物流現場取材シリーズ【13】
LOCCO様
ラストワンマイル問題など、
“置き配”で物流業界の課題を解決

左から川村、LOCCOの田口様

西濃運輸株式会社やセイノーホールディングス株式会社をはじめとするセイノーグループに属する株式会社LOCCOは、置き配サービス『OCCO』を展開しています。

今回は、セイノーグループ全体のラストマワンマイル事業の推進にも携わる経営企画室執行役員の田口義眞氏にご協力いただき、同社の取り組みや置き配を取り巻く業界・社会の状況、さらに同社の今後の展望などについて、株式会社ロジテックの代表取締役の川村がお話をお伺いしました。

“置き配”に特化したセイノーグループの戦略企業

川村 最初に、貴社のポジションについて教えていただけますか。

田口 そもそもセイノーグループは企業間輸送や倉庫業などを得意としていますが、『オープンパブリックプラットフォーム(O.P.P.)』という構想を掲げています。

これは同業他社様や地域の方々と連携して開放的なプラットフォームを構築することで、「自社だけではなく、さまざまな方々と協業しながら、新たなインフラやサービスを世の中に提供していきましょう」という考えです。

この構想のもと、私たちLOCCOでは宅配や置き配サービスをメインに、ドローン輸送のテストなども行っています。

川村 2016年設立とのことですが、どのような経緯で設立に至ったのですか?

田口 元々は、アパレルEC事業などを行う株式会社フェリシモさんの社内ベンチャーとして事業が誕生しました。当時の物流クライシスによる運賃値上げ分を「お客様に転嫁していいのか?」という課題を解決するために、「第4の物流会社をつくろう」ということになりました。

その際に配送をセイノーグループにお声がけいただきまして、私たちにもO.P.P.という構想がありましたので、「このプラットフォームを、さまざまな全国の困っている方々にご利用いただこう」とジョイントベンチャーの形で当社を立ち上げました。

そして2020年に、物流クライシス、特にラストワンマイルの課題を解決する配送仲介プラットフォームとして事業をスタートしました。

川村 その事業の特徴や強みをお教えください。

田口 一番の特徴は、宅配の“置き配”に特化したラストワンマイル事業を行っていることです。

置き配かつ時間指定がない商品の配達にサービスを絞ることで、効率的に配達できるのが当社の強みであり、他社様とのちがいです。運賃が上昇している世の流れの流れとは逆に、価格帯をより安くしながら、品質は落とすことなく必要最低限のサービスをご提供しています。

川村 どのように価格を安くできるのですか?

田口 時間指定がある場合、それを守るために配達員さんはあちらこちらを行ったり来たりすることで、どうしてもコストがかさんでしまいます。

一方で、当社の置き配サービスOCCO』は時間指定がないので、手前から順番にゆっくりと弧を描くように配達することで配送効率が上がるのが特徴です。それによって当社内のコストを下げて、その分をお客様に還元して、安価な配送サービスを実現しています。

また、置き配はお客様の不在時でも配達ができますので、再配達率の業界平均は約11%ですが、当社では約2.8%となっています。このような高い配達効率も、当社内のコスト削減、そして安価なサービス提供につながっています。

川村 それはすごいですね。サービスの仕組みはどうなっているのですか。

田口 仕組みとしては、いたって単純です。『OCCO』では、日時指定や即時配達を省くことで集荷時間にある程度の猶予をいただいて、同じ方面の荷物をまとめることで幹線輸送費をコストダウンしています。

さらに、ラストワンマイルに関しては、新聞配達員の方々など各地域の配達パートナーさんに隙間時間をご活用いただいています。そのように幹線部分とラストワンマイル部分に特化したサービスで、ローコストな宅配を実現する仕組みです。

タブー視されていた置き配で、新たなニーズを掘り起こす

川村 物流のクライシスや2024年問題などにおいて、ラストワンマイルや再配達の問題はボディーブローのようにじわじわと効いてくるものだと思います。しかし、物流業界の慣習もありますし、前例がないことに取り組むのはむずかしそうですね。

田口 はい。日本の企業さんは「良いサービスを、できるだけ安く提供する」ことにフォーカスされていますし、ユーザー体験も大事にされているので、「置き配でお客様との実際の接点をなくしたくない」「手渡しのほうが、ユーザー様にも安心感があるだろう」という考えがあると思います。ですから、敢えて新しいことに踏み切れないかもしれないですね。

川村 そういった状況ですと、事業開始にあたってもご苦労があったんじゃないですか?

田口 そうですね。そもそも「受領印をもらわず、荷物を置いてくる」という置き配自体が、運送業界ではタブー視されていました。また、「本当にお客様に受け入れられるのか」という不安も抱えながら、最初はサービスをつくっていました。

しかし、フェリシモさんと一緒に取り組むなかで、定期的に置き配をご利用くださる方もいらっしゃいましたし、宅配クライシスをご存じで「運送会社さんに負担をかけるのも申し訳ないから、置き配ができるならうれしい」という声も出始めました。

そのようにエンドユーザー様に喜んでいただけるサービスをつくれたことは、非常に大変ではありましたが、「やってよかったな」と出荷人様とも共通認識を持てています。

川村 業界がいくらタブー視をしても、世の中の風向きが背中を押していた状態なのですね。

田口 そうです。さらに、もし置き配後に盗難に遭っても商品分を補償する“置き配保険”をつくって安心感を持っていただくなどの努力もしました。そうした結果、ご利用者様が増えたという形です。

ちなみに、2021年1月から2022年3月の間で「盗難」や「紛失」などによる当社の置き配保険の適用率は0.0008%でした。置き配でトラブルに遭遇するのは、10万件に1件未満です。

川村 そのような施策は、初めから考えていらっしゃったのですか?

田口 いいえ、事業を進めながら、お客様と対話して一緒にサービスをつくっていきました。最近は「ゆっくりお届けします」というサービスもいろいろ出てきていますが、その前から新しいニーズを掘り起こすためのサービスを展開していたのが当社の強みの一つだと思っています。

コロナ禍を経て、宅配利用者に変化が

川村 先ほど、「手渡しの安心感」というお話がありましたが、スーパーなどではセルフレジを使って誰とも会話をせずに買い物ができるようになってきています。宅配においても、「置き配で商品が確実に届くのであれば、非対面のほうが安心」と考える方もいるのではないでしょうか。

田口 おっしゃる通りで、私たちが事業を始めた2020年はコロナ禍の最中だったので「配達の人に対面で会いたくない」という声が多く聞かれました。現在も、「お化粧してないから配達員の人に会いたくない」という女性や、「リモートワーク中に対応するのは手間」という方はたくさんいらっしゃいます。

そのようなご要望やご意見を含めて、コロナ禍を経て置き配に対する理解も進みましたし、ライフスタイルも変わって非対面の置き配が求められるようになってきています。

川村 たしかに、この2~3年でいろいろと変わりましたよね。やはり、置き配に対する理解や認知は着実に進んでいますか?

田口 はい、特に若い方々は、置き配に対する抵抗はそれほどないと思います。ご高齢者の方々も、「ドアを開けたら荷物が置いてあって、受取の手間もないので便利」と容認してくださっているなとすごく感じています。ニュースなどでも「配達員さんたちが困っている」と報道されているので、理解は広がってきていると思います。

川村 配達員さんたちの大変さが報道されるだけでなく、再配達を減らすように一言言ってもらえるとさらにいいですよね。

田口 そうですね。一般の方々は「時間指定がなければ、どのくらい負担が減るか」といったことがわからないと思いますので、再配達を減らすための提言や指針などが出されれば、社会全体で効率化が図れると考えています。

また、置き配をさらに促進するためには、置き配の場所も指定できるようなECサイトの仕組みなども必要かなと思います。

川村 商品の到着を楽しみに家に帰ると、宅配ボックスが埋まっていて届いていないとすごくショックです(笑)。そういった問題を解決するのはむずかしいのでしょうか。

田口 当社も複数の企業様と連携して「オートロックを解除して玄関先まで入らせていただく」というサービスを開発中ですが、それをすべてのマンションなどで導入するのはむずかしいと思います。

宅配ボックスがきちんと空になる仕組みや、海外のように「ボックスではなく棚を設置する」などの方法を考える必要があると考えています。そうしないと、宅配会社様同士で早朝の“宅配ボックスの奪い合い”になってしまうなど、業界としても良くなっていかないと思います。

業界を横断して、社会全体での取り組みが必要

川村 ECの宅配に関して、私が一消費者として思うのは「さまざまなECサイトで共通して、置き配や時間指定を選ぶボタンなどの業界標準をつくってほしい」ということです。どこで選べばいいのかわからないときがありますので。その辺りの一本化はむずかしそうでしょうか。

田口 ECサイトのユーザーインターフェースについては、各社様が課題を感じていると思います。置き配を導入された当社のお客様で、「置き配を選ぶ」というボタンを少し見やすい場所に移動したら、全体の約10%だった置き配利用率が約3倍に上がったこともありました。実際は置き配を求めている方々も、見てもわからないので選ばれていない状況だったようです。

川村 なるほど。インターフェースやユーザビリティの面で直感的に理解できれば、インターネットに詳しくない方にも置き配をさらに浸透できるかもしれませんね。

田口 そうですね。エンドユーザーの方にとっては、「商品が届く」ことが一番の目的です。なので、「配送会社さんに負担をかけないように」とは思っていても、直感的に置き配を選べる環境にしておかないと「とりあえず届けばいいや」となってしまうと思います。

実際にエンドユーザーさんとお話しさせていただいた際に、「ECサイトで置き配を選ぶ箇所がなかった」というご意見もお聞きしています。物量が増えれば効率化が必要になりますから、出荷人であるECサイト様にももっと置き配を選びやすい環境をつくっていただくことも同時に進めていくべきだろうと思っています。

川村 それは2024年問題にもつながっていく課題ですよね。

田口 はい。効率を上げることは必須なので、置き配など効率的なサービスをつくって世の中に浸透させることは、日本社会全体の効率化にとっても非常に重要だと思います。

川村 そのためにも荷主様・エンドユーザー様の両方への働きかけが必要だと思いますが、貴社では荷主様向けにどのような取り組みを行っていらっしゃいますか?

田口 先ほどお話ししました「置き配で、他社よりも配送コストを安くできる」という当社のメリットをお伝えしています。あわせて、「ECサイトのご利用者様が、実際に置き配を利用するのか」という不安を払しょくしていただくために、置き配利用促進の施策として“Tポイント付与サービス”も構築しました。

川村 そういった特典も業界全体でも広がれば、さまざまな問題を解決できると思います。たとえば、「置き配を選べば、配送料50円引き」といったことも考えられるのではないでしょうか。

田口 おっしゃる通りですね。荷主様も「配送料金が上がると、お客様が離れてしまうのでは……」と不安を感じていらっしゃるなかで、そういった動機付けの方法を考えることは必要だと思います。

物流事業者以外のリソースの有効活用も

川村 貴社の今後の展望について教えていただけますか。

田口 輸送の際に空きスペースをうまく使うなど、効率化をさらに極めていきたいと考えています。

また、物流事業者以外の人材・リソースの有効活用も考えています。たとえば、「仕事帰りにコンビニに届いている自分の荷物を受け取る際に、ご近所の方の荷物も受け取ってご本人にお渡しいただく」といったサービスです。

そして、そのお渡しくださった方に現金やポイントを還元する仕組みがつくれれば面白いなと思っています。それによって、物流業界にとってもより効率的な環境になると考えています。

川村 それは、いいですね。「ご近所さんもひっくるめて配送する人なんだ」という捉え方をすると、人手不足の問題が一気に解消されそうです。そのような発想は、大手企業様をはじめ、他社様に足りていない部分を補うという貴社ならではの特徴だなと感じました。

当社でも、似たような人材不足の解決策を考えています。たとえば、ドライバー経験者の方だけを採用するのではなく、当社にご登録いただているドライバー未経験の方に実地研修などを行えば、「人材がいない」を「人材はいる」に変えられると思っています。

田口 私たちのO.P.P.構想も、ドライバーの方だけでなく、当社や他業界も含めた会社様のリソースをオープンに活用していただいてつなげていくというものです。特別なノウハウを持っていなくても、さまざまな方に隙間時間でご活躍いただくことは、社会全体としても将来的に重要だと思います。

企業プロフィール

株式会社LOCCO

本社所在地:東京都中央区日本橋人形町1-11-2

設立:2016年3月

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