貨客混載とは?制度改正で全国に広がる物流形態と各企業の取組事例を解説

タクシーやバスなどで、人が乗車しているもののスペースが余っている状況はよくあることです。

そこで企業や国が目を付けたのは貨客混載であり、余ったスペースに貨物を乗せて運べば効率的な配送ができます。

高いトラックの積載率やドライバー不足、時間外労働の規制など、物流の課題を多く抱えている物流企業にとって得策な方法です。

本記事では貨客混載の詳細と各企業の取組事例を解説します。

ぜひ今後の参考にしてみてください。

POINT!ここがポイント
  • 貨客混載とは、貨物と旅客が1つの乗り物に乗って輸送する形態
  • 制度改正で過疎地域から全国に貨客混載が適用
  • 生産性の向上や物流の効率化、O2削減などの効果あり

貨客混載とは?

貨客混載とは、貨物と旅客が1つの乗り物に乗って輸送する形態です。

「貨」は貨物、「客」は旅客を表し、効率的な物流を実現できます。

貨客混載が行われるのは、以下の乗り物です。

  • 鉄道
  • 路線バス
  • タクシー
  • 飛行機
  • フェリー

貨客混載をすれば、貨物と旅客の移動を1台で完結できます。

過疎地域で乗員が少なく、車内にスペースがある場合が最適です。

国土交通省も推進している輸送形態で、2023年6月30日から貨物と旅客の両方に許可を得た事業者に限り、全国でも適用されるようになりました。

貨客混載の過去と現在を比較

貨客混載は2021年に制度の見直しが提案されていて、2023年には実施区域の見直しなどの措置を講じるための通達を一部改正しました。

過去と現在の貨客混載を比較して、どのような変化が起きているかを確認しましょう。

タクシー貸切バストラック
制度改正前過疎地域のみ過疎地域のみ過疎地域のみ
制度改正後全国で実施可能全国で実施可能全国で実施可能
備考貨物自動車運送事業の許可を取得して、荷物を運べる貨物自動車運送事業の許可を取得して、荷物を運べる旅客自動車運送事業の許可を取得して、旅客を運べる

これまでの貨物

これまでの貨物を2023年5月29日以前にした場合、貨客混載は過疎地域を中心に行われていました。

過疎地域とは、人口3万人に満たない市町村地域のことです。

乗車バス事業者は全国で貨客混載を実施していましたが、タクシー・貸切バス・トラックは過疎地域のみ適用されていた時期になります。

しかし、2021年4月に複数の地方公共団体がスーパーシティ提案の枠組みを通じて、貨客混載の見直しを提案しました。

過疎地域を中心に行うだけではなく、他の市町村でも貨客混載を実施するべきという提案です。

2022年9月26日の国家戦略特区ワーキンググループの議論の終着点として、現行制度下ではカバーできないニーズ等はアンケート調査で対応を検討することになりました。

これからの貨物

2023年5月30日からの貨物において、貨客混載の見直し等の措置を講じるために通達を一部改正しました。

調査をしたところ、過疎地域以外でも貨客混載の実施に係る具体的なニーズを確認できたからです。

貨物のみ、または旅客のみを運ぶのではなく、両方を乗せた方が効率的に運べます。

今まで過疎地域のみだったタクシー・貸切バス・トラックは、制度改正後、全国で貨客混載の実施をするようになりました。

なぜ貨客混載が注目されているのか?

貨客混載が注目されている理由は、トラックドライバーが不足しているからです。

2024年問題でも取り上げられていますが、ドライバー不足は深刻化しています。

EC事業の普及もあり、荷物を運ぶ小口配送量が増えている状況です。

しかし、出荷量が少ない過疎地域にトラックを回しても、積載率が低くて非効率な輸配送になるでしょう。

2024年4月から時間外労働の規制もあり、1日に運べる量が限られてきます。

そのため、人手が少ない状況でも積載率が高い状態で運ぶのが重要です。

そこで効果的な対策として注目されているのが、貨客混載です。

鉄道やフェリーなどに切り替えて、旅客とともに運べば人手不足の状況でも物流課題に対応できます。

貨客混載のメリット

貨客混載をすると生産性が向上したり、物流が効率化したりしてメリットが大きいです。

その他環境問題に対して、CO2排出量の削減にも貢献できます。

貨客混載のメリットについて、詳しく見ていきましょう。

生産性の向上

貨客混載をすると、生産性が向上するメリットがあります。

例えば地方ではバスの空きスペースがあり、活用できる余力は十分にあるため、ビジネスチャンスと言えるでしょう。

貨客混載をすれば地域住民はバスを使えて、バスの空きスペースを有効に使えます。

積んだ貨物がバスの停留所であれば、生活基盤が崩れることなく維持・向上が図れるのは大きな強みです。

トラックが小口配送をしなくても、バスが物流の役割を果たせば物流の流れを維持できます。

物流の効率化

終着点までトラックが届けるのではなく、一部を鉄道や路線バスなどに任せれば効率的に配送できます。

現状は生産地から物流拠点まで運び、物流拠点から消費地まで運ぶ流れが物流の仕組みです。

主にトラックが担当していますが、別の乗り物に貨物を任せれば効率化が図れます。

例えば大阪から東京まで荷物を運ぶ場合、トラックではなく鉄道を使えばスピーディーです。

車両の時間を調べると、大阪から東京まで約6時間かかります。

対して電車の時間を調べると、大阪から東京まで約3時間です。

東京から都内に配送する場合のみトラックで届ければ、時間外労働が規制されても輸配送できます。

CO2排出量の削減

貨客混載でトラック輸送から一部別の輸送手段に切り替えれば、CO2排出量の削減につながります。

例えばトラックで運行していた区間の一部を路線バスに切り替えると、環境負荷の低減を実現できるでしょう。

2019年度でCO2の排出量が11億800万トンあったことがわかり、どのように問題解決するかに注目が集まっています。

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて動いている傾向もあり、省エネや脱炭素エネルギーの利用のためにCO2排出量の削減が必要です。

貨客混載をして車両の使用台数を抑えれば、CO2の排出を抑えられます。

貨客混載の事例

貨客混載は海外だけではなく、日本全国で取り組まれています。

どのような事例があるのか、具体的な取り組み内容を見ていきましょう。

中国|最高時速350kmの新幹線

中国は2021年に最高時速350kmの新幹線を利用して、貨客混載を行えるかに注目が集まっています。

詳細は明らかになっていませんが、1,500kmの距離を5時間以内に運べるそうです。

輸送区間は北京から上海までをイメージしていて、広大な国土を持つ中国に適した策と言えるでしょう。

輸送力は航空機のジャンボジェット「ボーイング747カーゴ(貨物)機1機分」に匹敵するほどで、100〜120トン弱を運べます。

積載容量は800㎡以上あり、車両内の全スペースの内、85%を貨物積載に使えるのが特徴です。

佐川急便|交通機関の事業者の業務委託契約

佐川急便では交通機関の事業者と業務委託契約を結び、輸送ネットワークを構築した貨客混載を実現しています。

例えば長崎県の松浦鉄道と協力した事例を挙げると、実にシンプルです。

平戸営業所から松浦駅まで佐川急便が荷物を運び、松浦駅から潜竜ヶ滝駅まで松浦鉄道で運びます。

潜竜ヶ滝駅からは佐川急便のトラックで各消費地まで運ぶ流れです。

鉄道社内の専用スペースで荷物の入ったかごを固定するため、走行中の振動に問題なく対応できます。

ヤマト運輸|路線バスを活用

ヤマト運輸は路線バスを活用した貨客混載の開始をして、バス路線の生産性向上による路線網の維持と物流の効率化による物流網の維持に貢献しています。

既に早い段階から貨客混載を実施しており、例えば2015年には岩手県盛岡市と宮古市、宮古市から同市茂重半島に導入済みです。

路線バスの後方の座席を減らすことで、一定量の級急便を積載できる荷台スペースを用意しています。

物流の仕事をしながら乗客を目的地まで案内できることで、交通インフラの維持・向上につながりました。

病院やスーパーなど、多様な施設にアクセスする手段として、路線バスが利用されています。

愛知県|貨客混載型の自動運転とMaaSの実証実験を実施

愛知県の高蔵寺ニュータウンでは、貨客混載型の自動運転とMaaSで商品配達を行う実証実験を2022年に行いました。

仕組みは商品注文をしたり乗車予約をしたりすると、運行管理システムに通知が届きます。

通知が届くと商品の受け渡しと乗車手配をして、車を発進させる仕組みです。

乗車した人はタクシーのように目的地まで乗車できて、運賃を払って降車します。

その後は車で消費地まで走行して、商品を渡せば完了です。

人の乗降者を優先することでサービス利用者の満足度が高まり、その合間に商品配達ができるため効率的な運行ができます。

複数のパターンを盛り込んで巡回ルートの自動調整を行えば、本システムの利用が普及していくでしょう。

北海道|タクシーで生活用品や医薬品等を運送

北海道北斗市では、タクシーで生活用品や医薬品等を運送する貨客混載を実施中です。

物流事業者は買物難民となる高齢者へのアプローチに効果的と捉えていて、タクシー事業者も生活用品の需要が高いという回答をしています。

ただし、消費者が求める配送料金と、タクシー事業者が必要とする配送料金にアンバランスがあるのが課題です。

地域住民も利便性が高いものの、利用しやすい配送料金の設定を求めています。

千葉県|ラストワンマイル配送の事業者の確保

千葉県館山市では、ラストワンマイル配送のためのタクシー事業者による農水産物等の貨客混載で運送しています。

農場・漁港から館山駅まで路線バスを活用して、館山駅から東京駅およびバスタ新宿まで高速バスを活用する流れです。

高速バス終点から先はいくかの案が出ていて、オーソドックスなのはバス事業者が店舗へ軽貨物輸送すれば、費用や店舗等の負担を軽減できます。

他にも高速バスの回送便としてバス待機所まで走行後、タクシーや配送事業者車両で店舗に運ぶ方法もあって画期的です。

都心エリアでタクシー事業者による貨客混載の運送ができれば、農林水産等の配送サービスにニーズを確保できると考えられています。

奈良県|公共交通網の維持と物流網の確保

奈良県奈良市では、公共交通網の維持と物流網の確保をするために、貨物運送事業者による貨客混載運送を実施しています。

奈良市の市街地から1時間程度の距離がある月ヶ瀬地区では、人口減少と高齢化が課題になっている地域です。

地域の指導手段の確保と物流網の維持が必要になるため、貨客混載の活用を実現しようという流れになっています。

物流事業者は行政とも連携したサービスの提供が必要と捉えていて、今後も貨客混載を実施するエリアの拡大を検討しているようです。

まとめ

貨物と旅客が相乗りする貨客混載の輸配送を実施すれば、効率よく運べます。

著しい人口減少が問題となっている過疎地域でも、交通インフラ維持に貢献できるでしょう。

その他、トラック輸送で排出されるCO2を削減できて、環境にかかる負荷を軽減できます。

全国で実施可能となっているため、各企業も各交通機関と連携した物流の構築をすると良いでしょう。

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