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物流現場取材シリーズ【19】
物流業界以外の企業が、
自社でロジスティクスを
手がける際の“ヒント”と“落とし穴”

左から弊社の川村、モリトジャパンの秋山様

東証プライム上場企業のモリトグループの一員で、靴のインソール(中敷き)をはじめとする生活雑貨のメーカー・商社のモリトジャパン株式会社。2018年に、自社の大規模ロジスティクスセンターを埼玉県に開設しました。

今回はモリト関東ロジスティクスセンターにお邪魔して、センター立ち上げの経緯や、他業種の企業が物流に着手する際に注意すべきポイントなどを、同社の秋山純氏(管理本部物流部部長・物流企画課課長)に株式会社ロジテック代表取締役の川村がお聞きしました。

創業者の想いを受け継ぐロジスティクスセンター

川村 最初に、御社の概要について教えてください。

秋山 そもそも、モリト株式会社は1908年(明治41年)に創業し、2019年に純粋持株会社になって、モリトジャパン株式会社が事業会社として分割・設立されました。

そして、2022年に、アパレル関連事業を行うモリトアパレル株式会社と、輸送関連事業のモリトオートパーツ株式会社と当社の3つの会社に分割しました。

当社では、靴のインソールやバッグ、サポーター、働く方々向けのサポート商品をはじめ、さまざまな日用品などの企画・製造・販売やODMOEM製造を行っています。

川村 グループ全体で事業が多岐にわたっていらっしゃいますが、どのように事業を展開されてきたのですか?

秋山 元々は、アパレル関係のホックなどのボタン類が出発点でした。そうした部品が製品に活用される中でパソコンやデジタル機器、文具関連のケースなどの日用品で使用される製品を手掛けるようになり

さらに、自動車のフロアマットを固定する部分のハトメや、自動車のトランク内や新幹線の座席についているネットなどその事業領域は拡大してまいりました。

川村 御社はメーカーや商社でありながら、自社でロジスティクスセンターをお持ちですよね。どのような経緯で、物流を内製化することになられたのですか?

秋山 理由は2つあります。1つは、創業者の「お客様のご要望にとにかく対応する」という精神と想いが根づいているからです。たとえば、「ホック類を数個~数百個単位の小ロットで販売して、短納期で配送する」といったことを、創業当時から社内で行ってきました。

もう1つの理由は、そのような細かくタイムリーな対応を外注先さんにお願いすることはむずかしいためです。一部は外注もしていますが、基本的にずっと自社内で物流まで行っています。

問題が山積するなか、センター立ち上げがスタート

川村 こちらのロジスティクスセンターを開設されたのは、2018年だとお聞きしています。開設当初から順調に稼働されていらっしゃったのでしょうか。

秋山 いえ、最初は大変でした(笑)。建物が完成して実際に立ち上げた時点では、「どの業務が、この倉庫でできるのか」「このシステムで対応できるのか」「従業員はついてこられるのか」といったことが、まだ詰め切れていなかったんです。

そのような状況でスタートしたので、すでに導入していたWMS(倉庫管理システム)もなかなか思うように機能させられていませんでした。

川村 本当にWMSが自社に合うかどうかという問題もありますよね。

秋山 そうですね。そういった判断ができる専門家がいないままで立ち上げを進めていた途中で、私は当社に転職してきました。

川村 問題が山積しているなかで、立ち上げに途中参加されたんですね。秋山さんはそれまでに物流関連の営業など、30年以上にわたって物流業界でお仕事をされていらっしゃったそうですが、この立ち上げではいろいろなご苦労もされたのではないですか?

秋山 おっしゃる通りです。まずは問題を解決する“火消し”からのスタートでしたので(笑)。

最初は、「当日中に出荷が終わらない」「誤出荷してしまう」といったことも起きていました。そのような失敗を重ねながら、スタッフが仕事やWMSの使い方を覚えて、どうにか立ち上げることができました。

立ち上げ準備に、物流の専門家は不可欠

川村 物流に関わる方々とお話ししていると、「物流部門は、事業部門と同じ動かし方や考え方では回らない」とよくお聞きします。また、経営陣の方々が想定している通りに現場を回すのも、実際はむずかしいだろうと思います。やはり、準備段階から専門家の方が関わることが大切なんですね。

秋山 私たちのようなメーカーや商社が物流を始めるときに陥りがちな問題も、まさにその点だと思います。「現実的にできるかどうか」を考えない状態で、専門家抜きで計画を決めてしまって、「なんとなくいけそうだと思っていたけど、実際は無理だった」という状況に陥ってしまうんですね。

たとえば、物流に詳しくないと、「倉庫での業務は、ものを移動させたり片づけたりするだけで簡単」と考える方も多いと思います。

小さなスペースを数名で担当する場合は、「あの商品は、あの辺に置いてあったな」と記憶に頼って進めることもできますが、その延長線上で「大きな倉庫でも同じだろう」と考えてしまうんですね。

川村 実際に物流センターを運営するうえでも、物流がわかる人材が必要そうですね。

秋山 自社で運営するためには、それなりに物流を理解したひとが一定数は必要だと思います。「旗振り役を1人立てて、残りのスタッフは育てればいい」と考えても、実際はうまく回りません。

私が物流業界の営業などに長年携わってきたなかで、出世コースを外れた人材を倉庫の担当にするという企業様もありました。それは、もちろん人事施策の1つの方法だとは思いますが、やはり物流がわかる人材は複数名いなければうまく運営できないですね。

川村 たしかに、物流の現場を知らない方は、そういった人材配置をすればいいという発想になるのかもしれません。

秋山 そうなんです。そういった発想で物流部門の管理職を配属させてしまうと、現場で「もっとこうしたほうがいい」という声が上がっても管理職のところでストップしてしまって、経営層まで伝わりません

「仕入コストを1円でも安くしよう」と経営努力をしている一方で、物流人材に関わる部分でコストを無駄に使ってしまっているというケースもあると思います。

人材戦略物流戦略をあわせて考えることが重要

川村 物流を内製化する際に、人材採用について気をつけるべきことはありますか?

秋山 拠点のエリアの特性を考慮して、「人材を確保できるのか」という点は当然大切です。さらに、たとえば「出荷量が月曜から金曜に向けて減っていくホームセンター業界の特徴にあわせて、曜日別に必要な人数を確保できるか」という点も重要なポイントだと思います。

そのような個別の業界特有の物流に関する知識もないと、失敗してしまうかもしれませんね。

川村 実際、人材採用に苦戦している物流業界の企業さんが多いのが現状です。御社では、どのような工夫や取り組みをしていらっしゃいますか。

秋山 たとえば、当センターの開設当初はECなどへの対応も考えていましたが、現実問題としてこのエリアでは梱包などを行う人材の確保がむずかしいので路線を変更しました。物流に取り組むにあたって、そのような判断や方向転換も必要だと思います。

川村 当社も倉庫業を展開するうえで、機械ではなく人手で行わなければいけない仕事があると痛感しているので、やはり人材確保のためにも立地は非常に重要だと思っています。

秋山 たくさんの入出荷への対応や商品梱包のように込み入った作業には、どうしても人手が必要ですよね。

せっかく倉庫をつくっても、人手不足でただの物置状態になってしまってはコストの無駄になるので、立地に関しても注意が必要だと思います。これは、私が今回の立ち上げに携わって実感したことでもあります。

物流も行うメーカーならではの自社製品で、業界の問題解決も

川村 御社はメーカーとしてさまざまな商品を企画・製造・販売していらっしゃいますが、物流人材向けの商品もつくっていらっしゃるのですよね。

秋山 はい。働く方々の働きやすさや身体の負担を考慮した自社商品をつくっています。たとえば、ものを上に載せて運ぶことで腕の負担を軽くする『キャリーアシストポーチ(写真左)』があります。この商品は耐荷重20kgで、台車が使えない場合などに役立つ商品です。ちょっと試してみますか?

川村 たしかに、腕の力はほとんど必要ないですね。着脱も簡単で、ポケットもついているので、宅配や荷物の移動などに便利そうです。

秋山 本品の着用により腕への負担が分散され、上腕二頭筋の筋肉使用量が56%~70%ほど軽減されるという実験結果が出ています。また、片手で荷物を保持でき、電話や伝票を書くこともできます。

ほかにも、腰に負担がかかる作業者の方向けに動きやすさを重視したサポートベルト(下写真中※特許取得済み)や、ものを持ち上げるときの広背筋の筋肉を38%以上軽減するアシストスーツ(下写真右)などもあります。

これらの商品はすべて、このロジスティクスセンターで働いているスタッフが実際に試用して、その意見を反映したものです。

川村 なるほど、物流機能を持つメーカーさんならではの商品なのですね。物流業界の企業さんがこういった商品を導入すれば、働く方への負担軽減はもちろん、人材採用の際のアピールにもつながると思います。

秋山 価格も一般的な商品と比べて安いので、福利厚生の一環として取り入れていただくと有効かもしれません。

商品名:ブラックサポーターSMG キャリーアシストポーチ
パッケージ左 商品名:ブラックサポーターSMG 腰サポートベルト超薄型
パッケージ右 商品名:ブラックサポーターSMG 腰サポートベルト強加圧
商品名:ブラックサポーターSMG 全身アシストパワースーツ

【製品に関する問い合わせ先】

モリトジャパン株式会社
フリーダイヤル:0120-959-851
is-fit@morito.co.jp

品質保証の機能やノウハウなどを活かした新規事業を

川村 物流分野での今後の事業展開などについて教えてください。

秋山 私たちは、先ほどご紹介したような物流関係をはじめさまざまな商品などをつくっているメーカーですし、商社でもありますので、このセンター内に品質保証部門を持っています。

また、アパレル商品や繊維系商品の検品に不可欠な検針器もありますので、そういった機能も活かして、当社製品以外の加工や検品の受託事業を行っていこうと考えています。

さらに、お取引先から届いたバルク品のパッケージングなどの受託事業も計画中です。ただ単にパッケージングするだけではなく、 検査も一緒に行うなどの付加価値をご提供できればと思っています。そういった事業にも着手することで、このセンターの機能をさらに拡大していく予定です。

川村 御社やこのロジスティクスセンターの強みをあわせて、相乗効果を生み出していくということですね。

秋山 そうです。また、そのような受託事業は出荷とちがって納期に余裕があるものが多いですし、ある程度先の予定まで読めるんですね。

そして、いま行っている物流の仕事には「特定の曜日や期間に出荷業務が集中すると」いう偏りが発生してしまいますが、加工や検品なども行うことで、働くスタッフの人数調整や人材の安定確保もしやすくなって波動も吸収できると考えています。

川村 自社内向けだけに留まらず、社外向けに外販や顧客開拓も行っていかれるのですね。

秋山 そのためにも、今期から物流企画課を設置して、物流プロジェクトも立ち上げてグループ全体の物流面を見ていくということを始めています。そこでは、もちろん自社やグループ拠点の効率改善なども行いますが、それに加えて外注してお借りしている倉庫の見直しなども実施中です。

また、現在、先ほどお話しした加工・検品の市場ニーズも調査しています。この事業が進んでいけば、「お預かりしたバルク品を保管して、加工・検品などを行って、完成品をまた保管する」「当社以外の製品を保管して、パッケージングして出荷する」といった倉庫業的な事業展開にも広がっていくかもしれません。

“過渡期”を乗り越えるために、協業も必要

川村 いろいろ挑戦してみようという柔軟性を持って、新しいことに取り組んでいかれるのですね。今回の対談の最初に「2022年に、事業会社を3社に分割された」というお話もお聞きしましたが、現在はいわゆる過渡期のようなものなのでしょうか。

秋山 そうですね、まさに過渡期です。分割されてから2年ほどは、まずはそれぞれが自社を軌道に乗せるために動いていて、物流に関しても各社で運用体制をつくって行っていました。そこで、3社だけでなく、グループ会社も含めて体制を見直し始めています。

川村 物流業界も2024年問題などで過渡期を迎えていますが、当社では「1社だけで物流に関するすべてを行うのではなく、複数社がタッグを組むことで仕事の依頼を確実に取って、確実に回していきましょう」という提案をしています。

そうすることで物流業界のさまざまな課題を解決していきたいと考えていますが、秋山さんはどのようにお考えですか?

秋山 私たちも、物流すべてを自社で行うことがベストとは考えていません。当センター開設時に自社での対応を想定していた受託案件について、「本当に自分たちでやっていくのがいいのか」ということを立ち止まって再検討して、外注することに決めたケースもあります。

今後、新たなビジネスも立ち上げていく計画ですが、それらに関しても社外の方々に外注や協業を行っていこうと考えています。やはり、自社でロジスティクスセンターを持っていても、物流業界の他社さんにお願いしたほうがいいものはお願いしていきたいですね。

川村 たとえば、「自社の倉庫ではエリア的に対応できないから」と自分たちで決めてしまって、せっかくの受注機会を諦めている企業さんも多いと思います。

そうではなく、自社の機能は活かしつつ、他社さんとのコラボレーションも視野に入れることが大切なのですね。本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

企業プロフィール

モリトジャパン株式会社

本社所在地:大阪府大阪市中央区南本町4-2-4

登記:2018年 ※モリト株式会社の会社分割に伴い設立

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