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所沢エリアで平ボディのトラックを強みに活躍している吉田運輸株式会社(以下、吉田運輸)は、東京都の貨物輸送評価制度で三ツ星を獲得するなど、環境に配慮した経営にも取り組まれています。今回、吉田社長にご協力を頂き、株式会社ロジテックの代表取締役である川村がモデレーターとなり、新たな試みや共有・解決すべき課題について対談を行いました。その内容をここでご紹介します。
吉田運輸の歴史とその経営哲学
川村 吉田運輸の創業は昭和54年ですが、歴史を簡単に教えてください。
吉田 私の父が創業した会社です。私は、大学を出てから、ロードスターの会社「ユーノス」で車の販売をしていました。しかし、就職して3年が経ったころ、父から「会社を継ぐように」という強い要望があり、家業に戻ることになったわけです。
川村 ロードスターの販売ですか。その話しも興味ありますが、いずれにしても、外部での経験は経営者になってから役立ったのではないでしょうか。
吉田 はい、家業を継ぐ前に外で働いた経験はとても貴重でした。その経験を生かし、私が実質的に吉田運輸の経営を引き継いだのは2003年。2代目の社長に就任したのは2021年です。
川村 経営を引き継がれた2003年当時、吉田運輸はどのような規模の会社だったのでしょうか。
吉田 ドライバーが20人くらいの会社で、製菓メーカーの商品輸送が主業務でした。後に大阪の建材メーカーの製品を扱うようになり、今では売上の6割を占めています。
川村 ホームページの写真を拝見しますと、社長が社員たちと仲良く楽しそうにされているのが印象的でした。社長として何か大切にしていることはありますか。
吉田 経営の基本は「感謝の気持ち」です。会社、お客様、ドライバー、それぞれがお互いに感謝の気持ちを持たないと良好な関係は築けないと考えています。そのため、弊社は営業利益の半分をドライバーに還元することを継続しています。社員にお歳暮を贈りますし、カニのシーズンには、私がカニを買い付けて社員へ配っています。
川村 カニですか。御社の社員が羨ましいです。
吉田 当社の離職率は低く、継続勤務年数の平均は10年以上。最も長く勤めている社員は私が子供の頃から40年も働き続けてくれています。
近年の運輸業界の課題と吉田運輸の価値観
川村 近年の吉田運輸における経営課題は何でしょうか。
吉田 我々の最大の課題は2024年問題に関係してます。労働時間の問題と物価高騰に伴う料金体系の見直しです。
川村 物価高騰に対する問題意識を具体的にお聞かせください。
吉田 燃料価格の上昇は顕著です。ウクライナとロシアの戦争が始まったころ、燃料代が年間で約240万円も上がりました。それに伴い、燃料サーチャージをお客様から頂くための交渉を開始しました。約240万円もコストが上がったことを示す資料を持って行き、「こういう状況なんで燃料サーチャージをください」とお客さんにお願いして回りました。
川村 確かに、多くの運輸会社が同じような課題を抱えています。しかし、取引先との関係性が難しい場合、簡単に交渉を進められるわけではないはずです。言い方を間違えると取引を切られるかもしれません。
吉田 そうなんです。でも、我々は一番の得意先にしっかりと交渉をしました。そして今年から燃料サーチャージを頂けるようになりました。幸い、良い取引先に恵まれていると感じています。
川村 取引先との関係性は中長期で見ることが非常に大切です。その点で、吉田社長が心がけていることは何でしょうか。
吉田 弊社は、新規のお客様から仕事の相談があっても、採算が合わない場合は断るスタンスを取っています。つまり、良い関係を築けそうな取引先を見つけるように最初から心がけているということです。
川村 それはつまり、無理して会社を大きくするつもりはないということですか。
吉田 正確に言うと、携わる人間を幸せにすることを最優先に考えているということです。会社が大きくなりすぎると、多くの問題が生じる恐れがあるんです。その結果、採算度外視で仕事を受け入れるような状況になりかねません。
川村 良い取引先との良好な関係は企業にとって非常に価値があると思います。料金の他に、良い取引先を選ぶポイントは何かありますでしょうか。
吉田 以前、山梨のある企業から問い合わせがあり、彼らは関東に営業所を設立する際に我々との取引を希望しました。それに対して私は、まず現地の営業所を訪問し、実際の現場を見ることから始めました。特に注目するのはドライバーの言動です。さらに、ドライバーのお客様への対応や安全確認の仕方などから、そのレベルを確認します。その上で、弊社のドライバーたちとの相性や適合性を判断します。
川村 多層の下請け構造の中で、どのように良質な取引先を見極めるかという視点は、他の会社さんでも非常に参考になると思います。ドライバーの質や対応を、会社の品質を示す一つのバロメーターとして捉えている点は、人の力がいかに大切であるかを改めて感じさせてくれます。
環境への取り組みと企業文化
吉田 弊社は、東京都の輸送貨物評価制度で三ツ星を10年連続で獲得しています。燃費の良さとエコドライブによるCO2削減への貢献が評価されたものです。この取り組みは2006年からスタートし、今や会社の文化となっています。
川村 エコドライブを導入した背景は何でしょうか。
吉田 2006年当時は、デフレ環境を反映し、業界全体で経費削減が求められていました。特に整備費や燃料費の削減が焦点となり、私はエコドライブが答えだと判断しました。
川村 この制度の三ツ星を得ると何かメリットはありますか。
吉田 直接的な売上向上などのインセンティブはありませんが、信用という形でのリターンがあります。環境面で自治体から高い評価を受けている吉田運輸を選んでくれるお客様も多いのではないでしょうか。
川村 価格競争には陥りたくないわけですね。
吉田 はい、安売りは避けたい。三ツ星はその抗弁になります。
川村 確かに、価格だけでなく価値を重視する会社も増えています。物流業界に携わる私も、安さだけを追求すると質が失われることを理解しています。吉田社長の価格競争を避ける姿勢には心から共感します。
働き方改革と外国人材ドライバー
川村 最後に私の専門領域で質問させてください。最近、働き方改革が話題になっていますが、私は人材派遣が専門なので、何となくその方向性に違和感を持っています。ガテン系の方々を例にとると、もっと仕事がありそうなのに「早く帰れ」と指示される状況に疑問を感じています。今は女性の活躍がクローズアップされていますが、次は「外国人材の受け入れ」がテーマになるのではないでしょうか。吉田社長は外国人ドライバーについてどのように思いますか。
吉田 私は外国人ドライバーについて少しネガティブな印象を持っています。
川村 そうですか。私が各社さんに外国人材について意見を聞いてみたところ、予想よりも否定的な意見は少なかったです。その背景には、数十年後のドライバー不足への懸念があると感じました。
吉田 確かに倉庫作業ならば、外国人材の受け入れに抵抗はないと思います。しかし、ドライバーの仕事は、細かなニュアンスのコミュニケーションが必要となるサービス業です。挨拶や日常のコミュニケーションはもちろん、納品先でのトラブルを避けるためにも十分な言語能力が必要だと感じています。
川村 それは確かに大切ですね。実は、弊社のグループ会社で、ベトナムからの技能実習生が活躍しています。そこで、私はとても驚かされました。私がベトナム人と日本人の新卒の者に話をしていると、ベトナム人は漢字でしっかりとメモを取っているのに対し、日本人の新卒は聞いているだけでした。ここで、私の外国人材に対する印象が大きく変わったんです。
吉田 面白い経験ですね。たしかに、固定観念にとらわれず、新しいことにチャレンジすることは重要かもしれません。私が参加する組合の中では、燃料サーチャージの価格交渉に関して慎重な意見が多いようです。多くの社長は取引を切られることを恐れているのかもしれませんが、私は社員の待遇を向上させることが最も重要だと考えます。そのためにも、燃料サーチャージの問題に多くの経営者が積極的に取り組んでほしいと思います。
川村 今日の対談を通じて、現代の物流業界が直面する様々な課題について深く考えることができました。特に吉田社長の価値観には諸問題を解決するヒントが詰まっていると思います。サービス業における「人間力」の重要性や、燃料サーチャージに対する積極的な取り組みについての話は、新たな視点をもたらしてくれました。本日の対談から、将来へ向けて踏み出すための貴重な示唆を得ることができたと実感しています。
プロフィール
吉田運輸株式会社
住所:埼玉県所沢市中富1086
HP:https://www.yoshidaunnyu.com
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