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BCPとは?物流側面における対策や事例3選を紹介

POINT!ここがポイント
  • BCP(事業継続計画)における物流拠点のセクションは拠点の分散、販路の分散、運送手段の選択、情報の収集で構成される
  • BCPにおける倉庫の選び方で重要なポイントは耐震と免震と制震を考慮する必要がある

物流におけるBCP対策の重要性の高まりは、物流事業者、関係者の実感するところではないでしょうか。

BCP(事業継続計画)は大規模な災害、あるいは事故などの発生時にも、業務に対する影響を最小限にとどめるとともに、すぐさま復旧・再開できるよう、日頃から対策しておくことをいいます。

東日本大震災にはじまり新潟県中越地震、熊本地震、北海道胆振東部地震など大規模災害に限らず、夏の豪雨、冬の雪害など、輸送網の寸断という物流の危機に晒されており、物流事業者、関係者はBCPに取り組まないわけにはいかない状況のはずです。

ここでは、物流の側面からBCP対策について事例を踏まえながら説明します。

BCPとは

物流事業者、関係者は、大規模な自然災害の発生時にも、輸送体制を維持できるよう、BCP(事業継続計画)対策を実施しなければなりません。

まずは、物流事業者、関係者の知っておきたいBCPの概要を説明します。

概要

BCP(事業継続計画)とは、物流事業者に限らず、様々な企業が災害からの早期復旧を求められていることを前提として、様々な想定のもと、不測の事態に備えた計画を立てることをいいます。

不測の事態に対してのリスクヘッジを検討すること、検討のうえ対策に取り組むことと言い換えることもできるでしょう。

なお、この様々な想定として、自然災害であれば、豪雨、豪雪、地震は想像しやすいはずですが、このほかにも大火災、テロなどの緊急事態が想定されます。

重要性やリスク

日本国内の社会生活を維持するうえで物流は重要な役割を果たしています。

例えば、輸送経路となっている国道の通行止めにより、ある地域の輸送が途絶えることになれば、小売店の商品はなくなり、宅配便を受け取ることもできなくなることが考えられます。

あるいは、ある製品を製造する工場まで原材料を運ぶことができず、製造に支障をきたすことも想定できるでしょう。

さらには、大規模な自然災害の発生時には避難所に食料を届けたり、被災地に物資を運んだりすることができず、被災者のさらなる困窮を招いたり、被災地の復興が遅れたりすることもあり得るものです。

視点を変えると、物流事業者のBCPの対策が不十分であったばかりに、物流が途絶え、小売り、製造などに影響を及ぼし、荷主の倒産、取引の停止など、自社の経営にとってリスクにもなりかねません。

BCPにおける倉庫の選び方で重要な耐震と免震と制震の違い

災害が起きたときに備えて、新規で拠点を構えたい物流事業者が多いでしょう。

ここでは倉庫探しで重要な、耐震と免震と制震の違いを解説します。

耐震

耐震は、建物の部材を補強することで、地震の揺れに耐える構造です。

小さな揺れであれば耐えられますが、大きな揺れになると建物自体が揺れてしまいます。

一戸建てやマンションなどの建物に採用されている構造であり、住居用としては最も一般的です。

しかし、建物が頑丈でも、繰り返し起こる揺れには弱い特徴があります。

倉庫に預けたものを固定しないと荷物が落ちてしまい、二次被害が起こりやすいです。

免震

免震は、建物と地盤の間に免震装置を付けることで、地面からの揺れを抑える構造です。

地震の力が建物に伝わりにくくなることで、災害時でも倒壊するリスクが少ない利点があります。

物の落下も防げて、家具が転倒したり移動したりすることも少ないです。

ただし、横揺れに強く、縦揺れに弱い特徴があります。

建物自体が強い構造ではないため、強風による耐久性が弱いです。

制震

制震は、制震装置で振動を吸収する構造です。

大きな地震が来ても小さな振動にすることで、建物全体の揺れを緩和します。

免震のように建物と地盤を切り離しているわけではなく、ダンパーと呼ばれる装置が揺れを熱エネルギーにする仕組みです。

装置を設置する場所は地盤だけではないため、設置場所と数で効果が大きく変わります。

BCPにおける物流拠点のセクション

BCP(事業継続計画)における物流拠点のセクションは、拠点の分散、販路の分散、運送手段の選択、情報の収集によって構成されています。物流事業者にとってのBCPでは、物流拠点のセクションについて分散化を進め、そのうえでの運送手段、情報収集について対策を進めるのがベストです。

以下に、BCP対策における物流拠点のセクションごとの重要性、必要性、緊急時のリスクなどを説明します。

拠点の分散

BCP対策において、物流の拠点の分散は重要な検討事項に他なりません。

例えば、物流事業者の集配送拠点を集約していたらどうでしょうか。地方の物流事業者で高速道路のインターチェンジにも近い、海沿いにあるところだとします。大規模な地震の発生時、地震と津波で被災すれば、物流事業者は荷物の集荷を受け入れることも、集荷できなければ当然、ピッキングなどをしたうえ、配送することもできません。

すべての業務の停止は避けられず、収益を得られないなか、国、自治体などの支援を受けられるとはいえ、集配送拠点の復旧にも莫大なコストを要することから、事業も立ち行かなくなる可能性があるのです。

ここまでは、例えではありますが、物流事業者の規模、所在地などに関わらず、集配送拠点をひと所に集約していると、被災した際のリスクが大きいことは間違いありません。

物流事業者の拠点を、複数、設けていれば、災害などの緊急時にも、他の拠点で荷物を集荷したり、ピッキングしたり、配送したりすることができ、イレギュラーな対応ではあるものの事業を継続することができます。

販路の分散

物流事業者のBCP対策では、販路の分散、つまり代替輸送(集配送)ルートを事前に決めておきます。

ある物流事業者のある取扱品目の集配送ルートを、国道Aに依存していたらどうなるでしょうか。国道Aでの通行止めの発生時には、ルーチンの集配送はできなくなるため、集荷先に向かい拠点まで戻ることができる代替輸送ルートを定めたうえ、多少、通常時と比べて輸送時間を要するとしても、集配送できるようにしておく必要があるのです。

大規模な災害時の想定も重要ですが、地域によるものの、例年の大雨、大雪、台風でも、輸送経路の寸断はあり得るため、その都度、対策するのではなく、BCP対策に則って、代替輸送ルートに切り替えるのが得策だといえます。

運送手段の選択

物流事業者のBCP対策として、販路の分散と同時に、運送手段の選択、つまり輸送モードの転換を事前に決めておきます。

輸送モードはトラックだけではありません。JR貨物、フェリーなども選択肢となります。

例えば、北海道の物流事業者が、北海道の生鮮品を関西に出荷するとします。普段はJR貨物のコンテナ輸送を利用してコストダウンしているものの、大雪のためJRの運休という事態に直面すれば、すぐさまトラックの手配にかかり、小樽港から舞鶴港までフェリー輸送して、関西圏に向かわせることもできるのです。

※輸送モード:物流における郵送の形になり、大きく分けると「トラック運送」、「船舶輸送」、「鉄道輸送」、「航空輸送」の4つのこと

情報の収集

物流事業者は、災害時、あるいは悪天候時などに、どのようにして情報を収集するかも、BCP対策として考えておかなければなりません。

例えば、緊急時に輸送中の車両はどこにいるのか位置情報を把握できるようにしておいたうえ、国道など道路の通行止めに際して、すぐに解除されるのであれば車両を待機させるべきか、それとも、長引くのであれば、代替輸送ルートの状況を確認して、すぐさま車両を向かわせるべきか判断するためにも、情報の収集と合わせてドライバーとどのように連絡を取るかについても、事前に決めておく必要があります。

BCP策定のためのガイドラインを参考

BCP(事業継続計画)対策をするにあたっては「荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン」(国土交通省)を参考にするといいでしょう。ここでは、物流事業者と荷主の連携体制の構築、さらなる強化に向けた流れ(モデル)を提示しています。

  • ステップ1 人材の育成(物流事業者・荷主)
  • ステップ2 行動マニュアルの作成(物流事業者・荷主)
  • ステップ3 行動マニュアルの共有(物流事業者・荷主)
  • ステップ4 行動マニュアル等に基づく共同した訓練の実施
  • ステップ5 行動マニュアル等の充実・見直し
  • ステップ6 BCPへの発展

物流事業者と荷主は荷主の求める事項と物流事業者の提案事項を共有したうえで、ステップ1でそれぞれのBCP担当者を確保したうえ教育し、ステップ2で行動マニュアル等の作成をし、ステップ3で行動マニュアル等の情報の共有を進めていきます。

以降は、ステップ4で定期的な訓練等を実施、ステップ5で訓練で明らかとなった項目の改善を図り、ステップ6でBCPとして策定します。なお、ステップ6までステップ4とステップ5は繰り返さなければなりません。

事例

最後に大企業のBCP(事業継続計画)対策の事例を紹介します。物流事業者の取り組み以外でも、大規模な物流事業者から中小規模の物流事業者まで、実際の事例をみることでBCP対策をイメージしやすくなるはずです。

株式会社ブルボン

全国で菓子を販売している㈱ブルボン(主力商品はアスパラガスビスケット)では、BCP対策として、天変地異、災害を想定して、工場などの施設が重大な被害を受け、操業停止となった場合、他工場からの製品供給を可能とできるように対策しています。

㈱ブルボンの工場施設は北陸に集中している実態から、想定以上の規模の天変地異、災害では工場の生産体制、製品の出荷に影響を及ぼすこともあり得るとしています。

株式会社JMA

BCP対策のコンサルタントである㈱JMAでは医療BCPの対策にも応じています。特に、医療という人々の生命にも関わる特性から、パンデミックを含む災害時には発災後生じる医療需要、新たに発生する救急対応などの業務の増大を見越したうえ、医療提供体制を維持できるよう、災害拠点病院をはじめとした医療施設、薬局などの関連施設を含め、地域全体でのBCP対策の必要性を踏まえたうえ、それぞれの地域に合わせたBCPの策定に取り組みます。

鹿島建設株式会社

建設業におけるBCP対策の推進を掲げている鹿島建設㈱。大震災前の今のうちに、協力会社、非協力会社問わず、BCP対策のひな型を提供する取り組みをしています。ひな形の項目を埋めていくことで、建設業で必要とされるBCP対策を網羅できる仕様です。災害に対する備えから、災害時の対応まで、自社だけでなく協力会社、取引先に対する対応まで、ひな形ひとつで確認できます。

まとめ

BCP(事業継続計画)の対策をすることで、物流事業者、関係者は、大規模な災害、事故の発生など、緊急時にも、適切な対応で難局を乗り切ることができます。

確かに、物流事業者にとって、BCPに取り組むことは業務外でのコストを強いられることに他なりません。ですが、将来的に難局を乗り切ることはできず倒産などの事態に陥ってしまう可能性があることを考えれば必要なコストであることは明白です。数年、数10年を見据えたBCPの対策に取り組むことをおすすめします。

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