2024年問題への対応を考える必要があり、個別具体的に課題解決に取り組んでいます。

川村 協力会社との関係について、どのような経験から何を学ばれたのか、ぜひ教えてください。

五島社長 10年以上前の話ですが、倉庫内作業において、協力会社が安い金額を提示したため任せたところ、彼らが途中でギブアップし、立て直しに大変苦労しました。我々自身が作業の真の原価を把握しようとしなかった事が原因でした。

倉庫内の作業だけではなく配送も同じです。自社車両を保有しながら、私自身、運送事業の収支構造や運行管理についてよく理解していなかった。このため、2020年に運行管理者の資格を取得し、運行管理や車両事業の真の原価を理解するように努めました。物流スキームの改革により物流コストを抑える一方で、協力会社に対しては適正な運行計画や料金でお願いしなければ、2024年問題は解決できないし、持続可能な物流をお客様に提供することは出来ないと考えています。

川村 とても納得のいくお話をありがとうございます。これは3PLの問題点にも関連していますね。力のある側が自分の利益を考慮した上で委託価格を設定すると、委託先は低価格でも契約を受け入れざるを得なくなります。人材派遣業界でも、仕事を得たい一心で不当に低い価格で契約を結ぶ事例が見られます。これは持続可能なビジネスモデルとは言えません。

五島社長 おっしゃる通りだと思います。

川村 そうした委託先のサステナビリティを考えますと、「現場改善」は重要なキーワードの一つです。昔気質な現場の人間もいるなかで、御社はどのような視点でデジタル化を推進していらっしゃいますか。

五島社長 新しいやり方を導入することへの抵抗や、昔ながらの慣れたやり方を踏襲する方が良いと思うことは誰しもあると思います。新しいやり方を導入する時は、結果を示すことが重要だと思います。例えば、以前は2時間かけて手作業で行っていた業務が、デジタル化により一瞬で終わるようになる、結果も遜色ないということになれば、昔ながらのやり方に固執していた方も新しい方法を受け入れてくれます。結果を示して、実感してもらい「納得感」を持っていただくことが大切だと思います。

川村 「納得感」、非常に重要なポイントですね。

人材育成とデジタル化の挑戦

川村 これまでのお話から、丸紅ロジスティクス様が業界を俯瞰し、先を見据えて行動していることが伺えます。そうなると、企画や提案、それらを実行に移すための優秀な人材が不可欠だと思います。

五島社長 確かに、人の育成と採用は私たちにとって大きな課題です。キャリア採用の方々は即戦力となる一方で、皆さんそれまで培ってきた経験・知識・考え方が異なります。それぞれの方の強みや個性を生かしつつ、当社独自のやり方を理解し、対応してもらうことも重要だと思っています。

川村 人材の育成と採用に関する苦労には深く共感します。キャリア採用の方々が持つ多様な経験と考え方をどう統合するか、新卒採用では未経験者をどう業務に慣らしていくか、常に挑戦ですね。

五島社長 その通りです。毎年、新卒を含め多数の人材を採用していますが、現場経験の重要性を特に感じています。新卒だけでなくキャリア採用の方々にも、必要に応じて現場での仕事から始めてもらい、実務を通じて当社の方法を身につけてもらうことも行っています。

川村 新しい業務や商材に対応するには、現場の実情を知ることが欠かせません。

問題を先送りできない、物流業界の未来展望

川村 最後に、物流業界の未来についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

五島社長 物流業界は大きな転換期にあると思っています。最近、ある大学の教授が「今が人の供給のピークだ」と講演会でおっしゃっていました。 今後、働くシニア層の増加や女性の活躍は見込めても、現在が労働力の供給のピークであり、確実に毎年、供給力は低下していく、とのことでした。

そのため、人を採用できない時代が来る前に準備を進めておく必要がありますが、一方で、現時点では費用対効果の問題があります。今後、技術の進歩と機械化設備費用の低下により、労働集約型から資本集約型のビジネスモデルへの転換が急速に進むと考えていますが、それまでの移行期をどう乗り切るか、投資のタイミングの見極めが重要だと思っています。

川村 問題を先送りにするわけにはいかない、おっしゃる通りだと思います。

五島社長 将来的には、特定業界に特化した設備を有した物流センターに、その設備に適した複数の荷主企業だけを預かるなど、荷主に合わせた物流センターを構築するのではなく、設備に合った荷主だけを対象にする物流センターの可能性もあるのではないでしょうか?

川村 物流事業者がデファクトスタンダードを作る、というのは興味深い考え方ですね。

五島社長 2024年問題を控え、ドライバーの拘束時間の削減するため、お煎餅やスナックの手摘み手卸し作業を廃しパレット化を進めるべく、メーカー、卸、物流会社、レンタルパレット会社と「菓子標準化パレット促進協議会」を4年前から行っています。

1x1パレットを標準パレットとして推奨するなど業界標準を取り決めてきましたが、標準パレットを決めてパレット輸送化を進めることにより、必然的にパレットに合わせて商品のケースサイズが一定のパターンに集約されてくると思っています。そうなると、物流センターの機械化も将来的にはしやすくなると思っています。

川村 とても納得できる話です。一方、商材には流行や販売の波があり、繁忙期と閑散期の差が激しい業種では、省人化や機械化の障壁になっています。「人が機械にとって代わられる」と言われつつも、人材派遣の仕事は減っていないのが現状です。これはどうしてでしょうか。

五島社長 物流の面からみると繁閑差がなくなれば、どれほど効率化できるかと思いますが、世の中から物量波動がなくなることはありません。また値付けや返品業務など、人による作業は必ず残ると思います。機械化と人による作業のバランスをどう取るか、どのキャパシティまでは機械化をすべきか等、今後、設備導入をするにあたり、検討していかねばならないと思います。

本日の対談を通じて、物流業界の未来に向けた洞察と、それに伴う人材や技術のあり方について学ばせていただきました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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