目次
物流の現場は、輸送・保管・納品・在庫管理など、複数の業務が複雑に絡み合って成り立っています。これらを個別に管理しているだけでは、非効率やトラブルが起きやすく、全体最適から遠ざかってしまいます。そこで登場するのが「物流統括管理者」です。
特に、特定荷主および特定連鎖化事業者は、物流統括管理者の選任が義務付けられています。事業規模が大きく物流全体に与える影響が大きいため、効率的かつ持続可能な体制を整える責任を果たす必要があるからです。
この記事では、物流統括管理者の役割と具体的な業務内容、そして必要とされる背景について解説します。
- 物流統括管理者は物流全体を最適化する「司令塔」
- 中長期計画、ドライバー負荷軽減、効率化の3つの業務が柱
- 特定荷主や特定連鎖化事業者には選任が義務付けられている
物流統括管理者とは
物流統括管理者は、企業の物流業務を横断的に管理し、効率性と持続性を両立させる責任者です。現場の監督にとどまらず、輸送・在庫・納品・荷役を含む全体像を俯瞰し、計画的に改善を進めます。
また、制度上の役割も重視されており、特定荷主や特定連鎖化事業者には物流統括管理者の選任が求められています。これは、物流全体を安定的に提供するために欠かせない「全体管理の担い手」としての役割を担うためです。
物流統括管理者の3つの主要業務

物流統括管理者には、単に現場を監督するだけでなく、企業全体の物流を持続的に機能させるための明確な役割が与えられています。ここでは、それぞれの業務について詳しく見ていきましょう。
1. 中長期計画の作成
物流は日々の輸送対応だけでなく、数年先を見据えた戦略的な取り組みが求められます。
統括管理者は、需要の変動や人材確保の見通し、インフラ投資の必要性を踏まえて、中長期的な計画を策定します。
計画が不十分だと、突然の需要増加や社会環境の変化に対応できず、供給網が滞るリスクが高まる可能性も。先を読む計画力は、企業全体の安定した成長に直結するのです。
2. ドライバー負荷軽減と輸送集中の是正
物流現場では、特定の時間や地域に輸送が集中することで、ドライバーに過大な労働負担がかかることが大きな問題となっています。
統括管理者は、こうした偏りを是正するための事業運営方針を立案し、現場に浸透させます。納品時間の分散化、共同配送の導入、配送ルートの見直しなどが代表的な手段です。
これにより、ドライバーの働きやすさを確保すると同時に、物流の安定稼働を維持できます。
3. 輸送・荷役の効率化
日々の輸送や荷役作業を効率化することも統括管理者の重要な業務です。
例えば、荷待ち時間を削減する仕組みづくりや、パレット・コンテナといった標準化資材の積極利用が挙げられます。
さらに、デジタル技術を活用してルートの最適化や作業手順の改善を行うことで、ドライバーの拘束時間を削減し、生産性を高められます。
効率化の取り組みは、コスト削減だけでなく、労働環境の改善にも直結するのです。
物流統括管理者が必要とされる背景
物流統括管理者が求められる背景には、いくつかの大きな要因があります。ここでは3つの背景について解説します。
ドライバー不足と過重労働の深刻化
物流業界は長時間労働が常態化しやすく、ドライバーの離職や人材不足を招いてきました。
特に2024年問題によって時間外労働に厳しい上限規制が設けられ、従来の働き方が通用しなくなっています。
この変化に対応するには、全体の物流設計を見直し、効率化を進める役割が不可欠です。
物流の持続可能性が社会的に強く求められている
環境負荷の低減や輸送の効率化は、企業の競争力だけでなく、社会的責任(CSR)の観点からも避けられない課題となっています。燃料消費を抑えるルート設計やモーダルシフトなどは、統括管理者の判断と調整によって実現されます。
制度上の義務化があること
も重要です。特定荷主や特定連鎖化事業者は、物流統括管理者を選任することが法律で定められており、単なる「推奨」ではなく「必須の責務」となっています。
これは、大規模事業者が物流全体に与える影響を考慮し、業界全体の安定化を図るとともに、ドライバーの労働環境改善や環境負荷低減といった社会的課題に対応する狙いがあります。
まとめ
物流統括管理者は、物流全体を見渡し、効率性と持続可能性を両立させる「司令塔」です。特に「中長期計画の作成」「ドライバー負荷軽減と輸送集中の是正」「輸送・荷役効率化」の3つの業務は、現代物流を支える柱となっています。
加えて、特定荷主や特定連鎖化事業者には選任が義務付けられており、法的にも欠かせない役割です。物流業界を支える重要な役割の一つとして、基本的な理解を押さえておくことが大切です。
物流統括管理者に関するよくある質問とその答え
Q1. 物流統括管理者はどの会社でも必要ですか?
A. 義務化されているのは「特定荷主」「特定連鎖化事業者」です。ただし規模に関係なく、物流全体を統括する役割を置くことは業務効率化につながります。
Q2. 倉庫管理者との違いは何ですか?
A. 倉庫管理者は倉庫内に限定された業務を担当します。一方で物流統括管理者は、輸送・納品・荷役まで含めて全体を俯瞰し、持続的に運営する責任を負います。
Q3. 物流統括管理者になるために資格は必要ですか?
A. 法律上、必須資格は定められていません。ただし物流技術管理士やロジスティクス関連資格を取得すれば、業務理解が深まり、信頼性も高まります。




