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【前編】物流業界の現状は結局どう変化するのかをわかりやすく解説

経済産業省・国土交通省・農林水産省が「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」と題して、物流業界の課題を取り上げています。

掲載されている記事次第や資料、議事要綱などは100件以上もあり、日々の業務に追われて確認する暇がなかなか無いでしょう。

そこで本記事では、物流業界の現状はどのように変化していくのかをわかりやすく解説します。

本記事で解説するのは、第1回検討会が開催された2022年9月2日に発表された内容です。

POINT!ここがポイント
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で2020年は変化の年だった
  • 仕事量が多いものの、労働時間や業務負荷に課題あり
  • ドライバーの収入を上げるための運賃確保が必須

物流業界への影響と現状

2020年前後を見た時、物流業界には大きな衝撃が起こりました。

国内貨物輸送量が大幅に減少している中、新型コロナウイルス感染症の影響によって宅配便取扱量が増加したからです。

EC事業が急速に普及したことで、物流業務が活発的に行われました。

どのような影響があったのか、詳細を見ていきましょう。

新型コロナウイルス感染症が広がった後の物流事業者への影響

国内貨物輸送量は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年から大幅に減少しています。

2010年から2019年まではほぼ横ばいの推移でしたが、2020年から急激に減少しました。

国内貨物輸送量をトンキロベースで見ると、自動車が5割、内航海運が約4割を占めていて、鉄道の全体の5%ほどしか占めていません。

貨物量の減少は新型コロナウイルス感染症の影響による経済の停滞が原因とされています。

また、貨物量が減少する中で、宅配便が増加しました。

宅配便は自粛要請によって国民が外出を控え、通販需要が拡大したことが原因とされています。

中には体調を崩した時や人が密集する施設に行くのを避ける時に通販を利用した人が多いでしょう。

宅配便取扱個数を2019年と同じ月を比較したとき、2020年以降100%を下回る月が無いほどです。

各物流業界の現状

各物流業界の現状を見た時、中小企業がほとんどの事業に従事しています。

以下は2019年の営業収入、事業者数、従業員数、中小企業率などの各物流業界の概要がまとまった表です。

トラック運送業と倉庫業は営業収入が多く、多くの人が携わっています。

区分営業収入事業者数従業員数中小企業率
トラック運送業19兆3,576億円6万2,599人194万人99.9%
JR貨物1,610億円1人5,000人-
内航海運業8,604億円3,376人6万9,000人99.7%
外航海運業3兆2,494億円190人7,000人58.7%
港湾運送業9,784億円859人5万1,000人88.2%
航空貨物運送事業2,719億円22人4万2,000人50.0%
鉄道利用運送事業3,311億円1,140人8,000人86.0%
外航利用運送事業3,797億円1,105人5,000人81.0%
航空利用運送事業6,397億円203人1万4,000人69.0%
倉庫業2兆3,202億円6,382人11万5,000人91.0%
トラックターミナル業319億円16人500人93.8%
28兆5,813億円-225万7,000人-

EC市場規模の拡大したことで宅配取扱実績が急増と再配達の削減する結果に

新型コロナウイルス前の再配達率は、2019年10月期に15.0%でした。

過去の記録を見ても再配達率が15%〜16%を行き来していて、大きな変化はありません。

以下は2017年10月期から2019年10月期の記録です。

  • 2017年10月期:15.5%
  • 2018年4月期:15.0%
  • 2018年10月期:15.2%
  • 2019年4月期:16.0%
  • 2019年10月期:15.0%

しかし、2020年4月期になると自宅にいることが多くなり、短期間で8.5%まで落ちました。

自宅にいると不在で再配達する手間がなくなるため、トラックドライバーにとって効率の良い配達ができます。

その後は以下のように11%台をキープしていて、再配達が削減した時期でした。

  • 2020年4月期:8.5%
  • 2020年10月期:11.4%
  • 2021年4月期:11.2%
  • 2021年10月期:11.9%
  • 2022年4月期:11.7%

また、宅配便取扱実績は2019年EC市場の拡大により、大幅な上昇傾向になっています。

EC市場規模は以下の通りで、公開されている2013年から2021年のデータの中で前年より減少している年がないです。

物流業界にとっては運ぶ商材が増え、なおかつスムーズに消費地へ届けられる時期でした。

物販系分野BtoCEC市場規模EC比率
2013年5兆9,931億円3.85%
2014年6兆8,043億円4.37%
2015年7兆2,398億円4.75%
2016年8兆43億円5.43%
2017年8兆6,008億円5.79%
2018年9兆2,992億円6.22%
2019年10兆515億円6.76%
2020年12兆2,333億円8.08%
2021年13兆2,865億円8.78%

トラック輸送やドライバーへの影響

物流業界を広く解説しましたが、物流に携わるトラック輸送やドライバーにはどのような影響があったのでしょうか。

輸送する品目、ドライバーの働き方、現場が抱えている事態などを解説します。

営業用トラックの輸配送量が豊富

輸送手段は自動車、内航海運、JR貨物の3つです。

トンベースで見るとJR貨物の輸配送量は微々たるもので、自動車と内航海運が輸配送を占めています。

中でも自動車の営業用トラックにおいては、以下の品目を7割以上も運んでいるほどです。

  • 日用品
  • 金属鉱
  • 食料工業品
  • 紙・パルプ
  • 繊維工業品

自動車には営業用トラックの他に自家用がありますが、営業用に勝っているのは以下の2つのみです。

  • 砂利・砂・石材
  • 廃棄物

さらに主要品目別でトラック輸送量を見ると、以下を2億トン以上運んでいます。

  • 特種品
  • 砂利・砂・石材
  • 日用品
  • 窯業品
  • 食料工業品
  • (廃棄物)
  • 金属
  • 機械

特殊品に関しては輸送量が圧倒的に多く、10億トン以上運んでいます。

2番目に多い砂利・砂・石材は4億トン以上の輸送量なので、倍以上の差です。

トラックドライバーの働き方

労働力不足が課題になっていて、トラックドライバーが足りないと感じている企業が多いのが現状です。

全産業における課題でもあるため、少子高齢化の社会が改善しない限り、現状の課題が解決する可能性は低いでしょう。

トラックドライバーの年齢は若年層と高齢層の割合が低く、中年層の割合が多い傾向です。

労働時間は全産業平均より2割長いですが、2024年4月から時間外労働の規制により改善していきます。

つまり、現状は若年層の人手を集めつつ、適切な労働時間で働くことが重要です。

トラックドライバーの人員不足に関しては最重要課題で、2028年度には約27.8万人のドライバーが不足すると予測されています。

トラックドライバーが不足して平均年齢が上昇している事態が発生

1995年から2015年までの20年間で、道路貨物運送業の運転事業者数が21.3万人減少している実数値があります。

2015年から2030年までの15年間で24.8万人が減少するという予測がされていて、担い手の確保が必要です。

しかし、労働時間や業務負荷などにより、人材確保が上手くいかない原因があります。

また、平均年齢の推移が上がっていくため、ゆくゆくは現状の中年層が高齢層になり、若年層と中年層がいない危機的な状況になり得るでしょう。

トラックドライバーの年収が全産業平均と比較して5%~10%減少

ドライバーの収入が上げにくい状況で、全産業平均と比較すると年収は5%〜10%低い状況です。

例えば全産業が年収501万円だった2019年では、大型トラックの年間所得額が456万円でした。

中小型トラックになるとさらに低くなり、大型トラックの年間所得額456万円に対して419万円です。

全産業と比較すると82万円の差があり、年収を上げないと物流業界から人員が離れていくでしょう。

平均営業費用が23億2,992円ある中、一般管理費が15%、運送費が85%になっています。

運送費のうち40%は運送に関わる人件費を占めていて、収入を上げるには原資となる運賃確保が必要です

以下にトラック運送事業の営業費用の内訳を表にしました。

一般管理費(計15%)運送費(計85%)
人件費:9%その他:6%事故賠償費:40%燃料油脂費:12%修繕費:6%減価償却税:6%保険料・施設使用料・自動車リース・施設賦課税・道路使用料・フェリーボート利用料:9%その他:12%

トラック運転手に対するよくある質問

トラック運転手には2024年4月1日から「自動車運転者の労働時間などの改善のための基準(改善基準告示)」が適用されます。

トラック運転手が思う「結局自分たちに何が起こるのか」を質問としてまとめたので、参考にしてください。

トラック運転手の拘束時間は?

年間の総拘束時間は現行で3,516時間あったのに対して、見直し後は原則3,300時間です。

1か月の拘束時間が約10時間減り、現行原則293時間が原則284時間、現行最大320時間が最大310時間に見直されました。

ただし、見直し後は以下3つに留意してください。

  • 原則284時間を3か月以上連続で超えてはならない
  • 最大310時間は1年の拘束時間が3,400時間を超えない範囲で年6回まで
  • 月の時間外と休日労働の時間を100時間未満にするよう努める

1日の拘束時間は13時間を超えない範囲で、延長する場合は15時間が最大拘束時間です。

ただし、1週間の運行が450km以上の長距離貨物運送で、勤務先を出発してから帰着までの休息期間が住所以外の場合は最大拘束時間が1時間延長されて16時間にできます。

1週につき2回までの制限がありますが、14時間を超える拘束はほとんどないでしょう。

トラック運転手の休息期間は?

勤務が終わった後は、継続11時間以上の休息期間が必要です。

継続9時間を下回らないように、休息期間の取り扱いに注意してください。

ただし、1週における拘束時間が16時間の場合、継続8時間以上の休息期間に設定できます。

勤務先を出発してから帰着した後、休息期間のいずれかが9時間を下回ると継続12時間以上の休息期間が与えられます。

トラック運転手の運転時間は何時間が限度?

2日を平均すると1日あたり9時間になり、1週あたり44時間を超えない時間になります。

連続運転時間は何時間が上限?

4時間を超えないのが上限になります。

ただし、10分未満の運転の中断が3回以上なく、計30分以上の運転をし続けている場合です。

サービスエリアやパーキングエリアが満車状態で駐車または停車して4時間を超える連続運転を避けられないときは、30分まで延長できます。

まとめ

物流業界の現状はさらに課題が深刻化すると予測されていて、トラックドライバーの人員は年々減少していきます。

新型コロナウイルス感染症の広がりで物流業界が一時的に急成長を遂げましたが、根本的な解決に至っていません。

トラックドライバーの拘束時間や休息期間などの改善は適用されるものの、企業にとっては利益の減少につながる恐れがあります。

現状に対応するために、ドライバーの収入を上げる運賃確保をしながら利益を上げる工夫が必要です。

本記事では経済産業省・国土交通省・農林水産省が取り上げている「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」の前半部分を解説しました。

後編では、上記課題の後半部分を解説します。

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