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物流AIとは、物流業務でAIを活用することです。
業務の効率化や品質の向上、コスト削減などの目的を達成するためにAIを活用して企業が抱えている課題を解決します。
課題解決は多くの企業が取り組んでいて、既に成功事例が何件も出ているほどです。
そこで本記事では、物流AIを導入するメリットと運送・倉庫の導入事例を解説します。
- 物流業界では長時間労働やドライバー不足などの課題あり
- 物流AIで人員や時間コストの管理が可能
- 現状の課題を明確化してから導入することが必須
物流業界の課題
物流業界では深刻的な課題があり、全産業平均と比較しても劣ってしまう点が多いです。
そのような課題に対して、物流AIを活用すると解決が図れます。
まずは現状かつ今後、どのような課題があるのかを確認しておきましょう。
過酷な長時間労働
トラックドライバーは運び終わるまで運ぶ労働環境により、過酷な長時間労働が続くという課題があります。
不規則な労働時間になっていましたが、2024年から時間外労働の上限が年間960時間に規制されるようになりました。
「2024年問題」と呼ばれていて、規制の強化によって過酷な長時間労働が強いられることはありません。
ただし、売上や利益が下がったり、長距離輸送ができなくなったりなどの新たな課題が発生するのが見込まれています。
つまり、限られた時間の中で効率的な物流業務を行うのが今後の課題です。
再配達による非効率
効率的な配送をしても、注文主がいないと再配達になる場合があります。
EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数が2021年までの直近5年で約9.3億個増加したほどです。
しかし、2021年4月時点で11.2%、同年10月時点で11.9%の再配達が行われたというデータがあります。
2021年度の取扱個数が約49.5億個なので、約5億個が再配達されている計算です。
再配達を労働力に換算すると、年間約6万人のドライバーの労働力に相当します。
走行距離の増加によってCO2の排出量も増えてしまい、年間で約25.4万トンと推測されています。
※EC市場:インターネット上で受発注の取引をする場のこと
積載率の低下
物流業界では積載率が低下している課題があり、出荷量が小口化しています。
理想はトラックに荷物を多く積んで、一度の配送で届けることです。
しかし、配送件数が増加して、配送や荷物の積込みや荷卸しに時間がかかってしまいます。
トラックの台数が増えても貨物重量が減っているので、積載率は下がりやすいです。
また、小口化が増加して積載率が低下すると、トラックのエネルギー使用量を悪化させてしまいます。
CO2削減を考慮して、いかに効率よく配送できるかがポイントです。
ドライバーの不足・高齢化
物流業界ではドライバー不足が深刻な問題となっていて、高齢で退職する人も考慮しなければなりません。
ドライバーが減ってしまうと1人当たりの負担が大きくなり、需要と供給のバランスが保持できません。
運ぶ荷物が多くてドライバーが少ない状態でも、納期に間に合わなければ発注主に迷惑がかかります。
積載率が高くなる利点がありますが、運びきれない荷物が増えると物流サービスの提供ができません。
ドライバー不足に対応するために、若手人材の確保や従業員1人当たりの負担を減らす工夫が必要です。
物流AIの導入で課題解決できるメリット
物流AIを導入すると、効率的に課題を解決できるようになります。
人間にしかできない業務とAIに任せられる業務を分けることで、少ない人員でも問題なく業務を遂行できるでしょう。
物流AIの導入で課題解決できるメリットは何なのか、解説していきます。
倉庫業務にかかる人員や時間のコスト削減
倉庫業務は繫忙期と閑散期があり、人員や時間のコスト調整は困難なものです。
繁忙期で人員を減らせば従業員1人当たりにかかる負担が大きくなり、閑散期で人員を増やすとコストがかかります。
結果的に時期と人員がアンバランスになると、スムーズな業務ができません。
しかし、AIを活用すれば人員を確保しなくても業務ができるようになります。
例えばピッキング業務や棚卸しの作業をする場合、AIに任せれば別の業務に集中できて効率的です。
最適な箇所に最適な人員をかけることで、どの時期でも平準化して業務を遂行できます。
※ピッキング:荷物を保管場所から取り出して配送先ごとにわける作業
入庫作業で商品ごとのチェックを自動化
物流AIに任せると、入庫作業のチェックを自動化できるメリットがあります。
例えば入庫した商品の数量や品質を損なわないように保管する業務は、AIに任せられるでしょう。
商品に合わせて適切な温度や湿度で管理が必要になり、いつまでも人が管理するわけにはいきません。
AIで管理しておけば、人がいなくても24時間対応可能です。
他にも伝票通りに商品が届いているかも、AIで管理ができます。
ただし、荷物の破損や汚れは人の作業が必要になるので、分業化の調整が重要です。
ドライバーへの遠隔指示
物流AIは倉庫業務だけではなく、運転しているドライバーにもアプローチできるメリットがあります。
AIとカメラを活用することで、ドライバーが安全に走行できるようにサポートするのが導入目的です。
例えばドライバーが走行中に居眠りをしてしまった場合、事故を起こしてしまう可能性があります。
他の車両への迷惑、荷物の破損、納期遅れなど大規模な影響が生じるでしょう。
しかし、物流AIがあれば、居眠りをしたドライバーを検知して起きるように呼び掛けてくれます。
事故の回避につながる可能性が十分にある機能で、安心してドライバーに配送を任せられるでしょう。
物流AIを運送業務に導入した企業事例
物流AIを運送業務に導入すると、運送業務の効率化が図れます。
必要な情報を収集して、収集した情報を分析して反映できるのがポイントです。
どのような事例なのか、1つずつ見ていきましょう。
日本郵便株式会社:配送ルートの最適化
日本郵便株式会社では、物流AIの導入によって配達ルートの最適化を行っています。
配達ルートの最適化を行うことで、走行時間が削減されて効率的な業務を行えるからです。
普段はいつも通りのルートで配達するのが多いですが、時間帯や事故の影響などにより、渋滞が起きる可能性があります。
そこで配達ルートの最適化を物流AIで行うことで、状況に合わせて最短のルートを選べます。
走行する配達車にGPSやデータを備えておくだけで、ルートを最適化できる仕組みです。
配達員の負荷軽減や業務経験が浅い人でも簡単に配達できる仕組み作りを行い、働きやすい環境を用意しています。
参考:日本郵便株式会社「AIによる配達ルート自動作成などを活用した配達業務支援システムの試行導入」
ヤマトホールディングス株式会社:配送業務量の予測と適性配車
ヤマトホールディングス株式会社では、ビックデータとAIを導入・活用して効率的な配送の実現に成功しました。
導入前ではルートが固定化した配送体制で配送先にアイテム別で対面納品していました。
気候変動リスクや物流で発生するCO2の増加、労働力の不足などに対して非効率的です。
しかし、導入後は販売・物流・商品・需要トレンドなどのビックデータをAIで分析して業務量予測をします。
その後は配車計画システムで、業務量予測に応じた配送体制を整えて、検品・配送をする流れです。
参考:ヤマトホールディングス株式会社「ビックデータ・AIを活用した配送業務量予測および適性配車のシステム導入について」
物流AIを倉庫業務に導入した企業事例
運送業務だけではなく、物流AIは倉庫業務でも活躍します。
契約や入庫対応、転記作業など、管理体制を整えるのが重要なポイントです。
どのような物流AIの事例があるのか、自社の課題と照らし合わせて確認してみてください。
富士通株式会社:フォークリフト操作のAI判定システム
物流業界ではフォークリフト運転者などが行う荷役作業における労働災害により、死亡事故が毎年多発しています。
そのため富士通株式会社は、安心・安全な業務が行えるように、フォークリフト操作のAI判定システムを導入しました。
システムには危険運転シーンを切り出して、評価業務における効率性の向上があります。
走行状態・運転者の乗車状態・爪の昇降位置の状態を検知することで、どのシーンが危険運転になるかを教えてくれる仕組みです。
従来はドラレコ映像の検知や見落としなどによる人為的なミスがありましたが、AIを活用すると標準化された評価で安全な運転ができます。
危険運転シーン検知の根拠を可視化した画面表示ができて、どのタイミングで安全係数が変動するのかを確認できます。
参考:富士通株式会社「サントリーロジスティクス様において、フォークリフト操作のAIシステムにより安全運転評価業務を効率化」
株式会社日立製作所:Hitachi AI Technology/倉庫業務効率化サービス
倉庫内のデータや作業実績、サプライチェーン全体の情報を分析・学習することで、業務の効率化を継続しています。
具体的には商品ピッキング作業指示や倉庫内の商品配置指示などで、経験や勘に頼る人為的な判断が不要になりました。
商品ピッキング作業は、日々インプットした蓄積データより、商品の入れ替えや受注状況に合わせた効率的なピッキングができます。
商品配置プランは、作業実績から効率の向上が期待できるプランを立案することで、適切な商品配置にするように改善できます。
参考:株式会社日立製作所「Hitachi AI Technology/倉庫業務効率化サービス」
※サプライチェーン:商品が消費者に届くまでの一連の流れ
まとめ
物流AIを導入することで、現状抱えている長時間労働やドライバー不足などの課題を解決できます。
導入事例は幅広く、いかに業務を効率的に行うのかがポイントです。
自社と同様の事例を抱えている企業は、本記事を参考にして物流AIの導入を検討してみてください。
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