物流現場取材シリーズ【16】
業界トップクラスのEC企業が推進する、
“自社出荷”と“ヒト”の戦略に迫る

左からミルズインターナショナルの櫻井様、弊社の川村

大手ECサイトが誕生する前からいち早くEC事業を手がけ、年商32億円以上を売り上げている香水EC業界トップクラス企業の有限会社ミルズインターナショナル。同社のECショップ『ビューティキャット(B-CAT).COM』は、大手ECサイトでも高い評価を得ている人気店です。

今回は、自社出荷など独自の取り組みを行う同社の代表取締役 櫻井聡氏にご協力いただき、物流に関する戦略や物流人材の育成などについて、株式会社ロジテック代表取締役の川村がお話をお伺いしました。

ECに有利な『香水』に特化したビジネスで成長

川村 初めに、御社の事業や成り立ちについて教えてください。

櫻井 香水の通販事業を行っていて、今年で設立27年目です。私は元々、逗子で大正時代から続く書店に勤めていました。しかし、閉店することになったので、1991年に24歳でカラオケ屋を始めました。

行列ができるほどの人気店になりましたが、都内から価格破壊の波が押し寄せてきていたので、「なんとかしなければ経営が危ない」と始めたのがネット通販です。当時はまだ、ダイヤルアップ接続でインターネット回線につなげる時代でした。

川村 香水を取り扱ったのは、なぜですか?

櫻井 最初は、携帯電話などいろいろな商品を販売していました。あるとき、ベルギーで化粧品の卸をやっている高校時代の先輩から「ネット通販しているなら、香水をやってみない?」と誘われたんです。

1990年代半ばのことで、まだ楽天市場さんもなくて、日本で最初にネット通販を始めた数人のうちの1人が私だと思います。いまはオードトワレを「EDT」と表記しますが、それも私が考えました。

川村 それはすごいです! 香水だけをずっと取り扱ってきたわけではないんですね。

櫻井 海外の人気化粧品などを取り扱ったこともあります。でも、化粧品の売れ筋などがよくわからず、「化粧品が好きでプロ意識を持っているひとたちに太刀打ちできるはずがない」と考えて、「学生時代から好きだった香水の専門店の道を貫こう」と決めました。

いまは売上全体の約98%が香水です。日本での香水のEC市場が約450億円で、当社の昨年度年商が32億5000万円なので、マーケットの7%強のシェアを占めています。

川村 物流やECの観点で、香水特有の特徴などはありますか?

櫻井 香水は小型で、単価が高く、賞味期限がなくて腐らないという点がECに適していると思います。さらに、香水は型番で買ってもらえるのも良い点で、通販サイトもそれほど凝ったものでなくても大丈夫でした。

社内で物流をオートメーション化し、自社出荷を実現

川村 ECを始める際、世の中の流れに合わせる形でスタートされる販売会社さんや、これから伸びると考えて着手する物流会社さんが多いと思います、でも、御社は最初の入り口がECだったので、他社さんとはちがう独自の展開で成長できていらっしゃるんですね。

櫻井 そうかもしれません。私たちが自社サイトで通販を始めたときは、カラオケボックス内にパソコンを置いて、全7部屋のうちの1部屋を在庫部屋にしてスタートしました。

その頃は月商700万円ほどでしたが、順調に売上が伸び続けたので店はたたんで、自宅兼社屋をつくりました。当時の計画では月商8000万円くらいを見込んでいたのですが、最初からその2倍ほどになって商品が入りきりませんでした。そして5年前に、さらに大きい現在の社屋に移転しました。

川村 すごい成長ぶりですね。それほどの物量を捌くのは大変だと思いますが、御社は自社内で物流をオートメーション化して自社出荷を行っていらっしゃいますよね。その理由を教えていただけますか。

櫻井 香水業界は狭くて、主要な競合会社さんの仕入れ先はほぼ同じで、仕入れ額もほぼ同じなんですね。そういったなかで勝ち抜くには、利益を削り続けるか、ほかの何かで勝つ必要があります。そこで、「物流面を削るしかない」とそもそも考えていました。

また、移転前は、大手通販サイトのセール時に「もっと売れるんだけど、受注残が増えてしまう」「リードタイムが少し長くなって、売上が落ちる」ということもありました。なので、複数サイトのセールが重なっても対応できる体制をつくりたいとも考えていたんです。

そして、2014年に楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞したときにいただいた1本の電話も、きっかけになりました。

ほとんど面識がなかった人気ECショップのオーナーさんから「手作業で全部出荷しているままでは天井が見えちゃうから、オートメーション化したほうがいい。一度、うちを見学しに遊びに来たら?」とおっしゃっていただいて。それも大きなきっかけでした。

その受賞後に急成長したのですが、まだ手作業を続けていて、現社屋への移転を機に「物流を制さないと勝てない」と確信してオートメーション化しました。

川村 先ほど拝見しましたが、限られたスペースのなかにコの字型のシステムがきれいに収まっていらっしゃいますね。

櫻井 はい。システム会社さんと一緒にあれこれ考えて、狭いスペースになんとか収まりました(笑)。

365日出荷&自社でコントロールしないと、競争に勝てない

川村 競合さんに勝つために、自社内で入庫から出荷まで完結できればベストだと私も思います。ただ一方で、物流拠点のロケーションやキャパシティの問題があって外部依存しなければならないケースも多いと感じています。御社は、どうしてこの横須賀という場所に拠点を構えられたのですか?

櫻井 まず、北海道でも九州でもほぼ同距離の“中心部”であることが一つです。あと、土地も安いですし。私個人としては、子育てにちょうどいい気候と場所で、実家も近いという点が大きかったですね。

川村 さまざまな会社さんとお話しさせていただいて、現状のままでは売上拡大や利益創出がむずかしい場合、「事業エリアや事業内容の拡大などで、新しい仕事を得る」ということも選択肢の一つだと私は感じています。

御社の場合は、地域に根差して1つのテーマに特化した事業を行われていらっしゃいますが、たとえば都心エリアなどへの移転はお考えではないのですか?

櫻井 

ECの場合は、人材を採用できるのであれば、土地代などの固定費が安いところのほうがいいと思います。あくまでも私見ですが、今後、ECは売上がピーク状態から少し減っていくかもしれませんし。

川村 

一般論としてそう言われていますが、ご実感されていらっしゃいますか?

櫻井 

そうですね。一番感じたのは、物流クライシス2024を控えた去年、複数の大手物流会社さんが「価格がどの程度上がるかわからない」とおっしゃっていたのですが、去年末になって少し安くするというお話が出だしたときです。

それを聞いて、「おそらく、想定よりも物量が少ないのではないか」と思いました。なので、この先の見通しはまだわかりませんが、EC自体も少しシュリンクするのかなと思っています。

川村 なるほど。そのような状況のなかで、御社が競合他社さんとの差別化のために行っている施策などを教えていただけますか。

櫻井 大きく2つありまして、1つめは「365日出荷する」ことで、2つめが「自社で物流をコントロールする」ことです。

もちろん、物流会社さんに外注するほうが効率的で安いと思っています。ですが、社内出荷を行うことで、外注で発生するコストを当社スタッフに還元したいと考えているんですね。

ヒト・モノ・カネで経営を考えたときに、それらが流出してしまうことは避けたいと思っています。優秀な人材育成にも時間が相当かかりますから、自社出荷と外注のバランスをみながら、いまのところは自社出荷に軸足を置いていこうと考えています。

“効率化”を最重視し、システムを自前で構築

川村 物価全体がどんどん上昇しているなかで、企業は物流コストを上手に抑えたり、お客様からいただける金額を維持・増加させたりすることが必要だと思います。そのような状況で、体力が限定的な会社さんはこれからどうしていくのかなと危惧することも少なくありません。

櫻井 そうですよね。ですから、私たちは“効率化”が大事だと思っています。

以前は、1日4000個以上の入庫を捌くのに昼から3時間くらいかかって、そこから棚に収めて出荷まで3時間ほどかかるので、外注先さんの17時の集荷に間に合わなかったんですね。

それで、「入庫と出庫と同時にやらなきゃだめだ」と考えて、自分でデータベースや管理システムをつくりました。そして、スタッフ全員にiPhoneを支給して、バーコードを読み取るだけで入庫と出荷を同時かつ簡単に管理できるようにしています。いまは、1日4000~5000個は普通に対応可能です。

川村 外注していると、入出庫の問題などには気付けないですよね。でも、そのような気付きを実際のや業務改善に発展させて、さらにご自身でシステムまでつくるのはなかなかむずかしいことだと思います。元々、そういったことはお得意だったのですか?

櫻井 昔からそういうことを考えることは好きです。システムに関しては、私は神奈川県横須賀市PTA協議会会長をしていて、知り合いのPTA代表の方がシステムに詳しいので、相談しながら開発しました。上手に巻き込んだという感じですね(笑)。

“ヒト”が自由に活躍できる環境が、業務改善にもつながる

川村 御社に今日お邪魔したとき、スタッフの皆さんが気さくにご挨拶してくださって、すごくいい雰囲気だなと感じました。定着率も高いとお聞きしましたが、御社の人材育成の取り組みや工夫についてお伺いできますか。

櫻井 以前は社長の私中心の完全年功序列でしたが、スタッフの成長や個々の想い・目標を実現させたいという観点から年功序列をやめました。

そして、2年ほど前に“委員会制度”をつくりました。売上向上委員会など、自分のやりたいことに自由に取り組んで、成果に応じて昇給や昇進に反映させています。その結果、メキメキと頭角を現すスタッフが出てきて、いまでは入社4年目のスタッフが私の側近として活躍中です。

川村 そうなんですね。当社もまったく同じ考え方で“部会制度”というものを導入していますので、すごく共感できます。

櫻井 それに加えて、2022年から自己査定型を取り入れるなど、勤続年数に関わらない給与体系も整えました。

当社は、入社してからぐんぐん仕事が好きになって、働く楽しさに目覚めるスタッフが多いんですね。ですから、とにかくまず仕事を好きになってもらって、自由な環境で一人一人の力を伸ばしてあげたいと考えています。

川村 社内の上下関係などを壊すことで、自分がやりたいことを自由に表現できるようになったわけですね。

櫻井 そうですね、みんなイキイキしています。私が知らない間にスタッフ同士で業務改善などについてミーティングをして、私では思いつかないようなことも考えてくれているので本当にありがたいです。

川村 それは、ものすごくうれしいですね。やはり、経営においても、組織づくりにおいても、働く方々が重要ですね。

櫻井 おっしゃる通りです。ヒト・モノ・カネのなかでも、ヒトは本当に大切だと思います。

成長ステージに合った物流や新規事業の展開を

川村 今後、自社出荷から外注への移行はお考えですか?

櫻井 将来的に、いまいる優秀なブレーンたちは広告展開や商品登録などに特化して、商品は輸入元から外注先に直接納品して、そこで加工も行ってもらうことは考えています。そうなれば、コスト計算も簡単ですし、よりスムーズに事業を進められるかもしれません。

川村 さまざまな会社さんが、「内製か外注か」を判断する軸や決断するタイミングがむずかしいと考えていらっしゃると思います。その点について、御社ではどのようにお考えですか?

櫻井 当社は2020年に10ヵ年計画をつくって、2030年に年商54億~60億円くらいを目指しています。そこまで売上が増えると、もう自社出荷ではむずかしいので、物流をすべて外注しなければいけないと考えています。

また今後は、香水ECのトップシェアを目指しながら、オリジナル商品やOEM商品の開発・製造にも力を入れていく予定です。そうなると、「物流は外注して、企画や開発、ブランディングに関する部分を自社で行う」という形がいいだろうとも考えています。

川村 そういった新しい事業を行うにしても、やはりさまざまな発想ができる“ヒト”が大切ということですね。

櫻井 その通りです。スタッフみんなが一生懸命がんばって「この会社を大きくしよう」としくれているので、私も大事に育てていきたいですね。

川村 私は社内で“目的”と“手段”という表現をよく使うのですが、物流という観点だけで物事を見てしまうと、物流自体が実現すべき“目的”になるので、「自社出荷か外注か」という選択の部分だけに目が行きがちになってしまうと思います。

ですが、櫻井社長のお話をお聞きして、ヒト・モノ・カネという部分の基本理念や想いを“目的”に据えておくと、「自社出荷か外注か」は“手段”の問題になるので、事業や経営を考えるうえでの捉え方が変わってくるんだなと思いました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

企業プロフィール

有限会社ミルズインターナショナル

本社所在地:神奈川県横須賀市長坂4-16-14

設立:1997年

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